2020年から、小学3・4年生に外国語活動が必修化したことはご存じかもしれません。
しかし、それより前から英語活動をしていた5・6年生の英語の学習内容がどのように変更になったかは、知らない方も多いのではないでしょうか。
連載「親必見!家庭でできる英語教育のポイント」 、3回目の今回は、小学5・6年生の英語教育の内容や家庭学習のヒントを、中学校の英語教師だった筆者が、教師の視点も交えてわかりやすくお伝えします。
小学3・4年生から英語学習が必修化となった理由の1つ、中学英語にスムーズに進むためのヒントが満載です!
小学5・6年生は英語の授業で何を学ぶ?
小学5・6年生はこれまでも年間35時限、学校で英語教育を受けていました。
しかし、2020年度から授業で行う英語の時間は2倍の年間70時間となり、内容も高度になっています。しかし、どの程度高度な内容なのか見当がつかない人も多いでしょう。
そこで、文部科学省が学校を通じて各児童に配布するように指示している「We Can! 1・2」という補助教材を参考にして、実際に行われている授業の内容を解説します。
5年生の英語授業ではどんなことを勉強する?
5年生では、「When is your birthday?」の単元(学習内容のひとまとまり)で、月の名前と日付の言い方を学習します。
Dolls’ Festival(ひな祭り)= March 3rd(3月3日)などと、日本の行事と日付を関連させつつ学ぶのです。
「She can run fast.」の単元では、canを使って「できる・できない」を学習します。
お友達ができること・できないことを予想して「Can you swim?」などと聞いてみる活動です。
また「What would you like?」の単元では、レストランの店員さん役とお客さん役に分かれ、食べたいものを聞く活動を行います。
なんと、5年生で助動詞「would」が出てくるとは!
高度な内容に中学校の元英語教師としては、驚きを隠せません。
6年生では本格的な英会話が始まります!
6年生の初めには、英語で自己紹介をする活動があります。
単語リストの助けを借りながら、
「Hello. I’m Yuta. I like math. I like soccer. I can run fast. My birthday is May 16th. Thank you 」
訳:こんにちは。私はゆうたです。数学が好きです。サッカーも好きです。速く走れます。誕生日は5月16日です。(聞いてくれて)ありがとう。
などと自分のことを紹介します。
「What do you want to be?」の単元では、自分の将来の夢を紹介する文を書いて、発表する活動があります。次の文は、My Dream. という題で紹介されている英文です。
「 I want to be an astronaut. I like watching the stars. I study hard. What do you want to be? Thank you. 」
訳:(将来は)宇宙飛行士になりたいです。星を見るのが好き(だから)です。(だから)一生懸命勉強します。あなたは将来何になりたいですか?(ご清聴)ありがとう。
(注:カッコ内は筆者が意味を補足)
このように、高度な英語を「話して」「書ける」ようになることが目標となっています。
思ったよりも難しくないですか?
必要となる英語のチカラが、この英文にはたくさん詰まっています!
小学3・4年生で行われる外国語活動との違い
5・6年生で必修化した英語の授業では、授業時間数、指導領域、通知表の扱い、単語数などが3・4年生と大きく違います。
違いを表にまとめてみました。
小学3・4年生 | 小学5・6年生 | |
---|---|---|
取り扱い | 外国語活動(英語) | 外国語科(英語) |
時間数 | 年間35時限 | 年間70時限 |
評価 | 文章により評価 (内申には反映されない) |
成績がつく (内申に反映) |
覚える単語数 | 記載なし | 600~700語 |
扱う文法項目 | 記載なし | 動名詞 過去形 命令文など |
目標 | コミュニケーションを図る 「素地」を育成 |
コミュニケーションを図る 「基礎」を育成 |
指導領域 | 3領域 ・聞くこと ・話すこと[やりとり ] ・話すこと[発表 ] |
5領域 ・聞くこと ・話すこと[やりとり ] ・話すこと[発表 ] ・読むこと ・書くこと |
(注:1時限は45分)
気になる違い(1)単語数
小学3・4年生には、英語教育必修化後も覚える単語数の指定はありません。
しかし、小学5・6年生では学習する単語が600~700語と定められています!数値目標が入っています。
ちなみに、親世代が中学校で学習した単語数は年齢にもよりますが、「約900語~1,200語」。今どきの小学5・6年生は、親世代が中学生の3年間で習った単語の約半数を、小学校の間に習うのです。
気になる違い(2)成績がつき内申に反映される
小学5・6年生からは成績もつきます!中学受験を控えている方には気になるところですよね。
筆者の知り合いの小学校英語専科教員に、成績についてたずねてみました。
その先生の勤める学校では、ペーパーテストは行わないということでした。
しかし、日々の活動を通して「提出された英語の文章を成績の参考にし」、「先生と会話して、正しく会話できたかどうか」が成績に反映されるという話でした。
3・4年生の通知表では「できたこと、頑張ったことが文章で記載される」だけなので、内申には反映されません。この点は、大きな違いと言えますね。
気になる違い(3)「読み書き」も導入される
小学5・6年生では「読む・書く」活動も「聞く・話す」と同じくらい大切になります。
実際に5・6年生の教科書には、単語や文章を書きこんで練習するページがあります。
さらに、発表するための「スピーチ原稿を書く場所」が設けられ、友達と「尋ねあう」活動をするために、会話用のメモ欄が設けられています。
メモはもちろん英語で書きこむので、4線が引いてあります!(4線とは、英語を書くための補助罫線のことです。)
このように小学5・6年生では、英語を読み書きできるようになるという、大きな目標の違いがあります。
小学生の単語クイズ
参考:東京書籍 NEW HORIZON ELEMENTARY 5(写真は筆者撮影)
小学5・6年生の子どもたちは、親世代よりたくさんの英単語を習うことはわかったけど、小学校卒業までにどの程度のレベルの単語がわかればいいの?と思った方もいらっしゃるでしょう。
そこで英語教科書「New Horizon Elementary(東京書籍)」から、小学校で習う単語を10個ご紹介します。
大人の皆さん、全部の意味が分かりますか?ぜひチャレンジしてみてください!
あなたはわかる?小学6年生までに習う単語に挑戦!
【問題】
1.calligraphy
2.athlete
3.parade
4.vet
5.sang
6.ruler
7.P.E.
8.elementary
9.chef
10.brave
【答え】
1.書道、書写(教科)
2.運動が好きな人、スポーツマン、運動選手
3.パレード、行列
4.獣医
5.sing(歌う)の過去形
6.定規
7.体育(教科)Physical Educationの略
8.初歩の、初等の
9.シェフ、料理長
10.勇敢な、たくましい
中学1年生の教科書も確認しましたが、ご紹介した10個の単語はすべて「小学校で習った単語」として紹介されています。
また、1.3.4.以外の単語は、特に重要な単語として「中学卒業までに使えるようにしたい単語」と紹介されています。
これらの単語を見たときに、小学校卒業までには少なくとも意味がわかるようにしておかないと、お子さまが中学校で困るかもしれません!
家庭学習で小学5・6年生の英語力を伸ばすポイント
小学5・6年生で必修化した英語教育の内容はひときわ大切です。
音声で学んできた小学3・4年生と、本格的に学習が始まる中学生との間で、この2年間の取り組みによっては、子どもの将来の英語学習に影響する可能性があるからです。
そこで、小学5・6年生の間に家庭でできることをお伝えします。
家庭学習のポイントは、読み書きの実践
小学5・6年生は、英語教育にとってとても重要な時期だと考えてください!
「聞く・話す」に加えて「読む・書く」活動が始まっています。中学校では、さらに高度な英語の学習が始まります。
中学での学習へスムーズにシフトするため、小学校卒業までに大文字・小文字の各26文字は書けるようにしておきましょう。
インターネットで「小学生 英語 プリント」と検索すれば、たくさんの練習用プリントが無料でダウンロードできるので、それを家庭でやるのもおすすめです。
また、教科書を読んで、音読の練習をするのも良いです。
筆者が参考にした教科書にはQRコードがついていて、スマホでかざせば英語音声が確認できるようになっていました。卒業までに、単語や簡単な文章を読み書きできるようになると良いですね。
パパやママの英語への意識を子どもにカミングアウトしよう!
この記事をお読みの方の中には、英語はちょっと苦手…と思っている方がいらっしゃるかもしれませんね。
しかし英語は、この先の高校受験、大学受験、就職など、その後の子どもの人生にずっと関わってくる可能性のある教科です。
お子さまは「大人なら小学校の英語くらいわかるだろう」と思っているかもしれません。
そこで、英語に苦手意識がある方は、早めにお子さんに「ママ/パパも英語があまり得意ではないんだよ、これから一緒に勉強しよう」と伝えましょう。
苦手だから教えて!一緒にやってみようよ、などと子どもに言葉をかけ、実際に一緒に学習してみてください。
反対に英語が得意だったパパやママは「英語ができてこんなに良いことがあった」と経験を伝えてくださいね。
英語が苦手でも得意でも、その意識や体験を共有して一緒にがんばることが大切です。子どもが安心して英語に取り組める環境を作ってあげてくださいね。
連載「親必見!家庭でできる英語教育のポイント」、3回目の今回は、小学5・6年生の必修英語活動の内容を具体的にお伝えしました。
ここまで読んでいただいた方は薄々感じているかもしれませんが、元英語教師としてはっきりと申し上げますと、今の小学校高学年が習う英語はとっても難しいです。
これまで中学1年生で学んでいた内容が小学生にシフトして、さらに会話も追加されたイメージです。
でも、ここでしっかり子どもが英語に取り組んでおけば、スムーズに中学英語をスタートさせることができるのも間違いありません!
あきらめず、一歩一歩、大人の皆さまがお子様と一緒に、コツコツと学習を継続されることを切に願います。
次回は、気になる今の中学生の英語教育についてです。これまでの英語教育との違いや、子どもを伸ばす家庭学習のポイントなどをお伝えします。
参考サイト:
https://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/gaikokugo/index.htm
参考教科書:
東京書籍「New Horizon Elementary English Course」5と6
光村図書「Here We Go! English Course 1」
東京書籍「New Horizon Elementary 」5と6
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