中小企業診断士の資格が「なくなる」「役に立たない」という主張を、インターネット上でときどき見かけます。
中小企業診断士を目指している人や、目指そうと思っている人にとっては真偽が気になる話です。
結論を先に述べると、中小企業診断士がなくなることはありません。
今回の記事では、「なくなる」「役に立たない」と言われている理由や、中書企業診断士がなくならない理由についてわかりやすく解説します。
くわえて、中小企業診断士になるメリットや、仕事内容についても紹介。
中小企業診断士の資格について深掘りしてお届けします。
この記事の目次
中小企業診断士が「なくなる」「役に立たない」と言われる3つの理由
中小企業診断士の資格が「なくなる」「役に立たない」と言われる理由は、以下の3つです。
上記の理由について解説します。
①独占業務がない
独占業務がないことが、中小企業診断士がなくなると言われる大きな理由の1つです。
独占業務とは、その資格を有するものでなければ携われない業務のこと。
たとえば、損害賠償請求は弁護士にだけ認められている独占業務ですし、医師でなければ医業を行ってはいけません。
資格を持っていない人が独占業務を行うことは違法です。
しかし、中小企業診断士には独占業務がありません。
そのため、中小企業診断士は持っているだけで活用できる資格ではなく、「なくなる」「役に立たない」と言われる根拠の1つになっています。
②資格だけでは食べていけない
医師や弁護士、薬剤師などは資格だけで生活していくことができますが、中小企業診断士はそうではありません。
中小企業診断士の資格をどのように活用するのかによって、その価値は大きく変わります。
また、多くの中小企業診断士は、他の分野との掛け合わせによって希少性を生み出し、稼いでいるのが現状です。
こういった事情から「中小企業診断士の資格はなくなるのでは?」と言われています。
③就職などで直接は役立ちにくい
中小企業診断士の資格は、就職などで直接的には役立ちにくいのも「なくなるのでは?」と言われる理由です。
弁護士や医師、薬剤師、宅建などは、就職に直接的に役立つ資格の代表格です。
一方、中小企業診断士は社会人のスキルアップに役立つ資格ですが、取得していたからといって就活や転職活動で圧倒的に有利になるわけではありません。
あくまでスキルの1つとして評価されるだけです。
そのため、中小企業診断士の資格は低く評価されがちです。
中小企業診断士がなくならない5つの理由
ここでは、中小企業診断士の資格がなくならない5つの理由について解説します。
なくならない理由は以下の通りです。
①さまざまな場面で役に立つ知識が身に付く
中小企業診断士の資格取得には、さまざまな組織経営の知識が必要です。
中小企業診断士とは中小企業の経営課題に対応したり、診断したりするための専門家。
生産管理や経営に対する課題、収益性の改善、コスト削減など生産性向上のための改善案をまとめるのが仕事です。
中小企業診断士として身に付けた知識は、組織のどのような場面においても活用できます。
そのため、会社組織において中小企業診断士は重宝されることが多いです。
②社会人に人気のある資格
中小企業診断士の資格は、社会人に人気が高まっています。
中小企業診断士は、社会人が働きながら得られる資格の中ではもっとも難しい資格の1つです。
そのため、社会人として中小企業診断士の資格を取得することはある種のステータスです。
また、中小企業診断士は企業内で活躍しやすいのも人気の理由。
そのほかに、「コンサルティング会社に転職」「中小企業診断士として独立」など、柔軟に活用できるのも魅力的です。
③AIで中小企業診断士がなくなることはない
AIが社会で活用されるようになっても、中小企業診断士の仕事はなくなりません。
野村総研とオックスフォード大学の共同研究によれば、10年~20年以内に49%の仕事がAIによってなくなると2015年に発表されました。
また、アメリカの未来学者であるレイ・カーツワイルによれば、2045年にシンギュラリティ(技術的特異点)を迎え、AIが人間の知性を超えるといった予測もあります。
しかし、過去においてこれらの大胆な予測はたびたびはずれてきました。
たとえば、以下のような未来予測が1970年代に行われましたが、40年後の現在ではことごとくはずれています。
- 石油が枯渇する→枯渇する気配はなし
- 人口爆発は食い止められない→人口成長率は半減
- 核戦争や核の冬が訪れる→核兵器はピーク時の3割に
くわえて、もしAIが49%の仕事を奪ったとしても、中小企業診断士の仕事はなくなりません。
野村総研とオックスフォード大学の研究で、中小企業診断士のAIへの代替可能性はわずか0.2%と算出されています。
代替可能性が低い理由は、以下の2つの能力が必要だからです。
- 数字に表現できないものを読み取る能力
- 高いコミュニケーション能力
④経済界からも注目
中小企業診断士は経済界からも注目されています。
2020年に行われた経済諮問会議で、サントリーホールディングスの新浪剛史社長は以下のような発言をしています。
そして、経営人材の育成も非常に重要。
たとえば、中小企業診断士について、非常に意味のある資格だと思うが、提出資料に添付している通り、一次試験では7科目全てに合格しないと試験に通過できないなど、大変難易度が高いものとなっている。
中堅・中小企業の経営を担うことのできる人材の裾野を広げていくためにも、たとえば、中小企業診断士の科目にデジタルを入れるとともに、全ての科目を合格しなくとも、税理士のようにひとつひとつの科目で合格しても何らかの位置付けを付与することを考えてみてはどうか。
引用元:令和2年第14回経済諮問会議
この発言の背景には、日本の経済界のビジネスリーダー不足が挙げられます。
アメリカのMBAのようなリーダー教育があまり普及していないことが、ビジネスリーダー不足の原因の1つです。
そのため、中小企業診断士の難易度を下げてはどうかという提言がなされました。
このように、中小企業診断士は経済界からも大きなニーズがあるのです。
⑤高い難易度の試験が資格の価値に比例
中小企業診断士は、社会人が働きながら取れる資格の中でもっとも難易度の高い資格の1つです。
試験の合格率は一次、二次を合わせると4%~8%程度で、資格取得に必要とされる勉強時間は1,000時間程度とされます。
1日3時間程度の勉強を1年間続けて、ようやく試験合格ラインに辿り着けるのが中小企業診断士です。
働きながら取れる資格の中では難易度が高いため、多くの社会人が中小企業診断士に価値を感じてチャレンジします。
中小企業診断士は、社会的に高い評価を得やすい資格です。
中小企業診断士の資格を取得するメリット
中小企業診断士の資格を取得するメリットは、以下の5つです。
それぞれのメリットについて詳しく解説します。
①転職で有利になる
中小企業診断士の資格を取得すると、転職で有利に働きます。
中小企業診断士は、仕事と両立しながら取得できる資格の中でもっとも難易度の高いものの1つです。
そのため、中小企業診断士の資格を持っているだけで優秀な人材とみなされます。
ほかにも、コンサルティング業界に転職するときに中小企業診断士の資格はアピールに使えます。
②社内で昇格するチャンスが増える
中小企業診断士なら、社内で昇格できるチャンスが増えます。
日本企業の99.7%が中小企業で占められており、中小企業は雇用の約7割を担っています。
中小企業で働いているなら、中小企業診断士としての知識に大きなニーズがあります。
そのため、中小企業診断士に合格すると社内での活躍の場が増える可能性が高いでしょう。
結果として、社内で昇格するチャンスが増加します。
③独立することが可能
中小企業診断士として独立することも、資格を取得すれば選択肢に入ってきます。
中小企業診断協会が2018年に行った「企業内診断士の実態調査」によれば、独立診断士の割合は43.6%でした。
中小企業診断士を取得した人のうち、4割以上はコンサルタント事務所を独立開業しています。
また、企業内診断士の30.9%が、中小企業診断士として独立開業を予定しています。
なお、中小企業診断士の平均年収は739万円で、独立開業をすればより高い年収になる可能性があります。
④副業として稼げる
中小企業診断士は、副業としても稼げる資格です。
昨今は働き方改革により政府が副業を推進しています。
それに伴い、副業を容認する企業も多くなってきました。
中小企業診断士の資格を持っていれば、副業で資格予備校の講師をすることが可能です。
ほかにも、商工会議所や企業のセミナーで講演、中小企業を支援する補助金や助成金の申請代行といった副業も考えられます。
⑤社会的信用を得やすい
中小企業診断士は、社会的な信用を得やすい資格です。
中小企業診断士になるには1,000時間の勉強が必要であり、毎日コツコツと積み重ねることが求められます。
中小企業診断士の合格率は一次、二次試験を合わせて4%~8%程度とかなりの難関資格です。
このように難関資格であるからこそ、合格すると「一生懸命、勉強をした向上心のある人」として評価されます。
中小企業診断士の業務内容や試験の難易度
中小企業診断士の業務内容や、試験の難易度について解説します。
業務内容の難易度
中小企業診断士の業務は主に以下の2つです。
- 経営コンサルティング
- 経営改善計画書や経営診断書の作成
中小企業診断士のメインになる業務は、経営コンサルティングです。
経営コンサルティングとは、企業の課題を見つけて解決策を提示すること。
課題解決により生産性向上、コスト削減、売り上げアップ、運転資金の改善などを目指します。
そのほかにも、経営改善計画書や経営診断書の作成が中小企業診断士の仕事です。
経営改善計画書とは、経営上の課題を見つけて改善点を洗い出し、数値化した書類のことです。
金融機関への借入依頼や、借入金返済のリスケジュールで経営改善計画書の提出を求められます。
経営診断書は産業廃棄物許可申請のときに必要とされる書類です。
試験の難易度
中小企業診断士の合格率は一次、二次試験を合わせて4%~8%です。
一次試験での合格率が20%~40%ほど、二次試験での合格率が20%弱となります。
偏差値にたとえると60~64で、上位8%~15%に入る難易度です。
100人が試験を受けてわずか4人~8人しか通らないと考えると、中小企業診断士の難易度はかなり高いと言えます。
中小企業診断士で知っておきたいQ&A
中小企業診断士のことで、ぜひ知っておきたいQ&Aについてお答えします。
質問の内容は以下の通りです。
中小企業診断士に合格するのに必要な勉強時間は?
中小企業診断士に合格するのに必要とされる勉強時間は、およそ1,000時間と言われています。
1年以内に合格を目指すなら、1週間あたり約20時間の学習時間の確保が必要です。
つまり、1日に2時間~3時間程度の学習が求められます。
中小企業診断士は儲かるの?それとも食えない資格なの?
中小企業診断士の平均年収は739万円で、会社員の平均年収である461万円より大幅に高くなっています。
また、中小企業診断士の4割以上は独立開業しており、企業内診断士の30.9%が独立開業を予定しています。
このことから、中小企業診断士は決して食えない資格ではありません。
独学で中小企業診断士になれる?
独学でも中小企業診断士になることは可能です。
しかし、独学だと以下のようなリスクがあります。
- 学習方法が間違っていても気がつかない
- わからないことが、そのままになりやすい
- モチベーションが持続しづらい
独学では、コツコツと効率よく学習を続けることが何より大事です。
中小企業診断士の資格はなくならない!安心して勉強しよう!
中小企業診断士の資格は、これからもなくなることはありません。
中小企業診断士の資格は難関であるだけに、社会人にとって一種のステータスになります。
また、経済界からも中小企業診断士に合格したビジネスリーダーが求められています。
中小企業診断士の仕事がAIに代替される可能性は0.2%で、将来的にも安泰です。
中小企業診断士の資格を取得することで昇格、昇給、独立、転職などで有利になります。
さまざまなチャンスを手に入れるために、中小企業診断士を目指しましょう。