連載「ビジネスに使える心理学」、最終回の5回目のテーマは「ランチョンテクニック」です。
ランチョンテクニックとは、一緒に食事をすると相手に好印象を与えられる心理効果を狙った交渉術のことです。ランチョンとは「正式な午餐」のことで、ランチよりも格式ばった昼食に使われる言葉。
会食や接待など、食事をしながら話をすることってありますよね。これはランチョンテクニックの効果を狙っているんです。
ランチョンテクニックとはどういう心理効果?
おいしい食事と楽しい会話を共にすることで、相手に対し好印象を与えられるという心理作用は、アメリカの心理学者グレゴリー・ラズランが行った研究結果から提唱されました。
ラズランは、食事前と、食事中とで意見交換を行った場合、どちらのほうがより相手に対し好感度が高いかを調べました。その結果、食事中のほうが相手に対し好感度が高くなる、ということを突き止めました。食事は空腹を満たすだけでなく、人の心にも影響することが判明したのです。
ラズランの実験結果を検証するために、イェール大学の心理学者アーヴィング・ジャニスは、フィーリング・グッド実験という実験を行いました。
ガン治療の説得文を「コーラとピーナッツを食べながら読む」「何も食べずに読む」「不快な環境で読む」の3パターンで試す、というものです。
すると、コーラとピーナッツのグループは説得文に肯定的な意見を、不快な環境のグループは否定的な意見を持つことが判明。
ジャニスの実験から、「人はおいしいものを食べると気分がポジティブになる」ということが確かめられたのです。
人にとっておいしい食事は大きな快楽をもたらす行為です。食事そのものもですが、一緒にいる人や話題なども含めて快楽につながります。
逆に言えば、おいしい食事と楽しい時間を提供できれば、相手に対し好印象を与えることが可能。会食をすることで、頼み事や交渉の成功率を上げられる、というわけです。
実際、各国の首脳同士が政治的な交渉を行う際には、会食をすることが多いですよね。ランチョンテクニックを使った交渉術の最たるものです。
ランチョンテクニックをおすすめしたい理由
今回の連載では、交渉の成功率アップに関連する心理テクニックを幾つかご紹介してきましたが、このランチョンテクニックは誰でもぜひ使ってみていただきたいテクニックです。
その理由は主に2点。
誰に対して行っても不自然ではない 知らない人に対しても効果が高い
まず食事に誘うという行為自体は、そんなに難しいことではありませんよね。相手に合わせて気取ったコース料理を出すような店から居酒屋、なんだったらファーストフード店やフードコートなど気取らない店まで選び放題です。
ランチョンテクニックは相手に気付かれにくいので、身構えられる心配も少ないのもポイント。
さらに、まったく知らない人とでも、楽しい食事時間を一緒に過ごすことでポジティブな印象を与えることができ、今後の人間関係の構築にもプラスに働きます。まさにいいことづくしのテクニックなのです。
ただし、ランチョンテクニックを使う時には注意したいポイントもいくつかあります。
ランチョンテクニックを成功させるためのポイント
ランチョンテクニックの効果を発揮するためには、以下の点に注意が必要です。
相手に断らせないように誘う必要がある 相手を楽しませる話題を提供する 相手の好みに合わせた食事を提供する
そもそもランチョンテクニックを用いるためには、会食を断られてはいけません。
この場合、「食事でもどう?」と誘うのはNG。相手に「行かない」という選択肢を与えてしまいます。
「AかBのどちらがいい?」と、食事に行くのは決定事項にして店の種類を選ばせるなど、相手にNOを言わせない選択肢で誘うようにしましょう。こちらとの交渉の必要性を感じている相手であれば、誘いそのものへの断りは入れてこないものです。
また、前述の2人の心理学者の実験結果から、食事を共にして好印象を与えるためには、相手に「楽しい時間だった」と思わせる必要があることがわかりますよね。
ただ、贅を尽くした食事を提供すればいいというものではないんです。このことから、会食時の話題は楽しく、食事内容も相手の好みに合わせなければなりません。
ということは、事前に話題のネタや食の好みをリサーチしておくことが必要不可欠になります。
地雷を踏んで気まずくならないためにも、この部分はしっかり調査しておいたほうがいいでしょう。個人的な経験談になりますが、相手の好みにマッチしたお店での交渉はうまくいくケースが多かった気がします。
ちなみにアルコールは思考力を鈍らせるので、交渉時にはアルコール抜きのほうがおすすめです。せっかく承諾を得たのに「酔っていたから」という理由で撤回などされては、たまりませんからね。
連載「ビジネスに使える心理学」、今回はランチョンテクニックについてご紹介しました。
前回紹介した「返報性の原理」と合わせると、かなり強力にアピールできるテクニックですね。
連載でご紹介した心理効果は、ビジネスだけではなく人間関係の構築にも使える技なので、親しくなりたい人やお願い事がある時などに試してみてくださいね。
オトナ女子を楽しもう!タイプ別おすすめ趣味講座~診断つき~
大人の女性におすすめの趣味講座をご紹介。
性格や志向から4つのタイプに分類し、診断結果からあなたにピッタリの講座が見つかります。
無料登録でオンラインの資格講座を体験しよう!
資格受け放題の学習サービス『オンスク.JP』では様々な資格講座のオンライン学習が可能です。
最短20秒の無料会員登録で、各講座の講義動画・問題演習の一部が無料体験できます。
※自動で有料プランになることはありません。
関連する記事が他にもあります
ビジネスに使える心理学
- 会食で好印象!「ランチョンテクニック」とは?|ビジネスに使える心理学⑤
- 人間関係や販促に活用できる「返報性の原理」とは?|ビジネスに使える心理学④
- 会議を有利に進める「スティンザー効果」とは?|ビジネスに使える心理学③
- 印象的な会話に役立つ初頭効果・親近効果とは?|ビジネスに使える心理学②
- コミュニケーション力を上げる「ミラーリング」とは?|ビジネスに使える心理学①