Excel標準グラフの種類と作り方をご説明する連載「説得力UP!Excelグラフ活用術」 、今回は「レーダーチャート」と「バブルチャート」をご紹介します。
両方とも、データを視覚化して相手を説得する場合に有効なグラフです。
作成方法や特徴を理解して、資料のレベルアップを目指しましょう。これができたら、あなたもExcelマスターの仲間入りです!
複数項目の比較に最適!「レーダーチャート」
レーダーチャートは、学生時代に摸試の成績表で目にした方が多いと思います。クモの巣のように見える、正五角形等で表されるグラフです。
レーダーチャートの特徴
● 正多角形(正五角形や正八角形など)をしています。各頂点を各項目の数値として点を打ち、それぞれ隣の点を結び、形を作ります。
● 1つの調査対象に対して、複数の項目について結果を示すことができます。そして、その数値を表現しながら全体のバランスも表します。
● 全体のバランスがとれていると、より正多角形に近い形となります。バランスが目に見えてわかりやすいです。
レーダーチャートの使用例
● 店の評価(正五角形:立地・価格帯・接客・衛生・品数の点数を配置)
● 人事評価(正六角形:コミュニケーション力・分析力・管理能力・企画力・リーダーシップ・問題解決力)
レーダーチャートの作成例
例えば店舗の評価をする際、複数項目を比較検討するためにレーダーチャートを作成する場合の手順を、簡単にご紹介します。
(以下、Excel2019で作成。フォントは游ゴシックを使用)
↓元の表データ
① A2セルからF5セルまでを選択する
② リボンの「挿入」タブをクリック 「グラフ」グループ→「ウォーターフォール図、じょうごグラフ、株価チャート、等高線グラフ、レーダーチャートの挿入」→「レーダー」→「マーカー付きレーダー」をクリックする
あとは、グラフを選択するとタブに表示される「グラフツール」の「デザイン」及び「書式」タブで見映えを整えれば完成です。
※下図では以下の調整を行っています。
・「(グラフの)デザイン」タブで「グラフスタイル」グループ→「スタイル6」を指定 グラフ上のグラフタイトルを入力
・「(グラフの)デザイン」タブで「グラフスタイル」グループ→「色の変更」→「カラフル」→「カラフルなパレット4」を指定
↓作成後のレーダーチャート
元の表データでは、総合評価点数が同じで店舗間の違いがわかりづらかったですが、レーダーチャートにすることで、各店舗の長所・短所がひと目でわかるようになりました。
散布図と並んで分析向け!「バブルチャート」
バブルチャートは散布図グラフと並び、分析資料によく使われます。その名の通り、複数のバブル(円)で表現されるグラフです。
バブルチャートの特徴
● 2種類のデータの関係性について表す散布図グラフに対して、バブルチャートは3種類のデータについて表します。
● 3種類目のデータの量は、バブル(円)の大小で表現します。
バブルチャートの使用例
● 営業部の販売数に対する今期の売上と構成比(横軸:販売数、縦軸:売上高、バブル:構成比)
● スーパーの時間ごとのレジ通過人数、客単価、売上高(横軸:レジ通過者数、縦軸:売上高、バブル:客単価)
バブルチャートの作成例
ここでは例として、スーパーの時間帯別レジ通過者数・客単価・売上高の作成についてご紹介します。
(以下、Excel2019で作成。フォントは游ゴシックを使用)
↓元の表データ
① B3セルからD8セルまでを選択する
② リボンの「挿入」タブをクリック 「グラフ」グループ→「散布図(X、Yまたはバブルチャートの挿入」→「バブル」→「3-D効果付きバブル」をクリックする
あとは、グラフを選択するとタブに表示される「グラフツール」の「デザイン」および「書式」タブで、見映えを整えれば完成です。
※下図では以下の調整を行っています。
・「(グラフの)デザイン」タブで「グラフスタイル」グループ→「スタイル1」を指定 グラフ上のグラフタイトルを入力
・「(グラフの)デザイン」タブで「グラフスタイル」グループ→「色の変更」→「モノクロ」→「モノクロパレット10」を指定
・「書式」タブの「現在の選択範囲」で「縦(値)軸」→「選択対象の書式設定」をクリック 右側に作業ウィンドウが表示されるので「軸のオプション」→「最小値」を「0」と入力
・「(グラフの)デザイン」タブで「グラフ要素を追加」→「データラベル」→「その他のデータラベルオプション」をクリック 右側に作業ウィンドウが表示されるので「ラベルオプション」→「ラベルの内容」→「セルの値」を選択「データラベル範囲の選択」→「A3~A8」セルを選択「OK」をクリックする→「Y値」のチェックを外す。「ラベルの位置」より「中央」を選択。
・「(グラフの)デザイン」タブで「グラフ要素を追加」→「軸ラベル」→「第1横軸」をクリック ラベル名「レジ通過者数」と入力
・「(グラフの)デザイン」タブで「グラフ要素を追加」→「軸ラベル」→「第1縦軸」をクリック ラベル名「売上金額」と入力
・「書式」タブで「現在の選択範囲」グループで「縦(値)軸ラベル」を選択→「選択対象の書式設定」をクリック 右側に作業ウィンドウが表示されるので「文字のオプション」→「テキストボックス」→「文字列の方向」→「縦書き」に設定
↓作成後のバブルチャート
このように客単価がバブルの大きさで表現されていると、どの時間帯に単価の高いお客様がレジを通過したのか、各時間帯の売上金額とレジ通過者数を含めてひと目でわかりますね。
例えば、12時~14時の時間帯はお客様も少なく低単価の客層が、18時~20時の時間帯には単価の高いお客様が集中しています。
この時間帯にスタッフを多めに配置しておけば効率がいいというように、シフトに関しての人件費を節約するという経営戦略にも役立ちますね。
バブルチャート応用編:PPM分析とは?
バブルチャートは「PPM分析」によく使用されます。聞きなれない言葉で、難解なように思えますが、一緒にチャレンジしてみましょう!
「PPM分析」とは、「Product Portfolio Management(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)」の略で、商品や事業の現状と将来性を検討する分析方法です。
「PPM分析」のバブルチャートでは、以下のような縦軸、横軸、バブルの大きさという3つのデータで表現します。
今後の成長の鍵となる。シェアの拡大・維持に努めて、金のなる木への移動を試みる。
● 金のなる木(成長率:低、占有率:高)
現在のキャッシュインに貢献。今のところ問題がないので、ここで資金をためておく。
● 問題児(成長率:高、占有率:低)
新規事業がなりやすい。他からシェアを奪うことを考えないといけない。
● 負け犬(成長率:低、占有率:低)
撤退するか判断が必要。資金の流入がなく成長が低いので、経営資源の回収をはかる。
この分析に、Excelのバブルチャートを照らしあわせると、よりわかりやすくなります。
例えば「成長率」は、今年の市場規模÷昨年の市場規模で算出します。つまり、去年からどれくらい成長しているのかを表します。
「占有率」は、事業部の売上高÷市場規模で求めます。どれくらい市場においてシェアしているのかを製品ごとに計算します。
例として下記に、スーパーの部署別のデータを挙げます。
横軸:利益率、縦軸:売上金額、横軸:利益率、バブル:売上成長率とするバブルチャートに、PPMの分析図を重ねてみましょう。
横軸には、基本的には占有率(市場シェア)の値を置きますが、今回は、利益率で代用します。
↓元の表データ
思い切って、大胆な作り方を解説します。
バブルチャートでは「部署名」を系列名(凡例)、「売上金額」を横軸、「利益率」を縦軸、「売上成長率」をバブルにします。
一般的にはA2~D9を選択してグラフを作るのですが、どの部分の選択をしても一筋縄ではいかないのがバブルチャートです。そこで全く関係のないセル(空欄のセル)を使って作ってみましょう。
① F1(空欄ならどこでもよい)を選択する
② リボンの「挿入」タブ→「グラフ」グループで「散布図(X、Yまたはバブルチャートの挿入」を選択→「バブル」で「バブル」をクリックする
③ 「(グラフの)デザイン」タブ→「データ」で「データの選択」をクリック「凡例項目(系列)」の「追加」をクリックする
④ 「系列の編集」で「系列名」にA3、「系列Xの値」にC3、「系列Yの値」にB3、「系列のバブルサイズ」にD3を、それぞれ入力。以下同様に「精肉部~日用品部」まで入力
以下のように7項目(図では5項目しか見えません)が入ればOKです。
あとは、グラフを選択するとタブに表示される「グラフツール」の「デザイン」及び「書式」タブで見映えを整えれば完成です。
※下図では以下の調整を行っています。
・「(グラフの)デザイン」タブで「グラフスタイル」グループ→「スタイル1」を指定
・「(グラフの)デザイン」タブで「グラフスタイル」グループ→「色の変更」→「カラフル」→「カラフルなパレット1」を指定
・「書式」タブで「縦(値)軸」→「選択対象の書式設定」→をクリック 右側に作業ウィンドウが表示されるので「軸のオプション」→「最小値」を「0」と「最大値」を「2000000」「主」を「1000000」と入力
・「書式」タブで「横(値)軸」→「選択対象の書式設定」→をクリック 右側に作業ウィンドウが表示されるので「軸のオプション」→「最小値」を「0」と「最大値」を「0.6」「主」を「0.3」と入力
・「(グラフの)デザイン」タブで「グラフ要素を追加」→「グラフタイトル」→「グラフの上」をクリック タイトルを入力
・「(グラフの)デザイン」タブで「グラフ要素を追加」→「データラベル」→「その他のデータラベルオプション」をクリック 右側に作業ウィンドウが表示されるので「ラベルオプション」→「ラベルの内容」→「系列名」を選択→「Y値」のチェックを外す。「ラベルの位置」より「中央」を選択。(データラベルは一つずつこの作業が必要)
↓作成後のバブルチャート(PPM分析)※「問題児」「花形」「負け犬」「金のなる木」の表記は別途追加
完成したバブルチャートを見ると、このスーパーの稼ぎ頭は「精肉部」、負け犬の「日配部、グロサリー部、日用品部」は、撤退を考えなければならない、もしくは大幅な改善が必要な「部署」といえそうです。
問題児にある「惣菜部」は、材料を工夫するなどして、負け犬にならないように利益率を上げる必要があります。
といったように「各領域で何が今後の手法として必要なのか」を分析する場合に、このようなバブルチャートとPPM分析の組みあわせが役に立ちます。
Excelでのグラフの特徴を理解し、適材適所で誰が見てもわかりやすくて説得力のある資料を作成できると、会社での評価や信頼度もアップするはずです。ぜひ試してみてくださいね!
次回は、Excel2016以降に登場した「ツリーマップ」とExcel2019/Office365で登場した「マップ」グラフをご紹介します。お楽しみに。
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