連載「親必見!家庭でできる英語教育のポイント」 、前回までは、学校の英語教育が早期化した背景や、小学校で行われる英語の授業内容などをお伝えしました。
小学3・4年生で英語が必修化し、学校での英語教育は難化。小学校卒業までに求められる英語力を確実に身に付け、中学校で始まる本格的な英語学習にスムーズにシフトできるよう、家庭でもできる学習方法についてお伝えしましたね。
連載4回目の今回は、中学生の最新英語教育情報をお伝えします。
2021年度からは中学でも、新学習指導要領が全面実施となりました。これまでとどう違うの?と疑問に思っている親世代の方へ向けて、主な変更点と子供を伸ばす英語学習のポイントを、元英語教師がご紹介します。
新しくなった中学英語の内容と気になる変更点
中学校の新学習指導要領からは「アルファベットの大文字と小文字」の学習がなくなりました。ABCは小学校で必修化している前提であることが見て取れます。
小学3・4年生の英語活動は2020年度から必修化し、同時に小学5・6年生の英語は教科となりました。そして中学校の英語教育では、新学習指導要領が2021年度に全面実施となりました。
これにより、中学生は週4時限、年間140時限も学校で英語を学ぶことに。
3年間の総授業時間数は、国語や数学の385時間を超えて英語が420時間と、ダントツのトップとなっているのです。英語がどれほど重要視されているか、ご理解いただけるのではないでしょうか。
(注:中学校の1時限=1授業時間は50分)
では、これまでの英語教育との違いをご説明していきましょう。
気になる違い(1)文法が広範囲に
新学習指導要領では、親世代では学んでいなかった文法項目が3つ追加されています。
- 感嘆文 How interesting! (なんて面白いんでしょう!)
- 現在完了進行形 It has been raining since this morning. (昨日の朝からずっと雨が降っている。)
- 仮定法 If I had my own computer, I could get some information on the Internet. (自分のパソコンがあれば、情報をインターネットでゲットできるのになあ。)
引用:文部科学省 中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 外国語編
3つ目の仮定法は、「現実には起こっていない状況を想像して、仮定する」表現です。
今現在のことでも、実際には起こっていないことを表現するために「If+過去形, 主語+助動詞過去形」を使って表現します。
より高度な英語表現力が求められているのが、おわかりいただけるでしょう。
気になる違い(2)単語の数が増加
親世代が中学校で学んだ英単語数は、年齢にもよりますが、約900~1,200語です。今の中学校では、親世代の約2~3倍弱の単語数を学びます。
英語教育必修化後の小学生は600~700語の単語を学んだことが前提となっています。これに加えて、中学生は約1,600~1,800語の新しい語を学ぶことになりました。
合計すると2,200語~2,500語も覚えることになるのです。
ここで、筆者の教師時代、中学校の教科書で見た記憶のない単語・熟語を下にあげてみますね。
durable 長持ちする、耐久性のある
promote ~を促進する
quantity 分量
tragic 悲痛な、痛ましい
equator 赤道
recess (授業間の)休憩時間
break down~ 分解される、破壊する
pass down~ (知識など)を(次の世代へ)渡す
「search engine(s) 検索エンジン / droneドローン / smartphoneスマホ」などの、今どきの単語もあります。
参考教科書:光村図書「Here We Go!」 1.2.3
教科書によって学習する単語は異なりますが、親世代が中学校で学習した単語に比べて難化しているともいえます。
英語でコミュニケーションをするのには十分すぎるくらいの単語数を学ぶ、今どきの中学生は大変です。
気になる違い(3)授業は英語で行うことを基本とする
これまで、高校の学習指導要領には「授業は英語で行うことを基本とする」と記載されていましたが、2021年度からは中学校でも実施されることになりました。
「中学校の英語授業が全部英語で行われるの?」と心配になった方もいらっしゃるでしょう。でも、ご安心ください。ちゃんと配慮されることになっています。
新指導要領には
生徒が英語に触れる機会を充実するとともに,授業を実際のコミュニケーションの場面とするため,授業は英語で行うことを基本とする。その際,生徒の理解の程度に応じた英語を用いるようにすること。
引用:文部科学省 中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 外国語編
と書かれており、先生たちは「生徒が理解できる英語」を使うことになっています。
中学英語のレベル感をクイズで確かめよう
ここで、今の中学生が学校で学ぶ英語のレベル感を実際に体験してみましょう!
問題はすべて「基本文」として教科書に掲載されている文となります。
問題:下の日本語を英語に直しましょう。
① 中学1年生レベル
「その伝統的な建物は美しかった。」
② 中学2年生レベル
「自由の女神は東京タワーほど高くはありません。(not を使って)」
③ 中学3年生レベル
「もし私が、あの心配している少女に話しかけることができるなら、私は『心配する必要はないよ。』と言うだろうに。」
以上 参考教科書:光村図書「Here We Go!」 1.2.3
解答①
The traditional buildings were beautiful.
または、
The traditional building was beautiful.
be動詞の過去形を正確に使えますか?
解答②
The Statue of Liberty is not as high (tall) as Tokyo Tower.
not as ~ asの使い方、覚えていますか?
解答③
If I could speak (talk) to that worried girl, I would say, "There’s (There is) no need to worry."
可能性のない仮定を表す「仮定法」の使い方ができているかを確認しています。
実際の事実と違うことを表すのに「If 過去形, I +助動詞の過去形+ 動詞(もしも今~なら、…だろうに)」が使えるか確認してください。
There is no need to worry. は、You don’t have to worry.でもOKです。
あなたは中学1年生~3年生、どの問題まで解くことができましたか?
3年生ともなると高度な英語表現が求められるということが、クイズでもおわかりいただけたと思います。
今の中学生は、親世代よりはるかに多い単語と難しい文法を勉強しなくてはならいのです。
これは、親が寄り添い教えるというよりは、親も一緒に勉強する必要があるのかもしれませんね。
中学生の英語力を伸ばす家庭学習とは?
英語ができるようになるには時間がかかります。できるようになるには「時間がかかる」と覚悟を決めて、家ではできるだけ楽しく英語学習に取り組めると良いですね。
最後は、中学生の家庭学習のヒントをご紹介します。
楽しく英語力を伸ばそう
ご家庭では、英語の力を「楽しく」伸ばすことを意識してみてください。いくつかご紹介しますので、取り組めそうなものから試してみてください。
- 洋楽を聞く
歌詞を見ながら歌ってみると、学習した英文法が満載であることに気がつくはずです。
The Beatles(ビートルズ)やCarpenters(カーペンターズ)などの楽曲は、比較的簡単な英語で書かれている曲が多いですよ。
私が中学校で英語を教えていた時に、授業のWarm Upでも利用していました。 - 映画を副音声で見る
外国のDVDを借りてきて、英語のまま鑑賞してみませんか?
字幕を英語にしても良いと思います。日本映画の字幕を英語にするのもおすすめです。日本のアニメを英語で見るのもとても良い方法です。 - 日本語で読んだことのあるマンガを英語で読んでみる
ドラえもん、ワンピース、鬼滅の刃…さまざまな日本の漫画が英語で発信されています。一度検索してみると、驚くほど豊富なマンガが英語版で出版されています。
値段は日本語のものより少し高いですが、試してみる価値はありますよ。
あこがれの人が英語を使っている動画を見せてあげよう
英語が必要な仕事につかない!とか、英語って本当に必要なの?!と言っているお子さまもいると思います。
そんな場合には「あこがれの人が英語を使っている動画」を見せてあげてください。
サッカーが好きなら、南野拓実選手や久保建英選手が英語でインタービューを受けているのを見せてみましょう。
テニスが好きなら錦織圭選手、ジャニーズ好きには岡本圭人さんや櫻井翔さんが、英語で話している動画を見せるのはいかがでしょうか?
スポーツ選手に限らず、音楽家でも料理家でも役者でも、その道のプロとして世界にも通用する選手には、必ず英語を使う場面があります。有名人でも英語を勉強している人はたくさんいます。
「将来なりたい姿」という観点で、お子さまのために動画を探して見せてみましょう。職業と英語を結びつけると、強いインパクトが子どもの心に残りますよ。
連載「親必見!家庭でできる英語教育のポイント」、4回目の今回は、今どきの中学生の英語教育についてお伝えしました。
2020年の改訂により小学3年生から必修化した英語学習。中学校卒業までの義務教育で、なんと630時限(500時間超)もの英語を学習します。
一般的に英語が使いこなせるようになるまでは1,000時間の学習が必要と言われますので、義務教育だけでその半分の時間を費やしていることになるのです。
親世代が学んできた内容と比べると、難化し、より長い時間勉強することとなった新しい中学英語。
しかし、英語を学ぶ中学生の保護者が大切にしたいことは、同じように難しいことを強いるのではなく、家庭学習を楽しく行うことです。
英語に苦手意識が出てきてしまうと、得意になるのには倍の時間がかかると心得てくださいね。
さて、連載最終回となる次回は、親が中学英語を学ぶメリットをお伝えします。
子の英語教育が早期化・難化したことを受けて、親世代の皆さんも英語学習をスタートしてみませんか?子どもと一緒に英語を学ぶと、良いことがたくさんありますよ。
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