この連載では「Excel2013で止まっている人必見!業務効率がUPするExcel2019活用術」と題し、Excel2019(Office365)の新機能や活用方法を、13回にわたり紹介しています。
連載4回からは、新たに追加されたグラフ「サンバースト」「ツリーマップ」「ヒストグラム」「箱ひげ図」について解説してきました。今回の第6回では、「パレート図」と「ウォーターフォール」についてご紹介します。
この2つのグラフは、簡単に作成できるうえに、今までのデータを違った角度から分析し、現状の問題点に気づけるようなグラフです。
これらのグラフを通して分析・改善ができれば、職場で重宝されること間違いなし!では、さっそく見ていきましょう。
売上分析や改善に最適!「パレート図」とは?
パレート図とはどんなグラフ?
パレート図は、イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートが考案した「80:20の法則」を表すグラフとしてよく使われており、下図右のようなグラフのことを言います。
ちなみに、「80:20の法則」とは、全体の8割は、上位2割の項目で占められているという経験則です。例えば、売上の8割は上位2割の売れ筋商品のおかげ、というように使われます。
この表でいうと、項目のAからGまでで全体の8割を占めていることが、パレート図を通してわかるようになれば、問題点がわかり改善につながるということです。
次からは、パレート図の作り方から問題点の発見の方法まで解説していきましょう。
パレート図の作り方(Excel2013)
下図は、スマートフォンの故障に関する相談件数の集計データです。相談件数の多い順から3つの項目の割合を足していくと、累計が80%を超えているのがわかりますよね。これが、まさに「80:20の法則」です。
相談件数の上位80%、今回の例でいえば「ガラス破損」「フレーム破損」「水没破損」について、破損を防止する対策をとれば、品質が向上し、最終的には相談件数の減少に繋がるというわけです。
しかし、この表をパッと見ただけでは、「80:20の法則」は読み取りづらいですよね。そんなときに使えるのが、パレート図です。
Excel2013以前ではパレート図を作る機能が無かったので、以下のように、棒グラフと折れ線グラフによる複合グラフから作っていました。
複合グラフから調整を加えて作成したパレート図が、以下の図です。
青色の縦棒がそれぞれの件数を表し、赤色の折れ線が割合の累計を表します。
3項目めの「水没破損」の段階で赤色の折れ線が80%に到達していることから、上位3項目が重要であることが、このパレート図で直感的にわかるでしょう。
しかしExcel2013でパレート図を作成するには、このようにいくつもの工程が必要でした。
では次にExcel2019の作り方を説明します。少し項目が複雑になっても、Excel2019なら簡単にパレート図が作れるという違いに注目です。
パレート図の作り方(Excel2019)
先ほど例に挙げたパレート図は、“全体の8割を占める故障件数は、2割の故障原因によるもの”という、いわば本来の用途で使用していますが、パレート図にはほかにも活用法があります。
例えば複数の商品を扱う店における、どの商品が重要なのかというランク付けがパレート図でできるのです。これを「ABC」分析といいます。
上位80%以内の項目を「A」、次の90%以内を「B」、残りは「C」というようにランク付けをすることで、項目の重要度が一目でわかるのです。
今回は、あるお店の商品別売上をパレート図に展開し、そこから重要度をABC分析してみましょう。
Excel2013では、複合グラフからパレート図を作る場合、下図左の表のように、一度売上高の多い順に並べ替えてから、割合の累計を計算する必要がありました。
しかしExcel2019では、上図右の表の状態からパレート図を作れます。順を追ってみていきましょう!
① セルA1からB11までを選択し、「挿入」タブで「統計グラフ」にある「ヒストグラム」の中にある「パレート図」を選択します。
② パレート図の完成です。こちらのお店では、「食品」「飲料」「お菓子」が売上80%以内となり、重要な品目となることがわかりますね。
さらにここから、ABC分析をしていきましょう。
AランクからCランクまでを、色で区分することで、ABC分析用のパレート図に変わります。
グラフの棒の色は、棒グラフ上で右クリックし「データ系列の書式設定」で変更できます。
これで完成です!上位3項目が80%以上を占めていることが視覚的にすぐわかり、なおかつ、色分けをすることで重要度もわかりやすくなりました。
Aランク(80%以内)
…売上としては安定。下がらないように気を付けましょう。
Bランク(90%以内)
…ここを伸ばせば、会社は成長できるでしょう。
Cランク(その他)
…少し様子を見るか、取り扱いを中止するか判断しましょう。
以上のようにExcel2019では、表からすぐにパレート図を作成できます。
Excel2013以前とは作る時の労力が断然違いますし、様々な分析ができるグラフですので、ぜひ一度お試しください。
数字の増減を表すのに最適!「ウォーターフォール」とは?
ウォーターフォールとはどんなグラフ?
ウォーターフォールとは、直訳すると「滝」という意味で、グラフの形としては、棒グラフの部類に入ります。
普通の棒グラフとの違いは、すべての棒が下から伸びているのではなく、上から下に落ちる部分もあれば、下から上に昇るような部分もある点。そして、そのような見た目から「ウォーターフォール」と呼ばれているのです。
ではこのウォーターフォールは、よく見る棒グラフと何が違ってどう便利なのでしょうか。
ある営業部の売上データを見てみましょう。
上図の棒グラフを見て、各営業部の社員はこう思うかもしれません。
営業一部:「マイナス120万円でした。足を引っ張ってすみません。」
営業二部:「あれ!今年は頑張って前年よりも190万円も多かったのになぜ?」
営業三部:「こちらも+80万円なのに?」
このように上図の縦棒グラフだけでは、どこが増えてどこが減ったのかわかりません。
しかしウォーターフォールを使えば、それぞれの売上のストーリー性が見えるグラフができるのです。
では上図の表データから、Excel2019を使ってウォーターフォールを作成していきましょう!
ウォーターフォールの作り方
① まず、表の全体(セルA1からB5)を選択します。
②「挿入」タブで 「ウォーターフォール」を選択。
グラフの形としては完成ですが、ここからの調整が重要です。
前年度500万円から、営業一部はマイナス120万円となりますので、「500」の上部から下に向かって「120」減少(オレンジ色)していることを表しています。
次に「-120」の下部から、営業二部は上に向かって「190」増加(青色)、営業三部も同様に上に「80」増加(青色)となります。これらの配置は、前年度「500」から増加または減少を表しているわけです。
ところが、ウォーターフォールの一番右にある「当年度」が、上に「650」昇っています。これは増加または減少と判断されているためなので、ここを調整する必要があります。
③ 当年度の要素をダブルクリックします。
④ データ要素の書式設定で、「合計として設定」にチェックを入れます。
⑤ 営業三部の「80」の上部から下まで「650」下がりました。これで完成です。
各営業部の売上が前年よりどれだけ落ちたのか上がったのか、縦棒グラフだけではわからなかったのが、ウォーターフォールを使えば一目瞭然になります。
このウォーターフォールは、Excel2013以前では存在しなかったグラフです。
筆者はExcel2013の時に、棒グラフでウォーターフォールを作ろうと試みたところ、大変手間暇かかって苦労しました。
それがExcel2019になって簡単に作れるようになり、かなり労力の違いが出たと感じています。
ウォーターフォールが簡単にできるようになったことで、様々なデータを違った角度から分析でき、それが自分の、ひいては会社の業績に繋がるかもしれません。
活用しないともったいないグラフということがおわかりいただけたと思います。ぜひ一度作成してみてください。
連載「Excel2013で止まっている人必見!業務効率がUPするExcel2019活用術」、今回は、Excel2013以前では作るのが非常に難しかったけれども、Excel2019では簡単に作れるようになったグラフ、パレート図とウォーターフォールを紹介しました。
パレート図は、縦棒グラフによって多い順番に並び、折れ線によって累計の割合が表されていることで、重要項目を見つけやすくなり、分析・改善に役立ちます。
またウォーターフォールでは、増減する過程を滝のようなグラフで表すことで、項目ごとの増減をよりわかりやすく把握できます。
これまでの棒グラフや折れ線グラフでは表現しきれなかったことができるようになり、新たな発見があるはずなので、ぜひ活用してみてください!
次回紹介するグラフは、Excel2019で初めて登場した「マップグラフ」と「じょうごグラフ」です。かなりビジュアル的なグラフなので、使いこなせると評価につながるかもしれませんよ!お楽しみに。
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