衛生管理者という言葉はよく耳にしますが、どのような役割を担っていて、その資格はどのように取得するのかを知っている人はあまりいません。
今回は重要ではあるけど知っているようで知らない「衛生管理者」という国家資格に関する、基本的な知識をご紹介します。
目次
1.衛生管理者とは?基本的な役割と資格概要
2.衛生管理者の受験資格とは?満たしているかどうかを確認しよう!
3.衛生管理者は社会人が取得することでどのように役立つ?
4.衛生管理者の資格をとることで得られるメリット
5.衛生管理者の免許を持っていると転職活動などでは得をするのか?
6.裏方ではあるが社会での影響力は大きい衛生管理者という職
1.衛生管理者とは?基本的な役割と資格概要
衛生管理者とは
衛生管理者とは、事業場の労働環境や疾病などの衛生的な管理を行う者のことをいいます。
労働安全衛生法第12条では、事業場で働く労働者の数が50人以上いる場合においては必ず1名以上の衛生管理者を設置しなくてはならないと規定しています。
ブラック企業など労働環境の問題が取りざたされる中で、職場の労働環境を管理する衛生管理者の位置づけはますます重要になってきています。
資格概要
衛生管理者になるためには、免許を取得する必要があります。その中でも一般的な手段となるのが、衛生管理者免許試験に合格することです。
衛生管理者は国家資格であり、第一種と第二種に分かれています。
第一種衛生管理者免許はどのような職種においても衛生管理者になれる資格を持つ一方で、第二種免許の場合には衛生的な弊害が起こりづらい金融事業や情報通信事業など、ある特定の職種に限り衛生管理者となれる資格が与えられます。
第一種の試験では、有害業務に係るものと係らないもの、その両方における関連法規と労働整備、労働衛生が試験範囲になっています。 第二種の試験では、第一種の試験範囲のうち、有害業務に係らないものだけが出題範囲です。
設置される事業場 | 出題範囲 | |
---|---|---|
第二種衛生管理者免許 | 有害業務と関連の薄い、一定の業種の事業場 | 有害業務に係らないもの |
第一種衛生管理者免許 | すべての事業場 | 有害業務に係るものと係らないものの両方 |
合格の基準は絶対評価で、満点の60%以上が合格と判定されます。ただし、各科目別に最低得点の基準が設定されており、受験科目のうち1科目でも40%の得点率に達しなかった科目がある場合には、総合得点が60%を超えていたとしても、その時点で不合格となります。
2.衛生管理者の受験資格とは?満たしているかどうかを確認しよう!
衛生管理者の受験資格は多岐に渡ります。そのうち、代表的なものは『大学または高等学校を卒業したもので、労働衛生に関わる実務経験を1年以上積んだもの』です。
実施団体のホームページを見ると、受験資格があまりに細かく分かれていて自分が条件を満たすかどうかの確認に戸惑ってしまいがちですが、基本的には学校教育を受け、その後、数年間の職場経験があるのであれば問題ありません。
受験資格に記載されている『実務経験』も、細かく見るとその内容は多岐に渡りますが、通常の業務をしていれば労働衛生に関わる実務経験は積んだことになります。
例えば、実務経験の内容のひとつに『作業条件、施設等の衛生上の改善の業務』という内容がありますが、これは職場の掃除などが当てはまります。たいていの人であれば職場の掃除程度は経験をしたことがありますので、衛生管理者の受験資格は知らないうちに満たしているということになります。
大きな会社の場合には、管理部や総務部などが衛生管理業務をメインで行いますので、それ以外の部署に所属している方は実務経験が満たせていないと思う方も多いですが、実際には前述の通り、普段職場で行っている活動が実務経験に当てはまる場合がほとんどなのです。
3.衛生管理者は社会人が取得することでどのように役立つ?
衛生管理者は一定の規模以上の事業場では必須の人材になります。それだけ社会では大きな役割を担っているといえるでしょう。
第一種の管理範囲である医療業の代表である病院などの場合には、医師や歯科医師が衛生管理者となる資格を持つため、衛生管理者免許取得者の需要は高くありませんが、その他の業種では高い需要があります。
さらに、事業体の規模が大きくなればなるほど衛生管理者の人数も増やさなければならないと規定されているため、大企業ほど衛生管理者は必要としています。社会人の場合には取得することで現在の会社で資格手当などが付くほか、転職の際にも有利に働くことが多い資格です。
また、衛生管理者は男女関係なく働けるものであるため、キャリアアップを目指す女性にも人気の資格になっています。むしろ衛生管理者は女性に向いているという声もあり、その背景には職場の相談や休暇取得の相談など、気軽に相談しやすいというのが理由として挙げられています。
衛生管理者免許は、その事業体の管理部門や管理職になる際には、一般的に取得を命じられます。特に飲食業などの場合にはその傾向は顕著で、給与アップとキャリアアップの両面から考えても取得しておいて損はない資格です。
4.衛生管理者の資格をとることで得られるメリット
衛生管理者免許を取ることで、得られるメリットにはさまざまなものがあります。
現在、衛生管理者の絶対数は不足しているといわれていますので、どの企業でも持っていた方が重宝されます。そして、キャリア形成の上でも既にお伝えしたように、人の管理をする立場につくのであれば必須の資格といえるでしょう。
また、衛生管理者は需要と比べて、資格取得が容易であるという点もメリットといえそうです。
多くの人は挑戦をする前に資格試験の勉強に抵抗を感じて諦めてしまいますが、合格率は第一種の場合は約50%台、第二種の場合には約60%台で例年推移しています。この数字は一般的な資格試験の合格率から見ても高い傾向にあり、それだけ取得しやすいということになります。
5.衛生管理者の免許を持っていると転職活動などでは得をするのか?
学生の段階で衛生管理者の免許を取得して就職活動をする場合、志望先が人事部や総務部であれば大きなPRポイントになります。
人の管理を行う人事部や、職場環境全般を管理している総務部では衛生管理者は必須の人材ですので、就職活動においては即戦力としてアピールすることができます。
また、衛生管理者は士業のように独立を目指すものではなく、あくまでも会社組織に所属して活躍する職種です。そのため、転職先によっては転職活動などの際に大きなアピールポイントとして役立つことも少なくありません。実際にハローワークなどで求人情報などを見てみると分かりますが、職域のより広い第一種衛生管理者免許の求人はいつのタイミングでも募集が絶えません。
それだけ有資格者を欲しがっている企業がある現状がありますので、資格を取得することで得られるメリットは今後の展望次第では想像以上に大きいといえそうです。
転職活動をより有利に進めたいという場合には他の資格も合わせて持っておくといいでしょう。衛生管理者と合わせて持つと高く評価される資格としては「安全管理者」「防火管理者」「危険物取扱者」などがあげられます。
どれも取得が困難なものではないため、転職を考えているのであれば同時に取得をしておくとより有効活用できるはずです。
6.裏方ではあるが会社での影響力は大きい衛生管理者という職
衛生管理者はどちらかといえば裏方の仕事ですが、会社に与えている影響はとても大きいです。特に管理部門の職を希望する場合には、現在いる企業内でのキャリアアップにも転職活動にも大きく影響してくるので必ず取得しておきたい資格です。
キャリア形成や転職活動などでもより有利に進めるためにも、衛生管理者免許の取得を目指して頑張ってみてはいかがでしょうか。
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