連載「企業が資格取得支援制度を導入するメリット」、前回の第1回は、資格取得支援制度を導入するメリットや、資格取得支援制度の具体例について解説しました。
福利厚生の一環として導入を検討されているご担当者様にとって、興味深い内容だったのではないでしょうか?
次のステップは、いよいよ資格取得支援制度の導入です。
第2回の今回は、資格取得支援制度の導入時に注意すべき点やポイント、さらには制度活用のコツについて見ていきます。
制度導入にあたり障害となるのが、やはり費用面ではないでしょうか。国や地方自治体から受けられる助成金などの公的制度についても、記事後半で触れています。
最後まで読み終わるころには、資格取得支援制度導入への具体的なイメージができているはずですよ。
企業が資格取得支援制度を導入するメリット
第1回では主に資格取得支援制度を導入するメリットをお伝えしましたが、もちろん注意点(デメリット)も存在します。
コスト面と工数面の2つの注意点があるので、具体的に説明しますね。
① コストがかかる
まず1つ目は、当然ながらコストがかかる点です。申請者が増えれば増えるほどコストも膨らみます。
資格取得支援制度の導入にあたっては、経営状況をしっかり確認したうえで予算策定を行う必要があるでしょう。
せっかく福利厚生に加えた制度を、コストを理由に廃止してしまっては元も子もありません。社員のモチベーションを下げてしまうのはもちろん、「うちの会社の経営は大丈夫か」といった不信感も与えてしまいます。慎重に検討しましょう。
② 人事総務・経理部門担当者の工数が増える
2つ目は、人事総務や経理部門担当者の工数が増えてしまう点です。
社員からの制度利用申請は、直属の上司の承認を経て、人事総務部門担当者へ流れてきます。申請内容を確認したり、不備があった場合には差し戻したりと、資格取得支援制度を導入したことで新たな業務が発生します。
さらに社員の資格取得時に発生するのが、合格奨励金(お祝い金)や資格手当の支給など、お金関係の業務です。こちらは経理部門の業務になるため、資格取得支援制度の導入により少なくとも2部門の工数が生じることになります。
資格取得支援制度は利用する社員にとってはありがたい制度ですが、その一方で処理に追われる担当者への配慮も忘れてはなりません。
関連部門に十分な人材がいるのか、申請や処理の方法が煩雑になっていないかなど、担当部門の工数をなるべく減らすような制度設計が必須です。
資格取得支援制度時の導入時のポイント
注意点やデメリットもきちんと理解したうえで、それでも制度を導入するという結論に至ったのなら、混乱なくスムーズな運用ができるようにしたいですよね。
ここからは、資格取得支援制度を策定する際のポイントや、制度をうまく運用していくためのポイントを全部で3つ紹介します。
ポイント① 補助金額や対象外となる要件、申請方法を社内規定で明記する
1つ目は、補助金額や対象外となる要件や申請方法について、社内規定でしっかり明記することです。
社員が各自で社内規定にアクセスして制度に関する情報を確認し、申請することができれば、担当者の負担も減らせます。
「当社にはこんな制度がありますよ」「社内規定はこのフォルダーのここに格納されていますよ」などと、イントラネットなどを通じて積極的に発信することがポイントです。
ポイント② 上位資格取得にチャレンジしたくなるような設計にする
2つ目は、資格の難易度に応じて合格奨励金や資格手当の金額を変えることです。
国家資格や上位の公的資格を取得した場合は合格奨励金や資格手当の金額を高めに、逆に民間資格や基礎的な資格の場合は低めに設定しましょう。
社員にとっては上位の資格取得を目指すモチベーション形成にもなります。一方で、企業にとっても資格取得支援制度が継続的に利用されやすくなるなど、双方にとってメリットがあります。
ポイント③ 対象となる資格を定期的に見直す
3つ目は、対象となる資格はできれば年に1回、難しいようならば3年に1回などのスパンで見直すことです。
時代とともに新しい資格が登場したり、重要と捉えられる資格が入れ替わったりするからです。
「対象となる資格リストには入っていないけれども、何か追加してほしい資格はないか?」と社員にアンケートを実施するのもよいでしょう。人事総務担当者があれこれリサーチするよりも、実際にその部門で働く社員に聞く方が手っ取り早いですからね。
現場の生の声を聞くことによって、実務に直結する資格や職種の中で重要とされる資格など、様々な情報が入手できます。
公的制度をうまく活用して、資格取得支援制度導入を進めよう
国家資格・公的資格・民間資格など資格取得支援にかかる費用を補填するために、公的制度を利用して助成金をもらうという方法もありますよ。
本項では、社員教育や研修を後押しする公的制度として、厚生労働省が実施する「人材開発支援助成金」と、東京都が実施する「オンラインスキルアップ助成金」について紹介したいと思います。
公的制度例:人材開発支援助成金「人への投資促進コース」
厚生労働省が実施する「人材開発支援助成金」は7つのコースに分かれています。
今回はその中で、福利厚生や資格取得支援制度と関連がある「人への投資促進コース」について紹介します。
人材開発支援助成金「人への投資促進コース」は2023年4月の制度見直しにより、以下3つの点が改められ、より利用しやすくなりました。
① 助成率の引き上げ
② 助成対象となる訓練制度の新設
③ 助成条件の緩和
概要 | 支給条件 | 具体例 |
高度デジタル人材訓練/成長分野等人材訓練 | ||
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定額制訓練 | ||
eラーニングなど、サブスクリプション型の研修サービスを用いた訓練への助成 | 勤務時間中に10時間以上の受講 | 勤務時間中にeラーニングを利用して勉強した |
自発的職業能力開発訓練 | ||
労働者の自発的な職業訓練費用を事業主が負担した訓練 | 従業員が自発的に受講した訓練の費用のうち、2分の1以上を事業主が負担 | 社員が自身のスキルアップのために外部講座を受講、もしくは資格を取得し、会社が費用を支援した |
教育訓練休暇等制度 | ||
「教育訓練のための休暇付与制度」を導入することにより助成金が支給される(利用の有無は問わない) |
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今回は割愛しますが、ほかにもIT未経験人材の育成を支援するものもあります。要件や申請方法は細かい規定があるため、詳しくは厚生労働省のサイトでご確認ください。
公的制度例:オンラインスキルアップ助成金
国が実施している助成金は補助が手厚い分、要件も複雑です。先述の「人材開発支援助成金」は訓練計画を事前に提出する必要があり、対象とならない訓練も細かく指定されています。「助成金がもらえるのは魅力的だけど難しい」と感じる方は多いかもしれません。
国だけではなく、地方自治体が実施している助成金もあります。例えば、東京都が独自に実施している中小企業向けの助成金「オンラインスキルアップ助成金」は、経費の3分の2(上限27万円)がもらえますよ。
オンラインスキルアップ助成金という名前だけあって、eラーニング等を利用するタイプの訓練が対象です。業務に必要な知識・技術習得のための訓練のほか、資格取得を目的とするものも含まれます。
必要書類は申請書のほか、組織図や受講者名簿、講座内容(カリキュラムなど)、受講履歴、受講料支払いが確認できる書類などです。
助成金の申請なので用意すべき書類はそれなりにありますが、比較的用意しやすい内容でしょう。
地方自治体の助成金の一例として、東京都のものを取り上げました。
ほかにも千葉県には「千葉市中小企業人材育成研修費補助金」、愛知県には「刈谷市中小企業人材育成支援事業補助金」といった独自の助成金が用意されています。
ぜひ一度、所属する地方自治体の助成金を調べてみてください。
参考:
東京しごと財団 オンラインスキルアップ助成金
千葉市中小企業人材育成研修費補助金
刈谷市中小企業人材育成支援事業補助金
今回は、資格取得支援制度の導入時に注意すべき点やポイント、さらには助成金情報について解説しました。具体的なイメージは描けましたか?
「福利厚生としてせっかく資格取得支援制度を導入したのに、なかなか普及しない」なんてことになっては本末転倒です。制度設計は入念に行いましょう。
続く第3回では、資格取得支援制度を導入して良かった点・悪かった点を、実体験を盛り込んで解説します。どうぞお楽しみに。
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