この連載では「Excel2013で止まっている人必見!業務効率がUPするExcel2019活用術」と題し、Excel2019(Office365)の新機能や活用方法を、13回にわたり紹介しています。
前回までは、Excel2019の新関数やグラフについて紹介してきました。今回の連載10回目から13回目は、「PowerQuery(パワークエリ)」という便利な機能のご紹介になります。
Excel2013で膨大なデータを集計しなければいけないとき、あまりのデータの多さにどう処理すればいいのか困っていた人も多いと思います。そういった時はデータベースソフトのAccessを何とか使っていた、という人もいるでしょう。
しかしExcel2019のPower Queryを使えば、Accessに近い処理が簡単にできるのです 。ではさっそく、Power Queryの概要と、膨大なデータを取り込む方法からご紹介しましょう。
- 月次レポートを作るためのデータの取り込みや、手作業による整形を、もっと簡単にしたい人
- 扱うデータ件数が多すぎて、計算式が間違っていないか不安な人、あるいは、集計するまでに時間がかかることで悩んでいる人
PowerQueryは、こんな人にぜひ活用していただきたい機能です。
データの取込み・集計に最適!PowerQueryの使い方 |
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(1)概要とデータの取込み(連載第10回) ←今回はココ |
(2)データの整形(連載第11回) |
(3)複数データの結合(連載第12回) |
(4)フォルダ内複数データの結合から集計まで(連載第13回) |
Excel2019で進化した「Power Query」の概要
Power Queryとは、Excel2016で標準搭載され、Excel2019で進化した、データの取込み・整形・加工を定型化できる機能です。
会社には、人事部には社員リスト、営業部には顧客リスト、経理部には売上データというように、部署ごとに様々なリストやデータが存在しています。
これらのデータは、各部署だけで使うよりも、組み合わせて社内全体で活用する方が、より有用なものになるでしょう。
経理部の売上データと人事部の社員リストを組み合わせて、社員ごとの売上集計。また、営業部の顧客リストと組み合せて、顧客ごとの売上集計。というように、データを組み合わせれば様々な集計表を作ることができ、それを活用すればいろいろな問題が見えてくるのです。
社員ごとの売上集計の例
ただし集計作業のためには、データの取り込みから始まり、抽出、並べ替え、加工等、いくつもの作業を行います。こうした手間暇をかけて、ようやくデータの活用に取り掛かれるのです。
これだけでも大変な作業ですが、データは日々追加や削除、変更されていきます。これを毎日や毎月、一から作るとなると、これまた大変な作業になりますよね。
この一連の作業を劇的に効率化するのが、Excel2019の「PowerQuery」なのです。
上の図は、Excel2013にある「Microsoft Query」の作業画面です。
ここでもQuery機能を使うことはできましたが、どちらかと言うと上級者向けでした。
それがExcel2019になり、Power Queryと名前が力強く一新されました。
また作業する画面は「Power Queryエディター」という名前になり、表示も従来のアイコンからリボンの形に変わり、より使いやすく進化を遂げたのです。
上の図を見ておわかりのように、Excel2013と比べて、画面の雰囲気が全然違いますよね。
それでは概要はここまでにして、実際にデータを取り込む操作を見ていきましょう!
Power Queryでブック(Excelファイル)を取り込もう
1つのシートを取り込む場合
Excel2019で追加となったPower Queryの操作の第一歩、データの取り込み方法から説明して行きます。
今回は、以下の商品台帳を取り込みます。このファイル名は「商品台帳.xlsx」とします。
①「データ」タブで「データの取得と変換」→「ファイルから」→「ブックから」と選択しましょう。
なおPower Queryへデータを取り込むときは、このようにマウスでたどって選択していきますが、よく使われる「ブック」から、JSONなどあまり聞きなれない名前のものまで、多くの種類の形式が取り込めることがわかりますね。
② 「データの取り込み」ウインドウで、ブック「商品台帳xlsx」を選択し、「インポート」をクリックします。
③ 「ナビゲーター」が表示されます。左側で、ブック内のシート名を選択します。ナビゲーターの右側は、選択したシートのプレビューです。
Power Queryエディターに進むには「データの変換」をクリックしましょう。
④ 「PowerQueryエディター」の画面が開きました。ここは、読み込んだ商品台帳の列名の変更や、数値や文字列などのデータ型の設定などをする画面になります。今回はここでの作業はありませんので、「閉じて読み込む」をクリックしましょう。
⑤ 商品台帳が「テーブル」として読み込まれました。
「テーブルデザイン」タブのテーブル名には、「商品台帳」という名前が付けられています。
シートに作成されていた表が、Power Queryに取り込まれたことで「表」から「テーブル」へと変わりました。
「表からテーブルに変わったといっても見た目はほとんど一緒でしょ。なにが違うの?」と思いましたか?しかし、この「表」と「テーブル」は性質が違うものなのです。次で詳しく解説します。
表と「テーブル」の違いとは?
Power QueryエディターからExcelワークシートに読み込まれたデータは、表ではなくテーブルに変換されます。
呼び方が違うことも、もちろん違いの1つなのですが、性質が違うことも大きな違いです。
Excelで作る表は、ある程度自由に表を作れることが特徴でありメリットですが、一方で、個々のセルが集まったものにすぎず、表の範囲も罫線など見た目で区切っているだけで、実際のところの範囲は曖昧です。
それに対してテーブルは、列名やデータ型が列単位で統一されることで、明確に定義されたものとなります。
下の図を見てください。同じデータが入っていますが、左が表、右がテーブルです。
例えば「単価」の列に同じ数式を入れたつもりが、左の表のように4番目のセルにだけ違う数式が入ってしまい、1つだけ間違った答えになってしまったという経験はありませんか?
右のテーブルの場合は、セル番地ではなく列名を使っての計算式となるので、1つのセルだけ違う数式が入ってしまうというミスを防止できます。
Power Queryにとっては、曖昧な表よりも、明確に定義されたテーブルの方が管理しやすいので、データが取り込まれると、表からテーブルの形式に置き換わるというわけです。
複数のシートを取り込む場合
先程はPowerQueryを使って、1つのシートをテーブルとして取り込みました。続いては、複数シートを取り込みします。
今回は「売上明細.xlsx」ブック内にある、「売上明細4月」「売上明細5月」「売上明細6月」の3つのシートを取り込みます。
最終的には3つのシートを繋ぎ合わせて、以下のような、4月~6月の売上明細のテーブルとなります。では、手順を追いながらやっていきましょう。
① 「データ」タブで「データの取得」→「ファイルから」→「ブックから」と選択します。
② 売上明細.xlsxを選択し、「インポート」をクリックします。
③ 「ナビゲーター」が表示されます。ここで「複数のアイテムの選択」にチェックを入れて3つのシートを選択し、「データの変換」をクリックしましょう。
④ {PowerQueryエディター」が開きます。続いて、「ホーム」タブで「クエリの追加」を選択し、「クエリを新規クエリとして追加」をクリックします。
※今回は新規クエリとなりますが、後日7月以降のシートを追加する場合は、ここで「クエリの追加」を選択することになります
⑤ 「追加」ウインドウで、今回は「3つ以上のテーブル」を選択します。左側の「利用可能なテーブル」から、右側の「追加するテーブル」に5月と6月を移します(「売上明細5月」を選択し「追加」、「売上明細6月」を選択し「追加」)。
⑥ 右側の「追加するテーブル」に、売上明細4月から6月まで入ったら「OK」をクリック。
⑦ 売上明細4月から6月までが1つになり、「追加1」というテーブル名となりました。しかし今のままでは「日付」列が整数形式になっているので、変更する必要があります。
⑧ 「日付」の横に数字の画像があるので、ここをクリックして「日付」を選択します。
⑨ 「日付」列が日付形式に変更されたら、「閉じて読み込む」をクリックしてExcelに戻ります。
⑩ 以上で複数シート(4月~6月の売上明細)の取り込みは完了です。
Excel2013のときには、大量のデータもコピー&ペーストなどで取り込んでいたのが、Excel2019のPower Queryを使うことで、簡単に取り込めるようになりました。
データ量が多くなればなるほどコピー&ペーストではかなりの時間を要するので、Power Queryを使えば作業時間にも大きな違いがでると思います。
この段階だけでも、業務効率化を図りたいなら、覚えておいて損はない機能だといえますね。
連載「Excel2013で止まっている人必見!業務効率がUPするExcel2019活用術」、今回は、Excel2019で追加されたPowerQueryを使ったデータの取り込み方法をご紹介しました。Excelファイル以外に、CSVやPDF、WEBなどのデータも同じ要領で取り込めますので、ぜひ試してみてください。
「Power Queryの使い方」次回は、エディター画面での行や列の削除や追加などの操作についてご紹介します。
Power Queryエディターの使い方をマスターすれば、思い通りのデータに容易に作り替えられるようになります。膨大なデータを集計し活用していくために、ぜひとも覚えてほしい機能ですので、次回も楽しみにしていてくださいね。
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