公認会計士は受験資格がなく、年齢・学歴・国籍問わずだれでも受験できます。年収922万円と平均所得が非常に高いため、公認会計士に憧れて合格を目指す人は後を絶ちません。
しかし、ネット上では「公認会計士はやめとけ」といった主張があります。
今回の記事では、公認会計士はやめとけとなぜ言われるのか、その理由について解説します。
くわえて、公認会計士に向いていない人、向いている人、知っておきたいQ&Aを紹介します。
この記事の目次
公認会計士になるのはやめとけと言われる主な理由3つ
公認会計士になるのはやめとけと言われれる理由は、以下の3点です。
なぜ、周囲がそのような反応を示すのか、詳しく解説します。
理由1:公認会計士は医師・弁護士に並ぶ難関資格
公認会計士の資格は、医師や弁護士に並ぶ難関資格です。
2020年の合格率は10.8%で、偏差値74に相当する難易度でした。大学受験にたとえると、東大合格と同レベルの難しさです。
公認会計士の難易度が高い理由は以下の通りです。
- 試験範囲がとても広い
- 法律の文章を解く問題が多く、内容が複雑
- 出題される問題量が多い
一方、公認会計士には受験資格が必要ありません。そのため、一般的に公認会計士は難易度の高い資格という印象がありません。
印象と実態の難易度が大きく異なるため、「公認会計士はやめとけ」と言われるのです。
理由2:仕事内容が激務かつ単調でつまらない
公認会計士の仕事内容は大きく分けて以下の4つです。
- 監査
- 税務
- コンサルティング
- 会計
中でも監査は公認会計士の主な仕事で、財務諸表のチェックを行います。
財務諸表のチェックには、膨大な量の事務作業が伴います。事務作業は単純作業になりがちで、公認会計士の中にはつまらないと感じる人も。
また、公認会計士の仕事は激務になりがちです。
監査法人の公認会計士は決算後の4月、5月が忙しく、残業が当たり前です。月の残業時間が100時間を超えることも珍しくありません。
繁忙期は忙しい公認会計士ですが、閑散期である8月や11月は「長期休暇が取りやすい」「毎日、定時で帰ることができる」といったメリットもあります。
閑散期のことを考えると、一方的に「激務で単調」とは言えません。
理由③:将来的に仕事をAIに奪われてしまう
「公認会計士はやめとけ」と言われる理由の1つに、「将来的にAIに仕事を奪われてしまう」が挙げられます。
イギリスのオックスフォード大学でAIを研究するマイケル・A・オズボーンは2013年に、「20年後にアメリカ人労働者の47%の仕事がAIで自動化されるリスクがある」と発表しました。
ほかにも、2015年に日本の野村総合研究所が、「20年後には日本の労働者の49%がAIで代替可能」と発表。
しかし、総務省の発表によれば多くの有識者が「AIが代替する仕事以上に、新しい仕事がAIの発展によって創出される」としています。
公認会計士も単純作業がAIに置き換わるだけで、新たに創出される仕事があるはずです。そのため、AIが発展しても公認会計士の仕事はなくならないでしょう。
公認会計士に向いていない人の特徴5選
公認会計士に向いていない人の特徴は、以下の5つです。
挙げられた特徴に当てはまる人は、公認会計士になることを検討しなおしましょう。
特徴1:公認会計士を目指す理由が収入だけ
年収だけを理由に公認会計士を目指すと挫折する可能性が高いでしょう。
公認会計士の平均年収は、922万円と非常に高く魅力的です。サラリーマンの平均年収は約460万円です。公認会計士の年収はサラリーマンの2倍になります。
しかし公認会計士の資格取得はとても難易度が高く、東大合格と同じレベルです。公認会計士に合格するのに必要な勉強時間は4,000時間と言われています。
また、公認会計士になったとしても適性がなければ長続きしない可能性もあります。
収入以外に「数字が好き」「コツコツ作業するのが好き」などの目指す理由があると、挫折する可能性が低くなります。
特徴2:勉強する時間が取れない人
仕事が忙しくて勉強する時間が取れない人は、公認会計士を目指すのに向いていません。勉強時間が確保できないと、途中で挫折してしまう可能性が高いです。
公認会計士の資格を取るために必要な勉強時間は、3,500時間~4,000時間です。最短でも2,500時間は勉強時間が必要とされています。
受験期間の設定は1年半~2年が一般的です。勉強を2年間で終えるとすると、1日あたり5時間~6時間くらいの勉強時間が必要とされます。
実際に、公認会計士に合格する人の7割以上が学生か無職です。
まとまった勉強時間が継続して取れないと、公認会計士を目指すのは難しいでしょう。
特徴3:公認会計士が楽な仕事だと思っている人
公認会計士を楽な仕事だと勘違いしている人は、公認会計士になれたとしても長続きしないでしょう。
公認会計士の仕事は、「黙々とパソコンに向かって作業をする」「書類とにらめっこ」「人と話すことがあまりない」といった印象があります。
そのため、公認会計士の仕事を楽だと勘違いする人もいます。
しかし、公認会計士は、忙しい時期に残業が月100時間を超えることも珍しくありません。
また、コミュニケーション能力が低いと公認会計士は務まりません。公認会計士はチームでうまく立ち回る必要があり、クライアントとの調整事項でもコミュニケーション能力が求められます。
特徴4:細かな事務作業が苦手な人
公認会計士の主な仕事は監査です。
- 監査とは
- 「財務諸表監査」の略語で、クライアント企業が作成した財務諸表に間違いがないかどうかチェックし、重要な点について誤りがないと保証すること。
監査には膨大な事務作業が必要です。
このため、細かな事務作業が苦手な人は公認会計士には向いていません。
特徴5:クリエイティブな仕事をしたい人
公認会計士の仕事はクリエイティブではありません。
公認会計士の主な仕事である監査は、細かな事務作業の積み重ねです。
年次や役職が上がれば、全体の差配を任されることになり仕事が面白くなります。しかし、それでもクリエイティブとはほど遠いのが公認会計士です。
クリエイティブな仕事がしたいなら、公認会計士以外の仕事を検討しましょう。
公認会計士に向いている人の特徴5選
公認会計士に向いている人の特徴は、以下の5つです。
特徴1:数字に苦手意識がなくITリテラシーがある人
公認会計士に向いている人の特徴として、数字に強くITリテラシーがあることが挙げられます。
公認会計士とは、財務諸表などを扱う専門家です。財務諸表をチェックして、間違っているポイントを見抜けなくてはいけません。
そのため、公認会計士は数字に強いことが求められます。
くわえて、昨今の会計部門ではIT化が進んでおり、公認会計士にもITリテラシーが必要です。基本的なパソコンの操作はもちろんのこと、クライアント企業が使用するソフトウェアに対応する必要もあります。
公認会計士には守秘義務があるため、情報漏洩防止のためのセキュリティ対策も必要です。
このように、公認会計士は「数字に強いこと」「ITリテラシーが高いこと」が求められます。IT関係でも学習意欲の高い人が公認会計士に向いているでしょう。
特徴2:真面目で公正な人
公認会計士には、真面目で公正な人が求められます。
公認会計士は独立した第三者として、クライアント企業の監査を行います。
第三者として監査を行うことで、企業の利害関係者に対して決算情報の正当性を担保。企業は正当性が担保された決算情報を投資家に開示します。
会計上の不正があればそれを指摘する必要があるため、公認会計士には公正な姿勢が求められます。
また、公認会計士の仕事は地道な事務作業の連続です。地道にコツコツとミスなく仕事をこなせる真面目さが必要とされます。
特徴3:コミュニケーション能力が高い人
公認会計士には、コミュニケーション能力の高い人材が求められています。
公認会計士は、黙々と作業をしている印象があります。しかし、監査はチームで行いますので、スタッフ同士のコミュニケーションは欠かせません。
年次や役職が上がれば、クライアント企業とのやりとりも必要になります。
仕事を円滑に進めるために、公認会計士であってもコミュニケーション能力が求められるのです。
特徴4:会社経営に関心がある人
会社経営に関心がある人は公認会計士に向いています。
公認会計士の仕事には、監査のほかにコンサルティングがあります。公認会計士のコンサルティングは、財務諸表や資金繰りをチェックして経営者にアドバイスを行う財務コンサルティングが主です。
たとえば、資金繰りや財務諸表をチェックして改善の必要があれば、資金の調達方法や企業価値の高め方について提案します。
コンサルティング分野において、会社経営に関心のある公認会計士が求められています。
特徴5:自己管理能力が高い人
公認会計士には、自己管理能力が高い人が向いています。
決算後の4月、5月は公認会計士にとって非常に忙しい時期です。月の残業時間が100時間以上になることも珍しくありません。忙しさのため、体調を崩しやすい時期でもあります。
こういった繁忙期を切り抜けるためには、体調管理やスケジュール管理、メンタルヘルスケアを心がける自己管理能力が必要です。
また、公認会計士になるには難易度の高い試験に挑まなくてはなりません。受験スケジュールを決め、それに向けて持続的に勉強をする自己管理能力が求められます。
公認会計士の資格を得るにも、公認会計士となって働くにも、自己管理能力が高い人が向いています。
公認会計士の魅力ややりがい
公認会計士は、専門性が高くハードな職業です。しかし、それだけ魅力があり、やりがいの大きな職業でもあります。
魅力1:監査業務は公認会計士の独占業務である
公認会計士の最大の魅力は、「監査業務」という独占業務があることです。
独占業務のある資格は、やりがいや収入が充実している傾向があります。
監査業務とは、企業が公表する財務諸表が、企業会計ルールに則って適切に作成されているかをチェックすることです。
共通の会計ルールに基づいて作成された財務諸表だからこそ、銀行や投資家から信頼され、評価基準となり得るのです。正しい計算がなされないまま、虚偽の財務諸表が世間に公開されれば融資判断・投資判断の基準にはなりません。
監査業務は、会計士の独占業務であり、責任の重い仕事ですが、社会に貢献できる素敵な職務です。
魅力2:公認会計士は高収入な職業である
公認会計士の魅力として、収入面に恵まれていることもあげられます。
厚生労働省賃金構造基本統計調査の調べでは、公認会計士の初任給は550万円〜650万円、平均年収は1,200万円前後となっています。
公認会計士の主な業務は、監査業務です。
会計界の弁護士といわれ、公正かつ正しい財務諸表を企業が公表できるよう任務にあたっています。ミスが許されない職業だからこそ、高収入な待遇がなされているといえます。
(参考:厚生労働省『賃金構造基本統計調査』)
魅力3:税理士や経営コンサルティングなど多様な働き方が可能
公認会計士の独占業務は監査業務ですが、税理士として働く道や経営コンサルタントとして活躍することもできます。
税理士として働く選択肢
公認会計士に登録すると、税理士試験を受けなくても税理士登録できます。
公認会計士のクライアントは、グローバル企業や規模の大きな企業です。税理士のクライアントは、中小企業〜ベンチャー企業などです。
日本企業の9割は、中小企業が占めています。故郷で働きたい、地方で暮らしたいという人は、税理士事務所を開業するという選択肢がぴったりです。
地方で事業展開するベンチャー企業に、税理士として関わることで、地方創生や地域活性化に貢献できます。
経営コンサルタントとして働く選択肢
公認会計士としての経験を積むと、経営マネジメントやコンサルティングにも関われます。
企業内でCFOとして経営マネジメントに携わったり、コンサルタントとして起業する道も拓けてくるのです。
監査法人就業中には、”企業外部に見せる財務会計”のプロフェッショナルとして活躍できます。多くの外部向けの財務諸表に関わるので、企業の経営分析や将来予測などが身につくことでしょう。
このように、 公認会計士は大変やりがいのある仕事であり、活躍のフィールドも広い職業です。
税理士やコンサルタントとして起業した場合には、働く場所やワークライフバランスを自分で選択できます。
公認会計士にはならなくても実務に役立つおすすめ資格
最後に、公認会計士にはならなくても会計職に役立つ資格を紹介します。
税理士資格
税理士試験の科目合格制度について
税理士試験と公認会計士試験では、大きく異なる点があります。「科目合格制度」です。
公認会計士試験は、全科目を一度に合格する必要があるため学習にほとんどのエネルギーを注ぐ必要があります。
ですが、税理士試験の科目合格制度は、1年に1科目ずつ取得することができます。
社会人が、仕事をしながらチャレンジしやすいことが税理士試験の特徴です。
公認会計士試験と税理士試験の関連
公認会計士試験との共通点は、財務会計論です。
財務会計論は、税理士試験では「簿記論」「財務諸表論」という2科目に区分され出題されます。
公認会計士試験に向けて学んできたことは、ほとんどが税理士試験と簿記検定に役立つ内容です。
会計職を目指すと決めたものの、税理士の受験資格がないために、公認会計士を目指す選択肢しかなかった人もいるはずです。
学習スタート時と違い、公認会計士の学習を重ねてきたなら、税理士受験への転向も検討可能です。日商簿記1級または、全経簿記上級の検定に合格すれば税理士試験の受験資格を取得できます。
簿記検定
簿記検定を取得するなら2級を目標に
ビジネスに通用する簿記検定は「日商簿記検定2級」からと言われています。
簿記3級レベルは、会計職か否かにかかわらず社会人が身につけておくべきスキルに過ぎず、会計職ではもの足りないというのが本音です。
簿記1級は、大企業を対象とした会計スキルを習得する試験です。中小企業の経理職を目指すなら、簿記1級までは取得しなくて大丈夫です。
簿記2級では、中小企業の会計処理に対応したスキルを習得できます。
日本の企業のうち、99%を占めるのが中小企業です。中小企業の経理なら、簿記2級レベルの知識があれば、会計職として十分活躍できます。
公認会計士試験と簿記検定の関連
公認会計士試験と簿記検定の学習内容には、重複部分があります。
財務会計論に商業簿記・会計学の学習内容が、管理会計論に工業簿記・原価計算の学習内容がリンクします。
社会人の場合、簿記検定2級に合格できたら、公認会計士を目指すこともルートの1つです。
簿記1級は、出題傾向にクセがあり、ある程度学習の進んだ公認会計士受験生でも、不合格となる場合があります。
そのため、簿記1級合格にこだわると時間をムダにしてしまう可能性があります。
資格予備校では、簿記2級に余裕をもって合格できた段階で公認会計士を目指すことをオススメすることが多いようです。
公認会計士の知っておきたいQ&A!
公認会計士を目指すにあたって、知っておきたい疑問や質問にわかりやすく回答します。
試験の難易度と必要とされる勉強時間は?
公認会計士の試験の難易度は偏差値74に相当し、東大合格と同レベルです。公認会計士は医師、弁護士に続き難易度の高い資格です。
2020年の合格率は10.8%で、倍率10倍の狭き門でした。
公認会計士の合格に必要とされる勉強時間は、3,500時間~4,000時間です。2年間勉強するとして、毎日5時間~6時間は勉強する必要があります。
公認会計士になるための費用はどれくらい?
公認会計士講座を受講するための費用は、28万円~84万円です。
自前で校舎を有し、多数の合格者を出している予備校ほど費用が高い傾向にあります。通学か通信かによっても費用は変わってきます。
主な予備校は以下の通りです。
- クレアール
- CPA
- LEC
- TAC
- 資格の大原
- ICOライセンススクール
- 資格のFIN
自身の環境や予算と照らし合わせて、最適な予備校を選択しましょう。
公認会計士の仕事内容や年収は?
監査と呼ばれる財務諸表のチェックが、公認会計士の主な業務の1つです。
企業は株主に経営内容を伝えるため、財務情報を公開します。このとき、企業の経営者は正しい財務情報を公開する義務を負っています。
そこで、公認会計士が財務諸表の監査を行い、企業の財務情報が適正であることを保証するのです。
年収についてですが、公認会計士の平均年収は922万円で一般的なサラリーマンの2倍です。
監査法人に就職した場合に初任給は、年収550万円前後となります。初任給は月額にすると、30万円~35万円ほどです。
2chやYahoo!知恵袋で「公認会計士はやめとけ」と言われるのはなぜ?
公認会計士は受験資格がなく、年齢・学歴・国籍問わずだれでも受験できます。また、公認会計士になれれば非常に年収が高いため、とても魅力的な仕事です。
多くの人が公認会計士を目指しますが、公認会計士の合格率はわずか10.8%です。そのため、ほとんどの人が試験に落ちて挫折します。
挫折した人の中には、認知的不協和を生じさせる人も。認知的不協和とは、背が届かなくて採れなかったブドウを「あれはどうせ酸っぱかったんだ」と思い込もうとすることです。
同じ理由で、挫折した人たちは「やっぱり公認会計士にならなくて正解だった」と思い込み、「公認会計士はやめとけ」とアドバイスしてくるのです。
公認会計士やめとけ まとめ
「公認会計士はやめとけ」と言われる主な理由は、以下の3つです。
難関資格であることは確かです。しかし、仕事内容が忙しいのは4月、5月であり、逆に閑散期の8月や11月は長期休暇が取りやすいといった面もあります。
また、AIに将来的に仕事を奪われる可能性はゼロではないものの、AIを補佐として新たな仕事が創出される可能性の方が大きいでしょう。
公認会計士は平均年収が922万円と非常に高く、受験資格が必要ないためにだれでも挑戦できます。ただし、資格の取得は非常に困難で東大合格並みのハードルの高さです。
いつ受験をするのか決めて勉強のスケジュールを組み立て、合格に向けてコツコツと勉強して高いハードルを乗り越えましょう。