50人以上の従業員を抱える職場では必ず、衛生管理者を設置しなければならないことが、法律で定められています。
しかし、誰でも衛生管理者として任命できるわけではなく、資格保有者でなければなりません。
実際に衛生管理者の資格取得を考えている方も、「実務としてどのような仕事をするの?」という疑問を持っている方も多いでしょう。
「衛生管理者のお仕事について合格者がご案内!」第2回の今回は、衛生管理者の具体的な実務についてご紹介します。
連載「衛生管理者のお仕事について合格者がご案内!」
- 1 衛生管理者ってどんな資格?誰でも受験できる?
- 2 衛生管理者って具体的にどんな仕事をするの?
- 3 衛生管理者の求人にはどんなものがある?
衛生管理者の仕事とは?
厚生労働省によると、衛生管理者の仕事として下記項目が明示されています。
・健康に異常のある者の発見、その事業の労働者が行う作業処置
・作業環境の衛生上の調査
・作業条件、施設等の衛生上の改善
・労働衛生保護具、救急用具等の点検及び整備
・衛生教育、健康相談その他労働者の健康保持に必要な事項
・労働者の負傷及び疾病、それによる死亡、欠勤及び移動に関する統計の作成
・その事業の労働者が行う作業が他の事業の労働者が行う作業と同一の場所において行われる場合における衛生に関し必要な措置
・その他衛生日誌の記載等職務上の記録の整備等
上記8項目のほか少なくとも毎週1回巡視を行い、問題を発見したらすぐに必要な措置を講じる必要があります。
仕事の中にある「処置」や「調査」といっても、実務のイメージはしづらいかもしれません。
この後、具体的な実務の内容を紹介しますが、その前に、実務を行う上での組織体制についてお伝えします。
衛生管理者が所属する組織体制とは?
安全衛生法に基づき、一定の基準に該当する職場は「衛生委員会」の設置が義務付けられています。
衛生委員会では従業員の衛生に関わる事項を月に1度協議し、その内容を労働者に周知しなければなりません。
衛生管理者が所属する衛生委員会の組織体制はどのようになっているのでしょうか?構成員は次の通りです。
・総括安全衛生管理者または事業の実施を統括管理する者等
・衛生管理者
・産業医
・労働者
実際には、産業医がこの場に参加することは難しい場合が多いため、委員会の内容を産業医の来社日に確認することが多いです。
また、「労働者」とありますが、これは部署ごとに労働者の中から事業者が指名する衛生委員を指します。衛生委員は、多くの場合安全衛生関連事項の伝達役として機能しています。
この中で衛生管理者は、事業者、産業医と協議した内容を労働者へ伝えるための役割も担っているのです。
衛生管理者の業務内容
それでは実際にどのような仕事内容であるのかを、実務に焦点を当ててご紹介していきます。
健康診断受診管理 体調不良者の発見 休職対応 ストレスチェック実施事務従事者としての事務処理 衛生委員会への出席 社内健康増進イベントの企画・運営 産業医面談の運営 職場巡視
衛生管理者の仕事内容は多岐に渡ります。実務の各項目の仕事内容は次のようなものです。
健康診断受診管理
事業者は労働者の健康管理もしなければなりません。未受診者に対して受診勧奨をするのも衛生管理者の仕事です。受診の結果、さらに詳しい検査を必要とする労働者にはクリニックへの受診勧奨や受診したかどうかの管理も行います。
体調不良者の発見
体調不良で職場を休みがちな人がいれば、勤怠をチェックし必要に応じてクリニックの受診を勧めることもあります。職場に看護職がいる場合は、看護職と連携を取ることも衛生管理者の仕事です。
休職対応
休職が必要と判断される人については、産業医に報告の上、休職対象者の診断書を取り寄せるなどして手続きを行います。また復職の際も同様です。
ストレスチェック実施事務従事者としての事務処理
2015年の12月から、厚生労働省により職場のストレスチェックが義務化されました。これに伴い、衛生管理者の仕事の1つにストレスチェックが加わっています。事務処理としては、チェック結果の集計・分析をして事業者に提供をします。
衛生委員会への出席
職場の管理者や産業医などと共に衛生委員会に出席し、衛生に関する事項を調査したり審議したり、職場から事業者への意見を聞きます。衛生委員会は、毎月1回以上の開催が義務付けられています。
社内健康増進イベントの企画・運営
労働者の健康をチェックするだけでなく、積極的に健康増進をはかる仕事です。禁煙キャンペーンや運動会、講師を招いて行う健康に関する社内セミナー、体力測定などの各種イベントを企画し運営します。
産業医面談の運営
健康診断やストレスチェック後に心配な項目のある社員への、産業医の面談・指導をコーディネートするのも衛生管理者の仕事です。休職や復職の際にも、産業医に相談できるよう紹介します。
職場巡視
毎週1回は各職場を巡視します。これは、労働者の作業内容や職場の設備をチェックし、衛生環境や安全性を確認するものです。
衛生管理者が企業で活躍できる部署
このように実は仕事が多い衛生管理者は、どういった部署に所属しているのでしょうか?
人事部や総務部といった「人」に関わる部署の衛生部門や健康管理室への所属が一般的です。
しかし、必ずしもそうでなければならないわけではありません。衛生管理者の資格保有者であれば、所属がどの部署でも構わないのです。
例えば職場によっては、営業部に所属する衛生管理者も存在します。その場合、営業の仕事をこなしつつ衛生の仕事に携わらなければならないため、少なからず負荷はかかります。
ということは、人よりも多くの仕事を持つことになるの?と不安になりますよね。
しかし、衛生管理者に選任されると職務手当が毎月支給されるケースがほとんどです。
衛生関連以外の業務との調整を取りながら、労働者の健康を守るというモチベーションを持って職務を遂行できる、やりがいのある仕事であるといえるでしょう。
衛生管理者が行う業務のやりがい、大変さ
労働者の働き方の改革が叫ばれ、体だけでなくメンタルヘルスが注目される昨今、衛生管理者の仕事はよりいっそう重要となっています。大変な反面、やりがいもある衛生管理者の仕事には、どんな大変さややりがいがあるのでしょうか?
労働者の職場環境を整える責任ある仕事である
大変さの1つ目は、労働者の職場環境を整える重要な責任があることです。職場の衛生管理の最終的な責任者は、例えば部長などの管理者なのですが、衛生管理者は多忙な管理者に代わり職場の様々な衛生環境を常にチェックする責任があります。
やりがいとしては、自分の行う衛生管理業務によって職場が労働者にとって働きやすいものになったという実感が持てることです。自分自身もその職場の一員なわけですから、目に見える形で自分の仕事の意義を感じられるでしょう。また1つの職場単位とはいえ、社会に貢献しているという誇りを持てるのも、衛生管理者として仕事への取り組みがいがある点です。
広範囲に渡る仕事である
大変さの2つ目は、「衛生管理者の業務内容」のところでご紹介したように、衛生管理者の仕事が広範囲に渡ることです。
毎日つける衛生日誌には、職場の衛生環境や設備のチェックだけでなく、その日の病欠者の人数や様子なども記録。毎週1回の職場巡視、毎月1回以上の衛生委員会、年に何回か企画・運営する健康イベント、年に1回の健康診断の運営を行うほか、休職者や復職者が出ればその都度、産業医や看護師と連携してお世話をすることも。衛生管理者の仕事は重要な役割だからこそ、多様な実務を実施していく必要があります。
やりがいとしては、多くの人と関わって仕事ができます。ちょっと考えただけでも、職場の部長や課長といった役職者から産業医、看護師、イベント関連では外部委託の健康診断の会社やセミナー会社の人などいろいろな職種の人と一緒にする仕事ですよね。人と関わるのが好きだったり好奇心が強かったりする人には、向いていると言えそうです。
さて、今回は衛生管理者の実務についてご紹介してきました。具体的な仕事内容についてイメージできましたか?
衛生管理者は労働者の個人情報を扱うことも多く、慎重さが求められます。資格保有者しか携われない職務ですから、誇りを持って日々の仕事に取り組むことができますよ。
あなたも、信頼される職場の衛生管理者を目指してみませんか?
次回は、衛生管理者の求人について焦点を当てていきたいと思います。それではまたお会いしましょう。
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