課長にミスを指摘され、罵声を浴びせられている最中に、課長の勘違いに気づいたDさん。そこで課長に意見をすると、さらに怒りをヒートアップさせる結果を招いてしまいました。
怒りは人間にとって必要な感情ですが、過度に怒ることは、怒る側と受け手側、双方にとってよいことはありません。
アンガーマネジメントによって怒りをコントロールし、怒りの感情が適切に相手に伝わるようにしましょう。
連載「アンガーマネジメント入門」、前回は、すぐ実践できるアンガーマネジメントの方法について説明しました。
第4回は、アンガーマネジメントを実践するうえでのコツについて、怒りを感じた側と受け止める側の両面から紹介します。
コツ① 誰に対しても同じ「怒りの基準」を持つ
アンガーマネジメントの方法の1つとして、怒りの基準を持つことを前回の記事で説明しました。
自分の価値観に基づいた「○○すべき」という許容範囲を広げるとともに、怒りの基準を持って、基準を超えた場合のみ、怒りの感情を表すようにするものです。
しかし相手によって異なる基準で怒っているのでは、特に職場では不信感を持たれてしまいがちです。
仲の良い同僚や慕ってくる後輩、業務を高く評価している部下に対する怒りの基準は、他の人と同じでしょうか。
例えば、親しい同僚が打合せ時刻に少し遅れてきた場合は笑ってすませるのに、仲がそれほどよくない同僚が遅れてきた場合はムッとすることはありませんか?
このように、相手によって異なる怒りの基準を設けている人は少なくありません。
しかし相手によって異なる怒りの基準を持っていると、「○○さんは同じことをしても怒られないのに、なぜ私は怒られなければならないのか」といった不信感を招くことになります。
アンガーマネジメントで怒りの基準を持つときには、誰に対しても同じ基準としましょう。
コツ②「怒り」だけではなく要望を伝える
アンガーマネジメントを身に付けて怒りをコントロールしても、自分が何に対して怒っているのか、自分の感情をメインに伝えているのでは、怒ったことが相手の成長にプラスに働きにくいです。
怒りの感情を相手に伝えるときには、「どのような行動をとるべきなのか」具体的な内容もあわせて伝えましょう。
例えば、部下に「資料の提出が遅れたせいで迷惑している」と伝えただけでは、部下は資料が遅れたのは悪いと思っても、具体的な対処策がわからず、今後も変わらないかもしれません。
「資料の作り方がわからないのであれば、途中で聞いて欲しい」、「納期を守るためには、〇日までに〇〇をするなどの段取りをするべきだ」といった具体的な要望をあわせて伝えられれば、部下の方も改善しやすくなります。
また、内容によっては「なんでこれができないんだ?」と言ってしまいがちですが、できない相手に対して「なんで?」と問い詰めても、精神的に追い詰めてしまったり、反感を買ったりするだけです。
前述のようにどうしたらできるのか、一緒に考えていきましょう。
コツ③ 相手に「怒り」の感情を吐き出させる
最後に紹介するのは、相手の怒りをコントロールするためのコツ。
職場で上司から叱責されたときや同僚からクレームを受けた際に、言い返すタイミングを誤ると、怒りに対して逆ギレしたかのように受け取られ、怒りを増大させてしまいがちです。
冒頭のDさんもこのケースで、上司の勘違いを指摘した結果、更なる怒りを招いてしまったのです。では、こうした場合、どのように対処すればよいのでしょうか。
怒りの感情が爆発する時間は、そう長くは続かないことが多いので、まずは、相手の話に耳を傾けて、怒りの感情を吐き出させるべきです。
その間に相手が怒っている内容はすべて事実なのか、思い込みで話している部分はないのか、冷静に判断しておきます。
そして、相手がひとしきり話し終えて少し落ち着いたところで、自分に非がある部分は認めたうえで、勘違いしている部分があれば説明するようにします。
そうすることで、怒りを露わにしていた相手と、冷静な状態で話し合うことが可能になるのです。
アンガーマネジメントを実践する際には、誰に対しても怒りの基準を統一し、怒りの感情だけではなく、要望を一緒に伝えるのがコツです。
最終回となる次回は、アンガーマネジメントは職場でどのように役立つのか、解説します。
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