連載「ビジネスに使える心理学」、4回目のテーマは「返報性の原理」です。
これは、人に何かしてもらったらお礼がしたくなるという心理効果のこと。TwitterやInstagramに「いいね」を押してくれた人には、「いいね」をお返ししたくなる心理と言えばわかりやすいでしょうか?
この心理効果はかなり強いもので、あなたを選んでくれる動機になり得るため、人間関係やマーケティングなどへの応用が可能です。
それでは返報性の原理とその活用方法についてご紹介します。
返報性の原理とはどういう心理効果?
「返報性の原理」とは、アメリカの社会心理学者ロバート・B・チャルディーニが提唱した心理効果のこと。人には何かをしてもらったらお礼を返したくなるという心理作用があるというもので、「好意の返報性」とも言われています。
なぜ人に何かしてもらったら、お礼をしたくなるのでしょうか?
これは人が集団で生活をしており、恩に報いないと恩知らずとして嫌われる可能性があることや、何かしてもらう行為が好意によるものだけではないことを知っているためだと言われています。
返報性の原理のタイプは4つ。
- 好意の返報性
- 敵意の返報性
- 譲歩の返報性
- 自己開示の返報性
にっこり笑いかけられれば笑顔を返すし、無視されたらこちらも無視、のように、相手の気持ちをそのまま返したくなるという気持ちには、心当たりがあるのではないでしょうか?
返報性の原理とは、好意には好意を、敵意には敵意を、譲歩されたらこちらも譲歩したくなるし、自分の話(自己開示)をされたらこちらも自分の話をしたくなる、というように、同じ気持ちを返したくなる心理作用のことです。
そして人間関係やビジネスで返報性の原理を活用する点においてポイントになるのは、与える恩の大小には関係がなく返報性の原理が作用する、ということ。
こちらの商品を買ってもらいたいからといって、必ずしも自分が相手の商品を買う必要はないのです。
返報性の原理を使うコツ3つ
返報性の原理をビジネスに活用するには、どうすればいいのでしょうか。
主なコツは3つです。
- 相手への提供は小さくてもいい
- 先にこちらの情報を開示する
- 相手が求めないと返報性の原理が働かない
返報性の原理は「こちらから与え、向こうがお礼を返す」というものです。与えるものは、ささやかなものでも構いません。
例えば無料クーポン券や試食などがその例です。無料お試しを利用した人は「サービスしてもらったのだから購入しなければ」という心理が働きます。そういえば、割引やお試しといったサービスはあふれていますよね。ビジネスの現場ではこの返報性の原理はよく利用されていることがわかります。
次に、相手に恩を与える際にこちらの情報を先に開示してしまうことがポイント。
返報性の原理は、恩を受け取る側になんらかのメリットがなければ発動しない原理でもあります。このメリットを相手に理解させるためには、商品やサービスのメリットだけではなくデメリットを先に開示するのが効果的。
なぜなら、メリットばかり並べられると逆に胡散臭くなるからです。人はいいことばかりを並べられると、「そんなうまい話はあるのだろうか」と疑ってしまうので、デメリットの紹介はメリットの説得力を出すのに必要なのです。
ただし、先に開示するデメリットがメリットを上回るようなことがあってはいけません。本当に使い勝手の悪い、クセの強いモノなんて勧められても困りますからね。
そしてさきほどちらりと触れましたが、返報性の原理は相手が求めていないと発動しません。興味がない人に恩を与えても、報いる気持ちが起こらないからです。
返報性の原理をビジネスに応用するには?
では、この返報性の原理のうち、ビジネスでよく使われる「好意の返報性」と「譲歩の返報性」の具体的なやり方をご紹介しましょう。
好意の返報性の活用法
好意の返報性というのは、こちらから好意を与え、向こうからも好意を寄せてもらうというもの。営業などで指名してもらう、といった時に有効な方法です。
これはもう、相手に対して見返りを求めず、持っている情報をどんどん与えていくしかありません。
特に相手がこちらに興味を持っていない場合は、見返りを求めた瞬間に逃げられる可能性が高いです。見返りを求めず与え続けることで、向こうがこちらに興味を持つのを待つのが、好意の返報性のポイント。無料クーポンや試供品の提供などがそうですね。
恋愛においても、褒めたり態度で示したりプレゼントを渡したり、好意を示し続けることで相手が意識してくれるようになることが期待できます。気になる人がいるなら試してみてください。
譲歩の返報性の活用法
譲歩の返報性を引き出すものとして有名な手法が「ドア・イン・ザ・フェイス」と呼ばれる交渉テクニックです。
これは、訪問販売員がドアが開いた瞬間に顔を突っ込んで、拒絶されたら「お話だけでも…」と話を聞いてもらうという手口に由来するもの。
相手に対し最初は無理そうな高い要求を行い、一度相手に断らせてから、飲ませたい要求を伝える手法です。相手に断りを入れさせ罪悪感を抱かせることで、本命の要求を飲ませやすくするのです。
本当の締切は3日後だけど、もらえるのが早いほど助かるので「時間がないので明日中に納品できますか?」と聞いてみる、みたいな感じですね。
相手としては、明日中は無理だけど3日後までならできます!という感じになります。
連載「ビジネスに使える心理学」、今回は、返報性の原理とその活用法についてご紹介しました。
基本的に、人はぶつけられた感情に対し、同じ感情を返したくなるものなのです。人間関係やビジネスにおいて返報性の原理を活用する際には、自分が求めているものと同じ感情を相手に与えることが大切です。
次回は食事を通して交渉を成功させる「ランチョンテクニック」についてご紹介します。
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