連載「説得力UP!Excelグラフ活用術」では、Excel標準グラフの種類と作り方を順にご説明してきました。
今回は最終回。残る2種類のグラフ、レーダーチャートとバブルチャートをご紹介します。
両方とも、データを視覚化して相手を説得する場合に有効なグラフです。
作成方法や特徴を理解して、資料のレベルアップを目指しましょう。これができたら、あなたもExcelマスターの仲間入りです!
複数項目の比較に最適!「レーダーチャート」
レーダーチャートは、学生時代に摸試の成績表で目にした方が多いと思います。クモの巣のように見える、正五角形等で表されるグラフです。
レーダーチャートの特徴
● 正多角形(正五角形や正八角形など)をしています。各頂点を各項目の数値として点を打ち、それぞれ隣の点を結び、形を作ります。
● 1つの調査対象に対して、複数の項目について結果を示すことができます。そして、その数値を表現しながら全体のバランスも表します。
● 全体のバランスがとれていると、より正多角形に近い形となります。バランスが目に見えてわかりやすいです。
レーダーチャートの使用例
● 店の評価(正五角形:立地・価格帯・接客・衛生・品数の点数を配置)
● 人事評価(正六角形:コミュニケーション力・分析力・管理能力・企画力・リーダーシップ・問題解決力)
レーダーチャートの作成例
例えばあるシステムを導入する際、A社とB社を比較検討するための材料としてレーダーチャートを作成する場合の手順を簡単にご紹介します。
(以下、Excel2010で作成。フォントはMeiryo UIを使用)
↓元の表データ
① A2セルからG3セルまでを選択する
② ツールバー上の「挿入」メニューを選択し、「その他のグラフ」から「レーダー」を選択する
これで完成です。
あとは、グラフを選択するとツールバーに表示される「グラフツール」メニューで見映えを調整※しましょう。
※下図では以下の調整を行っています。
・「デザイン」タブで「スタイル2」を指定
・同タブ「グラフのレイアウト」で「レイアウト4」を指定
・目盛り線を右クリックして「目盛り線の書式設定」で「線の色」を薄いグレーに指定
・軸の数値を右クリックして「レーダー(値)軸」のフォントの色を薄いグレーに指定
・グラフ枠のサイズを調整
↓作成後のレーダーチャート
システム評価点数合計は同じながら、A社に比べてB社の商品の方が、全項目のバランスがとれているのがひと目でわかりますね。
散布図と並んで分析向け!「バブルチャート」
バブルチャートは散布図グラフと並び、分析資料によく使われます。その名の通り、複数のバブル(円)で表現されるグラフです。
バブルチャートの特徴
● 2種類のデータの関係性について表す散布図グラフに対して、バブルチャートは3種類のデータについて表します。
● 3種類目のデータの量は、バブル(円)の大小で表現します。
バブルチャートの使用例
● 営業部の販売数に対する今期の売上と構成比(横軸:販売数、縦軸:売上高、バブル:構成比)
● 全国にある店の店舗広場と営業時間に対する売上高(横軸:営業時間、縦軸:売上高、バブル:店舗の売り場面積)
バブルチャートの作成例
例えば、A支店とB支店の今期営業売上を、営業担当別に比較するバブルチャートを作成する場合の手順を簡単にご紹介します。
(以下、Excel2010で作成。フォントはMeiryo UIを使用)
↓元の表データ
まず、A支店のバブルチャートを作成し、系列名をつけます。
① C4セルからE9セルまでを選択する
② ツールバー上の「挿入」メニューを選択し、「その他のグラフ」から「バブル」を選択する
③ 作成されたグラフ上で右クリックして「データの選択」を選択。「凡例項目(系列)」の「編集」を選択し、「系列名」に「A支店」と入力し「OK」
続いて、B支店のバブルチャートを追加します。
④ ③のウインドウ上で「追加」を選択。「系列名」に「B支店」と入力し、「系列Xの値)にC12~C17セルを、「系列Yの値」にD12~D17セルを、「系列のバブルサイズ」にE12~E17セルを指定し「OK」
これで完成です。
あとは、グラフを選択するとツールバーに表示される「グラフツール」メニューで見映えを調整※しましょう。
※下図では以下の調整を行っています。
・「デザイン」タブで「スタイル10」を指定
・「グラフのレイアウト」で「レイアウト1」を指定し「グラフタイトル」と「軸ラベル」2ヵ所にタイトルを入力
・A支店のバブル上で右クリックして「データラベルを追加」し、「データラベルの書式設定」で「ラベルの内容」を「バブルサイズ」、「ラベルの位置」を「中央」に指定(以上、B支店についても同様)
・目盛り線を右クリックして「目盛り線の書式設定」で「線の色」を薄いグレーに指定
・販売数軸を右クリックして「軸の書式設定」で「軸のオプション」の最小値を0に固定
・グラフ枠のサイズを調整
・「ページレイアウト」タブの「配色」で「シック」を指定
↓作成後のバブルチャート
このように売上構成比がバブルの大きさで表現されていると、各営業担当の成績と、営業担当の販売数と売上の傾向がひと目でわかりますね。
例えばA支店(オレンジバブル)では構成比9.5%の蝶野さん、B支店(赤バブル)では14.5%の菊地さんや14.1%の須々木さんのバブルが大きく、営業成績に貢献していることがわかります。
また、今回のグラフのように同時に2種類のバブルで比較する場合、バブルの大きさや点在している場所が視覚化されるので、A支店とB支店の差がわかりやすくなりますね。
A支店では、支店内で販売数の差が見られるのに対し、B支店では、販売数の差はあまりないのに売上高の差があります。B支店の方が、単価が高いものを売り上げているのではないかということが推測できます。
バブルチャート応用編:PPM分析とは?
PPM分析をご存知ですか?プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントの略で、マーケティング手法の1つです。
製品や事業が下記4つのどこに位置するかで、今後の方針や方向性を分析します。
● 花形(成長率:高、占有率:高)
今後の成長の鍵となる。シェアの拡大・維持に努めて、金のなる木への移動を試みる。
● 金のなる木(成長率:低、占有率:高)
現在のキャッシュインに貢献。今のところ問題がないので、ここで資金をためておく。
● 問題児(成長率:高、占有率:低)
新規事業がなりやすい。他からシェアを奪うことを考えないといけない。
● 負け犬(成長率:低、占有率:低)
撤退するか判断が必要。資金の流入がなく成長が低いので、経営資源の回収をはかる。
この分析にExcelのバブルチャートを照らしあわせると、よりわかりやすくなります。
例えば「成長率」は、今年の市場規模÷昨年の市場規模で算出します。つまり、去年からどれくらい成長しているのかを表します。
「占有率」は、事業部の売上高÷市場規模で求めます。どれくらい市場においてシェアしているのかを製品ごとに計算します。
例として下記に、ある企業の商品の分析をした例を挙げます。
横軸:利益率、縦軸:売上成長率、バブルを売上額とするバブルチャートにPPMの分析図を重ねてみましょう。
横軸には、基本的には占有率(市場シェア)の値を置きますが、シェア率がわからない場合は、利益率や売上構成比などで代用します。
↓元の表データ
↓バブルチャート ※中心の十字線は別途追加
負け犬の「商品B」は、撤退を考えなければならない商品といえます。
問題児にある「商品F」は、負け犬にならないように利益率を上げる必要があります。
といったように「各領域で何が今後の手法として必要なのか」を分析する場合に、このようなバブルチャートとPPM分析の組みあわせが役に立ちます。
今回でExcel標準グラフをすべてご紹介し、最終回となりました。今後お役に立ちそうな情報はありましたか?
Excelのグラフの特徴を理解し、適材適所で用いて、わかりやすくて説得力のある資料を作成できるようになるとよいですね。
皆さんが、社会人として一歩でも二歩でも成長できることを祈っています。
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