この連載では、全5回にわたり、小学校で英語教育が必修化されたことで起こった変化を、中学校の英語教師だった筆者がわかりやすくお伝えします。
親世代が学んだ英語教育との違いや、子どもの英語力を伸ばす家庭学習のヒントをつかむきっかけとしていただければ幸いです。
第1回の今回は、小学校の英語教育が必修化されたことの背景や変更のポイント、メリット・デメリットをお伝えします。
記事後半では、学校で求められる英語力を確認し、英語力を伸ばす家庭学習のポイントをご提案します。
小学校の英語教育に起きている変化
2020年度から小学校英語の学習指導要領が改訂されたことは、子を持つ親ならご存じかもしれませんね。
しかし、「英語教育が必修化」の言葉は知っていても実際にどう変わったのか、小学校でどんな英語を習うのかまで知っている人は少ないのではないでしょうか。
そこで、実際にどんな変化が起こったのか、英語教育必修化のポイントとその背景を、わかりやすくご説明します。
2020年度の学習指導要領改訂のポイント
2020年度に小学3・4年生になった児童から「外国語(英語)活動」が導入され、年間35時限(1時限は45分)の英語教育が始まりました。
小学5・6年生には「外国語」科が導入され、年間70時限の英語教育が必修となっています。
実は、小学校の英語教育が始まったのは2011年4月からで、今回の改訂から始まったわけではありません。このときの改訂で、今まで英語教育は中学校からだったのが、小学校5・6年生から始まるようになったのです。
そして今回の改訂で、もっと学年の低い小学校3・4年生からも英語教育が始まることとなりました。
ここで、従来との違いを表にまとめました。
2011年4月改訂 | 2020 年4月改訂 | |
---|---|---|
小学校3・4年生 | 英語授業なし | ・外国語活動(英語) ・年間35時限 ・文章により評価 ・「聞く」「話す」が中心 |
小学校5・6年生 | ・外国語活動(英語) ・年間35時限 |
・外国語科(英語) ・年間70時限 ・成績がつき内申に反映 ・600~700語の単語を扱う ・聞く・話す・読む・書く |
注:文部科学省は、2018年度から2020年度までは移行期間という位置づけにし、この期間「3・4年生には最低年間15時限の英語活動を行うこと」としていました。
今回の英語教育必修化による主な変更のポイントは、以下の4つです。
● 従来は5年生からだった英語活動が3年生からスタート(2年早期化)
● 小学校6年間で英語に触れる時間が従来の3倍に(これまでは2年間で計70時限、これからは4年間で計210時限)
● 5・6年生は外国語科(英語)として教科書が配布され、成績がつき、内申に反映される
● 小学校卒業までに600~700語程度の英単語を覚えるという具体的な数値目標が設定された
では、なぜ小学校の英語教育が2年も早まったのでしょうか?
英語教育が小学校で必修化した背景
小学校で英語教育が必修化したのは、主に以下の2つの問題を解決するためです。
● 中学校での英語教育との接続をスムーズにする
● コミュニケーション重視で双方向のやり取りを重視する
これまでの小学校英語では聞く・話すが中心だったので、中学校で始まる英語の授業内容とはかけ離れていました。小学校で2年間も学習したことが中学校で活かされないことが問題となっていたのです。
そこで、英語学習を2年早めて、小学3・4年生で「聞く・話す」を学習し、小学5・6年生で「読む・書く」を学習することに。中学校英語へ、スムーズに入れるようにしたのです。
また、これまでの小学校英語と言えば練習が中心でしたが、これからは自分の考えや気持ちを表す活動を重視することになりました。コミュニケーション中心の学習に転換することにしたのです。
英語教育必修化・早期化のメリットとデメリット
それでは、英語教育が早期化・必修化するとどんな良いことがあるのでしょうか?
英語教育必修化のメリットを4点あげてみます。
● 英語の音声を小さいころから身に付け、英語の耳を作り、発音に慣れておくと有利
● 間違いを恐れず、英語を話す経験ができる
● 日本語との違いを知り、言葉の面白さに気付ける
● 異なる文化や背景を持つ人たちとの交流を通し、文化に対する理解を深められる
反対に、下のようなデメリットや批判の声もあります。
● 小学校で英語を教えられる人材が不足
● 日本語の基礎固めに時間使ったほうが良いのではないかという考え方
● 小学校で週1・2時限英語に触れたくらいでは、英語が使いこなせるようにはならないとの意見
批判やデメリットも理解できますが、元英語教師の立場として、小学校中学年で英語を始めることには大賛成です。
中学校卒業までに求められる英語力
「英語教育の早期化・小学校での必修化は理解したけど、中学校卒業までにどの程度の英語力を身に付けることが期待されているの?」と疑問に思った方もいらっしゃると思います。
続いては、中学校卒業までに求められる英語力をまとめました。
小学校卒業までに求められる英語力
小学3・4年生では「聞く・話す」を中心とした、音声中心の活動です。
英語の音をインプットして英語の音声に慣れる。アウトプットもして、簡単な会話ができるようになるのが目標です。
小学5・6年生では「聞く・話す」に加え、「読む・書く」が入ってきます。
大文字小文字のそれぞれ26文字を書けるようになることのほかに、簡単な英単語を600~700語くらい学習します。
また、音とつづりの関係(いわゆるフォニックス)を理解。語順、肯定文のほかに否定文や疑問文の作り方、動名詞や過去形などの文法も簡単に学習します。
このように、中学校入学前までに、簡単な英文の読み書きができ、身近な話題については簡単な会話ができるレベルにまで到達することが必要です。
中学校卒業までに身に付けるべき英語力は難化!
この記事を読んでいる親世代の人たちが、中学生のときに学んでいた内容よりも、今の中学生が学ぶ英語のほうが、学習範囲が広くなっています。
まず、単語数が増えています。
親世代が中学生で習った単語数は、3年間で約1,200語。
今の中学生は、小学校で600~700語学習し、中学校で1,600~1,800語学習します。卒業するまでに合計2,200語~2,500語を学ぶことになるのです。単純計算で2倍ほどの単語数になっています。
さらに、文法項目も増えています。親世代が中学で学習した項目に加え、仮定法・現在完了進行形・感嘆文が加わりました。この3つは親世代が高校で学んだ範囲です。
加えて、「話すこと」は会話(やり取り)とプレゼン(発表)に分けられました。話すことの重要性が高まったのです。
以上のことから、中学校卒業までに求められる英語力の難易度は高くなったと言えるでしょう。
筆者撮影
子どもの英語力を伸ばす家庭学習のポイント
この記事を読んでいる人の中には、子どもの英語力を伸ばしたいと思っている保護者も多いのではないでしょうか?
最後は、子どもの英語力を伸ばす家庭学習のポイントを2点お伝えします。
親も英語に興味を持って子どもと一緒に取り組もう
まずは、親が英語に触れている姿を子どもに見せましょう。
例えば、洋楽を聞いて口ずさんでみる、ニュースやドラマ、映画を副音声で見てみる、趣味のあれこれについてYouTubeの動画を英語で見てみるなど。勉強でなくても良いです。
親が英語に興味を持っている姿を子どもに見せ、英語がわかるって楽しい!と態度に表すと、子どもも英語への興味がわくはずです。
長期的な視野を持って目標を立てよう
「子どもが18歳になったとき、身に付けた英語力を使ってどんなことができるようになっていてほしいかな?」と考え、子どもが高校を卒業するまでにどんな英語力を持っていてほしいのか、まずは目標を立ててみてください。
英語ネイティブと対等に話せるようになる?大学受験の成功?資格取得?海外留学という人もいるかもしれませんね。
子どもが社会に出る予定の18歳から22歳の時に、英語ノンネイティブとして、ビジネスでも使いこなせる英語力が備わっていれば大成功です。
そうなるためには、「英語ができるようになってほしい」と願う親自身も、子どもが学ぶ英語の学習内容を理解し、それと同等の知識を持っていたほうが、子どもをサポートできて目標達成が近づくのではないでしょうか。
次回以降で、目標を実現させるために、子どもの小学校・中学校時代に親ができることを、お伝えします。
連載「親必見!家庭でできる英語教育のポイント」、第1回の今回は、英語教育必修化についての概要、義務教育で求められる英語力、子どもの英語力を伸ばすためのポイントをお伝えしました。
2020年度から始まった新しい英語学習の内容と、これから取り組むポイントが見えてきましたでしょうか?
次回以降では「小学3・4年生」「小学5・6年生」「中学生」の各段階に分け、求められる英語力の解説や、段階に応じた子どもの英語力を伸ばす家庭学習のヒントを具体的にご紹介します。
第2回は、2020年4月から英語学習が始まったばかりの小学3・4年生の学習内容を具体的にピックアップ!
これからお子さんが初めての英語学習に挑むという方は、心配も大きいと思います。そんな子どもに寄り添ってあげられるよう、まずは自分の小学生の頃とは違う今の英語学習を、知ることから始めてみてはいかがでしょうか。ぜひご覧ください。
参考サイト:
https://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/gaikokugo/index.htm
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