連載「企業が資格取得支援制度を導入するメリット」、前回は、「資格取得支援制度」を福利厚生に追加した後のリアルな成功談と失敗談を、インタビュー形式を交えながらお届けしました。
最終回の今回は、取得を奨励する民間資格・公的資格・国家資格についての解説です。業界や業種ごとに具体的な資格を紹介しています。
「うちの会社ではどんな資格の取得を奨励したらいいんだろう?」と悩んでいるご担当者様は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
業種と業界の違いとは?
まず本題に入る前に質問です。皆さんは「業種」と「業界」の違いはわかりますか?
改めて聞かれると、意外と答えられないものですよね。
業種とは事業の種類のことで、総務省が定める「日本標準産業分類」の中では、大分類として20種類の業種が存在します。
さらにより細かな区分として、中分類・小分類・細分類に分かれています。例えば「製造業」は大分類の業種、製造業の中でも「食料品」は中分類の業種といった具合です。
業種をさらに細分化したものが業界です。例えば「サービス業(業種)」であれば、そこに紐づくホテルや外食、広告といったサービスがそれぞれ業界となります。
資格選びや就職・転職に役立つ!意外に知らない産業・業種・職種の違いとは?それではさっそく、業種・業界別に取得を奨励する民間資格・公的資格・国家資格を紹介していきます。大きく5つの業界に分類し、計12個の資格をピックアップしました。
取得奨励資格|金融業界編
日商簿記
日商簿記は金融業界に限らず、経理・財務のポジションに就いている人の取得率が高い公的資格です。日商簿記3級は入門編の位置づけの資格で、お金の流れの基礎知識が学べます。
次に紹介するFPや証券外務員の資格取得前に日商簿記の勉強をしておくと、理解しやすくなるのでおすすめです。
日商簿記3級の資格概要FP
「FP」という呼び名が一般的になっていますが、正式名称は「〇級ファイナンシャル・プランニング技能士」です。銀行や保険会社など、金融業界の中では特に保有者数の多い資格です。
1級・2級・3級ともに国家資格ですが、一般的に評価されるのは2級からになるため、奨励資格とするなら2級以上がおすすめです。
1級は合格率が10%台という難易度の高い資格なので、資格手当に加え合格奨励金の支給も検討するとよいでしょう(連載第1回参照)。
FP2級の資格概要証券外務員
証券外務員は、日本証券業協会が認定している民間資格です。
証券外務員の資格がないと金融商品を顧客に販売したり、金融商品の相談にのったりすることができません。そのため、金融業界の中でも営業職に就く人にとっては必須の資格です。
営業ポジションの社員にはまず証券外務員の取得を推奨しましょう。
証券外務員二種の資格概要取得奨励資格|不動産/建設業界編
宅地建物取引士
宅地建物取引士(宅建士)は、不動産業で必須の資格というイメージが強いですが、金融業界や建設業界でも重宝される国家資格です。金融業では不動産を担保として扱うほか、建設業では建築にかかわる法律の知識が求められるからですね。
宅地建物取引士の資格登録者数は、1993年度以降増加傾向が続いています。
宅地建物取引士を資格手当の対象としている企業も多いです。取得奨励資格に加えるほか、資格手当の支給も検討するとよいでしょう。
宅建の資格概要取得奨励資格|IT業界編
ITパスポート
ITパスポートは、ITに関する基礎的な知識を証明できる国家試験です。リモートワークの普及や社内データのデジタル化に伴い、ITの知識は英語力と並んで社会人の常識となりつつあります。
ITパスポート応募者数は2009年の開始以来、右肩上がりで伸びています。非IT企業でも応募者数が多いことから、IT企業に限らず、また職種に限らず、取得を奨励したい資格の1つです。
合格奨励金の対象とするなど、社員が積極的に取得するような工夫をするとよいでしょう。
情報セキュリティマネジメント
情報セキュリティマネジメントは2016年から開始された、比較的新しい国家資格です。
ITパスポートは、2023年の現代においては社会人のみならず学生であっても持っているべき資格です。
一方、この情報セキュリティマネジメントは組織における情報の安全性を確保し、適切に運用する人が持っているべき資格です。企業の情報セキュリティ担当者やIT部門の社員には、まず取得を奨励しましょう。
情報セキュリティは担当者に限らず、社員1人1人が意識しなければならないことです。ITパスポート同様、情報セキュリティマネジメントも資格手当や合格奨励金の対象とし、取得を促すことをおすすめします。
情報セキュリティマネジメントの資格概要取得奨励資格|サービス業種編
秘書検定
秘書検定は、公益財団法人実務技能検定協会が認定する、文部科学省後援の民間資格です。「就活に有利な資格」としておなじみですね。私も学生時代にまず秘書検定を取得しました。
秘書検定ではビジネスマナーや敬語、来客への対応の仕方など、社会人として身に付けておくべき知識を学べます。
1級では実技もあるため、知識だけではなく実際のシチュエーションを想定して実践できます。学習内容そのものが社会人としての一般常識なので、秘書に限らず取得を奨励したい資格です。
秘書検定2級 3級の資格概要サービス接遇検定
サービス接遇検定も秘書検定同様、公益財団法人実務技能検定協会が認定する民間資格です。特に接客業で求められる応対、言葉遣いに加え、対人心理なども学べます。
ブライダル、ラグジュアリーブランド、ホテル業など、高いレベルの接客が求められる業界では積極的に取得を奨励していきたいですね。スタッフのレベルの底上げ、顧客満足度の向上が期待できるでしょう。
サービス接遇検定 準1級 2級の資格概要取得奨励資格|美容・アパレル・インテリア業界編
色彩検定
色彩検定は、文部科学省後援の公的資格です。色に関する基礎知識をはじめ、実践的な活用まで幅広く学ぶことができます。主にアパレルなどのファッション業界や、美容師・メイクアップアーティストといった美容系に従事する人の取得率が高い資格です。
それ以外でも、例えば企業の商品開発部門の社員にもおすすめです。色の知識があると、商品の魅力をより引き立たせたり、目的別の訴求がしやすくなったりします。
色彩検定3級の資格概要パーソナルカラリスト検定
パーソナルカラリスト検定は、一般社団法人日本カラリスト協会が認定する民間資格です。
色彩検定と似ている資格ではありますが、パーソナルカラリスト検定は特に「その人の魅力を最大限に引き出す」色を提案することに重きを置いています。
「ブルべ」や「イエベ」といった言葉もよく耳にするようになりましたよね。「自分に本当に似合う色」に気づいていない人は意外と多いもの。
アパレルやメイクの販売員など、実際に接客をしてお客様に提案する職種に就く社員への取得を奨励するとよいでしょう。
アロマテラピー検定
アロマテラピー検定は、公益社団法人日本アロマ環境協会が認定する民間資格です。ビジネスのみならず、女性を中心に趣味の一環で勉強・取得している人も多いですよね。
香りが人に与える作用は大きく、リラクゼーションサロンやビューティーサロンではもちろんのこと、保有していると何かと便利な資格の1つでしょう。例えば企業やお店のエントランスでもアロマを用いてリラックスを促すなど、来訪者をおもてなしするツールとしてアロマが活用されています。
取得者が増えれば、香りを活かした何か斬新なアイデアが生まれるかもしれません。
インテリアコーディネーター
インテリアコーディネーターは、公益社団法人インテリア産業協会が認定する民間資格です。住宅やインテリアなどのメーカー、工務店、販売店などで、お客様の要望に沿ったコーディネートや商品選択のアドバイスを行います。
インテリアと一口に言っても、内装から家具、ファブリックス、照明など多岐にわたりますよね。地方への移住も増え、快適な住居作りにこだわりを持つ志向性が高まる中、専門的な視点からアドバイスを行えるインテリアコーディネーターの需要も高まっています。
インテリアコーディネーターの資格概要連載「企業が資格取得支援制度を導入するメリット」、4回にわたり、資格取得支援制度に関するアレコレをお話ししてきました。
前半の2回は、資格取得支援制度を福利厚生に加えるにあたってのメリットとデメリット、資格手当や合格奨励金といった具体的例、注意点やポイントについてを解説。
そして後半2回では、資格取得支援制度導入の実体験インタビュー、業界別の取得奨励資格を解説しました。
事前設計をしっかりし、トライアンドエラーを行いながら、資格取得支援制度をより良い制度にブラッシュアップしていきましょう。
本記事が、資格取得支援制度導入に悩んでいるご担当者様の一助となれば幸いです。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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