この連載「今さら聞けない!手紙の書き方超基本」では、手紙の書き方がよくわからないという初心者の方へ向けて、基本的な手紙の知識やマナーをご紹介しています。
前回は、レターアイテムの選び方や、便箋の折り方、宛名の書き方についてご説明しました。
今回は、手紙の構成や、時候の挨拶、頭語と結語など、書き方の基本形式についてご説明します。「手紙を書くことって何だか難しそう・・・」と思う人でも、基本形式に当てはめれば、内容をわかりやすく丁寧に伝えられますよ。では、さっそく見ていきましょう。
連載「今さら聞けない!手紙の書き方超基本」
- 第1回 手紙の選び方・折り方、宛名の書き方
- 第2回 手紙の構成の基本、時候のあいさつ
- 第3回 TPOに合わせた書き方のポイント
手紙の構成は「前文、主文、末分、後付」の4つを意識しよう
手紙は、一般的に「前文、主文、末分、後付」という4つの構成で成り立っています。
それぞれの役割や注意点について、簡潔にご紹介します。
① 前文【手紙の書き出し部分】
手紙を書く場合、冒頭でいきなり用件を述べることは、相手に対して失礼にあたります。手紙の書き出し部分となる前文では、頭語や時候の挨拶、相手の安否を気遣う言葉や文章を入れるのがマナーです。
頭語とは、「拝啓」や「謹啓(きんけい)」など、手紙の出だしに書く挨拶語のこと。頭語の次に時候の挨拶、相手の安否や近況を気遣う言葉、または自分の近況報告と続きますが、場合によっては一部省いても構いません。
② 主文【手紙の用件や本題を伝える部分】
手紙の核となる、相手に伝えたい用件や本題を述べた部分が主文です。「さて」や「ところで」など、前文と主文を繋ぐための起語から入り、続けて用件や本題を簡潔に書きます。
内容がわかりづらくならないように、基本的に手紙1通につき用件は2つまでと心がけましょう。③ 末文【手紙の締めとなる結びの部分】
末文は、手紙を締めくくるための結びとなる部分です。今後の指導や相手の発展を願う言葉から用件を結ぶ締めの挨拶へと続けて、結語で終わります。
前文の出だし部分にあたる頭語と最後を締める結語は、「拝啓」と「敬具」、「前略」と「草々」などそれぞれ対応しているのが特徴です。④ 後付【日付、差出人の名前、宛名】
最後に、手紙を書いた日付、差出人の名前、送る相手の名前を順番に書きます。ビジネスで用いる場合は、差出人名や宛名のところに、それぞれの会社名や部署などもしっかりと記してくださいね。
また、宛名部分を書くときには、文字の大きさを差出人より大きく書くことと、相手の名前と会社名を行の中央より上にくるように書くことに気を付けましょう。
手紙を書く際は全体のバランスにも注意しよう!
ご紹介した4つの構成ブロックごとに書き進めれば、手紙初心者でもスムーズに手紙を完成させられますが、注意したいのは全体のバランスです。
実は、手紙を書くときに後付だけを2枚目に書くことはマナー違反。フォーマルにも使える便箋は、1枚につき11行ほどであることが多いですが、基本的にはこの1枚に全体がきちんと収まるよう、それぞれの構成要素が偏らないように書いていきましょう。
私自身、要領を得ずに長々と書き、後付が1枚目で収まらなかったため書き直した経験があります。あれもこれも伝えたいと詰め込みすぎると、後付だけ1枚目で収まらないばかりか、結局のところ何が伝えたいのかわからない文章になることが多々あります。
用件は、相手にわかりやすいよう簡潔に書くことも心がけましょう。
もちろん、手紙全体のバランスを美しく見せるためには、手書きの文字を見やすく綺麗に書くことも重要です。自分が書く文字に自信がない方は、ボールペン字講座を受けてみると、いざというときにも役に立ちますよ。
誰でも簡単!ボールペン字講座手紙を含めたマナーについてもっと詳しく学びたい場合は、秘書検定講座もおすすめですので、ぜひ検討してみてくださいね。
秘書検定2級 3級講座季節ごとに使い分けたい!時候の挨拶
手紙の冒頭部分にあたる頭語の後に続けて書くのが、時候の挨拶です。季節を感じる言葉を入れることで、文章全体がより丁寧で印象深いものとなります。
時候の挨拶は、手紙初心者にとってハードルが高いと思われるかもしれませんが、堅苦しく捉えすぎずに、自分が感じた季節感を素直に言葉にすることが大切です。
迷った場合や、かしこまった場面では、数多くある定型句の中から季節に合ったものを選んで用いるとよいですよ。困ったときに参考になる、月ごとの時候の挨拶や注意点についてご紹介します。
【月ごと】時候の挨拶
時候の挨拶には幅広いバリエーションが存在します。時候の挨拶を月ごとにいくつか並べてみましたので、参考にしてください。
1月 | ・初春の候、大寒の候、厳寒の折 など ・淑気満つ初春の候、 ・寒さ厳しき折ではございますが、 |
---|---|
2月 | ・立春の候、向春の候、梅花の候 など ・梅のつぼみも膨らみ始める季節となりましたが、 ・立春とは名ばかりで寒さの厳しい日が続いておりますが、 |
3月 | ・春暖の候、春分の候、陽春の候 など ・梅の香り漂う春暖の候、 ・ようやく暖かな日差しを感じる季節となりましたが、 |
4月 | ・麗春の候、春和景明の候、春暖の候 など ・花冷えの日が続くこの頃ですが、 ・春爛漫の季節を迎えましたが、 |
5月 | ・緑風の候、薫風の候、薄暑の候 ・色調豊かな新緑の候、 ・若葉の美しい季節となりましたが、 |
6月 | ・入梅の候、向暑の候、初夏の候 など ・入梅間近の季節となりましたが、 ・梅雨明けが待ち遠しい毎日ですが、 |
7月 | ・盛夏の候、仲夏の候、酷暑の候 など ・晴天が続く盛夏の候、 ・いよいよ夏本番を迎えましたが、 |
8月 | ・晩夏の候、暮夏の候、新涼の候 など ・立秋を過ぎたとはいえ暑い日が続いておりますが、 ・厳しい残暑が続くこの頃ですが、 |
9月 | ・爽秋の侯、爽秋の候、名月の候 など ・爽やかな秋風を感じる昨今ですが、 ・残暑もやわらぎ、しのぎよい季節となりましたが、 |
10月 | ・初秋の候、仲秋の候、秋冷の候 など ・秋風がさわやかに吹き抜ける好季節、 ・街路樹も色づき、秋の深まりを感じる季節となりましたが、 |
11月 | ・晩秋の候、向寒の候、初霜の候 など ・冬の訪れを感じる初霜の折、 ・肌寒さが身にしみる季節となりましたが、 |
12月 | ・師走の候、寒冷の候、初氷の候 など ・木枯らしが吹く師走の候、 ・年の瀬を迎え、ますますご多忙のことと存じますが、 |
時候の挨拶を入れるときの注意点は?
時候の挨拶は、どの手紙にも必ず入れるわけではありません。場合によっては、入れることで手紙の雰囲気が崩れてしまうときがあるので注意が必要です。
具体的には例えば、お詫びの気持ちを手紙にする場合は、申し訳ないという気持ちが相手にしっかりと届くように、時候の挨拶は入れずに本題から書くようにしましょう。また、お見舞いとして送る手紙では、相手の体調を第一に考えることが大切です。
このように、状況次第で時候の挨拶を省いて、相手を気遣う文面を入れてくださいね。
セット使いが重要!頭語と結語の使い方
手紙の書き出しにあたる頭語と、結びの言葉である結語は、それぞれ対応した組みあわせがあります。
どのようなシチュエーションで使うかによって組みあわせが決まりますので、送る相手との関係性や手紙の内容にあわせて選んでくださいね。
頭語 | 結語 | |
---|---|---|
一般的な手紙 | 拝啓、拝呈(はいてい) | 敬具、敬白(敬白) |
目上の方やお世話になった方への丁寧な手紙 | 謹啓(きんけい)、謹啓(きんけい) | 謹言(きんげん)、謹白(きんぱく) |
親しい間柄への手紙 | 前略、冠省(かんしょう) | 草々、不一(ふいつ) |
急を要する手紙 | 急啓(きゅうけい)、急呈(きゅうてい) | 草々、不一(ふいつ) |
返信の手紙 | 拝復(はいふく)、復啓(ふくけい) | 敬具、拝答(はいとう) |
再信の手紙 | 再啓(さいけい)、再呈(さいてい) | 敬具、敬白(けいはく) |
ちなみに、ご紹介した頭語と結語は、同じシチュエーションのくくりにおいてのみ、組みあわせが自由となっています。
例えば、「拝啓」で始まった手紙の場合、必ずしも「敬具」で終わらなくても、同じくくりにある「敬白」で終わってもOKということです。
主に女性が用いる頭語と結語について
「拝啓」や「敬具」など、カッチリとした言葉だと使いづらいと感じる女性もいるかもしれませんが、フォーマルな場面においては何の問題もなく使えます。
頭語と結語には、主に女性が用いる柔らかな表現もありますので、ぜひご参考ください。
頭語 | 結語 | |
---|---|---|
一般的な手紙 | 一筆申し上げます | かしこ |
目上の方やお世話になった方への丁寧な手紙 | 謹んで申し上げます | |
親しい間柄への手紙 | 前略ごめんください | |
急を要する手紙 | 取り急ぎ申し上げます | |
返信の手紙 | お手紙拝見いたしました | |
再信の手紙 | たびたび失礼ながらお便り申し上げます |
なお「かしこ」は、少しくだけた印象が強くなるため、ビジネスの場では避けた方がよいでしょう。
今回は、手紙の構成や、時候の挨拶、頭語と結語などを掘り下げて解説しました。
難しく思われがちな手紙のマナーですが、決まりごとに従って書くことで、読みやすくわかりやすい内容に仕上がりますよ。より丁寧な手紙に見せたい場合は、文字を美しくする講座を受けるのもおすすめです。
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