気象予報士になるには「気象予報士資格」という国家資格を取得し、気象庁長官から登録を受けることが必要です。
気象予報士資格を得るためには、気象予報士試験の合格が必須ですが、一般的に難易度が高いとされています。
本記事では、気象予報士について、試験の合格率や基準、資格のメリットやデメリットについて解説しています。
この記事の目次
気象予報士試験の合格率は約5%
気象予報士試験の合格率は約5%前後です。
一般的な資格試験よりも難易度が高い傾向にあります。
そのため、合格までに2回以上の複数回受験が必要になる場合が多いです。
直近の合格率に関するデータ
現在、気象予報士試験を受験する人数は減少傾向です。
ただし、受験人数が減少した年も、合格率は約5%前後を維持しています。
直近の合格率に関するデータは下記の通りです。
■直近の気象予報士試験合格率まとめ(2016年以降)
年 | 合格率(受験者数/合格者) |
2020 | 5.7%(5,464人/312人) |
2019 | 5.1%(5,926人/304人) |
2018 | 5.1%(5,772人/293人) |
2017 | 5.4%(5,750人/308人) |
2016 | 4.5%(5,884人/265人) |
出典:気象予報⼠試験結果⼀覧
多くの専門知識が必要
気象予報士試験の合格には、多くの専門知識が必要です。
試験は3つの分野に分かれており、学科試験が一般試験と専門試験の2種類、そのほかに実技試験があります。
試験の出題形式には2種類の形式があり、マークシート形式の一般試験と専門試験と、記述式の実技試験です。
それぞれの試験で必要な知識を紹介します。
試験の種類 | 形式 | 必要な知識 |
一般試験 | マークシート形式 | 気象に関する知識だけでなく、物理学や化学の基礎知識も必要。「大気構造」や「気象現象」などの知識も問われる。計算問題があるため対策しておきたい。 |
専門試験 | マークシート形式 | 気象予報の専門知識が必要。業務に関する多くの専門知識が求められ、暗記力が重要。計算問題はない。 |
実技試験 | 記述形式 | 記述式のため、天気図の解析から予報の説明まで具体的に解答できる知識が必要。業務を想定して、気象現象について予想や解析することが求められる。 |
多くの専門知識をカバーするための勉強時間
試験合格に必要とされている勉強時間の平均は、約800~1,000時間です。
試験における多くの専門知識や広い出題範囲を、この勉強時間で網羅する必要があります。
そのためどれだけ勉強に時間を使えるかも合格への重要なポイントになります。
例えば仮に1日2時間のペースで毎日勉強する場合、おおよそ1~1.5年必要です。
試験の合格基準
気象予報士試験には学科試験と実技試験それぞれに合格基準があります。
それぞれの基準を解説します。
<合格基準>
学科試験(一般知識・専門知識) マークシート形式
→一般知識・専門知識それぞれ全15問中、11問以上正解(正答率 約70%以上)
実技試験 記述形式
→全7問中、おおよそ11問以上(正答率 約70%以上)
学科試験の合格基準
学科試験は各科目15問のマークシート形式です。
一般知識・専門知識ともに、合格基準は15問中おおよそ11問以上正解です。
つまり、正答率は約70%以上が基準です。
ただし、その年ごとの試験問題の難易度や受験者の平均点などにより、その基準が調整されるケースもあります。
難易度が高過ぎた場合など、10問以上の正解(正答率が約70%以下)が合格基準になることもあります。
合格を目指すなら、その年の難易度や平均点によっても基準が変わる可能性があるため、11問以上の正解を目指すべきです。
学科試験の過去問
以下URLより過去問をPDFで確認することも可能です。
是非、試験対策にご活用下さい。
気象予報士試験の過去問(出典:一般財団法人 気象業務支援センター)
実技試験の合格基準
実技試験は記述式で、問題数は全7問です。
実技試験においても、基本的に合格基準は正答率70%以上です。
しかし、実技試験は学科試験とは異なり、多くの場合で合格基準が調整されます。
実際、直近の5年間では多くの実技試験で合格基準が60%前後に調整されました。
条件により学科試験の免除が可能
気象予報士試験には学科試験の試験免除制度があります。
過去1年以内に学科試験科目の全て、もしくは一部で合格している場合に免除措置が適用されます。
そのほか、気象業務に関わる業務経歴がある場合も申請すると学科試験の全部または一部の免除が適用される場合があります。
国家資格の気象予報士
気象予報士は国家資格です。
気象予報士試験の受験の受験資格や受験料、申し込み方法や試験時期などの重要な情報を以下にまとめます。
受験資格と受験料
気象予報士試験の受験資格に年齢や学歴などは問われず、希望者は誰でも受験が可能です。
受験料は免除科目の有無に応じて異なります。
詳細は下記の通りです。
なお初めて受験される方は「免除科目なしの方」に該当します。
■気象予報士試験の受験料
種類 | 料金 |
免除科目なしの方 | 1万1,400円 |
学科一科目が免除の方 | 1万400円 |
学科二科目が免除の方 | 9,400円 |
受験の申し込みは郵送での事前申請だけ
気象予報士試験の受験申し込みには、事前の受験申請が必要です。
申請方法は郵送受付の1種類のみで、オンラインでの申請は行なっていません。
まずは「気象予報士試験受験申請書」に必要な情報を記入し、写真を貼付します。
申請書の試験手数料納入証明欄に必要事項を記入するか、振込レシートを貼付します。
申請書を送付する際は、郵便局の窓口から特定記録郵便として郵送します。
学科試験の免除を申請するためには、その旨を記入しなければなりません。
参考:気象庁HP内「気象予報士試験受験の申請」
試験の実施時期は年に2回
気象予報士試験は年に2回実施されます。
例年、1月と8月に行われます。
学科試験も実技試験も同じ日程で実施されます。
実際に受験票が手元に届くのは受験申請後で、受験申請は以下スケジュールで行いましょう。
1月試験の受験申請期限:(前年の)11月中旬~12月上旬
8月試験の受験申請期限:6月中旬~7月上旬
事前に手続きをしていなければ受験できません。
希望する受験時期に合わせ、スケジュールに余裕をもって計画的に受験申請を行いましょう。
年々減少している受験者数
気象予報士試験を受験する人は、年々減少しています。
2006年度の5,074人(第1期)をピークに、緩やかではあるものの減少傾向です。
近年では2,900人ほどで推移しています。
直近の受験者数の変化を以下で比較すると多少の増減はあるものの、それほど大きな変化はありません。
年度 | 第1期(8月下旬) | 第2期(1月下旬) |
2017年度 | 2,962人 | 2,788人 |
2018年度 | 2,915人 | 2,857人 |
2019年度 | 2,957人 | 2,969人 |
2020年度 | 2,848人 | 2,616人 |
2021年度 | 2,920人 |
出典:気象予報⼠試験結果⼀覧(一般財団法人 気象業務支援センター)
気象予報士の資格を取るメリットとデメリット
気象予報士資格の取得には、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。
気象予報士の職種としての一般的なイメージは、ニュース番組などの天気予報に出演するイメージではないでしょうか。
そのため、資格の使い道が少ないという意見もあります。
ここからはメリットやデメリットについてまとめます。
メリット① 誰でも受験可能で資格の失効がなく、生涯保有
気象予報士の資格は、老若男女の誰でも受験が可能で、多くの人が挑戦しやすい点もメリットです。
加えて、一度取得すると一生涯に渡って有効で、失効することがありません。
多くの資格は取得後の更新が必要ですが、気象予報士は更新も不要です。
メリット② 国家資格で社会的信頼が高い
気象予報士の資格は国家資格のため、もちろん社会的信頼性が高いといえます。
もちろん履歴書に書くことも可能で、転職・就職活動のアピールポイントのひとつになる可能性があります。
デメリット|使える仕事が限られている
気象予報士の資格を取るデメリットとしては、資格を活かせる仕事が限られているという点です。
気象予報士としてニュース番組のお天気コーナーを任される方は、気象予報士試験に合格している人の中でほんの一握りだけです。
古いデータではあるものの、気象庁によって2013年度(平成25年)に実施された「気象予報士現況調査結果(※)」では、気象には関係しない業務に就く方が69.1%となっています。
(※)出典:平成 25 年度に実施した気象予報士現況調査結果
まとめ
今回は気象予報士の資格の合格率や合格基準、試験内容や勉強時間をはじめ、メリットやデメリットなどを紹介しました。
気象予報士の資格は、国家資格でありながら、年齢性別問わずだれでも受験可能です。
その一方で、合格率は決して高くありません。
試験の免除制度があったり一度取得した資格は更新不要で生涯有効な点は魅力のひとつといえます。
空や気象、天気に興味が強い方は一度受験されてもよいでしょう。
※気象予報士試験の受験を検討されている方はご注意ください。
現在、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い試験スケジュールなどが不規則になっている可能性があります。
詳しくは以下をご確認の上、最新の情報をこまめにチェックするようにしましょう。