「会社がITパスポートの資格取得をすすめてくるけど、どんな知識が身に付くのかよくわからない」という人はいませんか?
「パソコンはインターネットとWord、Excelぐらいしか使わないけど、そんな人でも合格できるの?」と心配に思う人もいるかもしれません。
そこで今回は、
ITパスポートの概要
ITパスポートを勉強して身に付くスキル
どんな人におすすめできる資格なのか
についてひと通りお話しします。
ITエンジニア以外の方で、ITパスポートを持っていない方は、ぜひお読みください。
目次
情報処理資格の入門編「ITパスポート」
ITパスポートとは、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が実施する試験の1つで、経済産業省が認定する国家資格です。
合格すると、「社会人として必要な情報技術に関する基礎知識」を習得済みであることを国から証明されます。
IPAの実施する試験は、ITパスポートを含めて13種類あります(2023年8月時点)。
難易度はレベル1~4に分かれていて、この数値が高いほど試験の難易度が高くなります。
ITパスポートはこの中で、最も難易度が低いレベル1(初級レベル)の資格。試験を受けるための特別な資格や年齢制限がないため、誰でも受験できます。
ITエンジニア希望の方も含め、就職活動中の学生、会社の事務職、管理職など様々な立場の人がチャレンジしています。
さらに試験は通年受験が可能で、仕事の都合に合わせて勉強できます。
ITパスポートで身に付く知識は、「WordやExcelなど単純なパソコン操作ができる」というレベルではありません。
業態業種問わず、全職種の社会人が業務を行ううえで必要な、ITの知識と基礎的な経営全般の知識が身に付きます。
日本も、デジタル庁を新設するなど、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進に力を入れています。
特に「金融業・保険業・不動産業」では、業務効率化や顧客サービスの向上を目指して、DX導入が積極的に推進されています。これらの業界は、顧客データの管理や取引の透明性、セキュリティの強化などが他業界に比べてより一層求められるため、デジタル技術の活用が不可欠です。
実際に2022年度のITパスポート受験者のうち、社会人で非IT関連企業に勤めている方は約85%です。その中でも「金融業・保険業・不動産業」に勤めている方の受験者数割合は約42%。組織的なDXを行うための最初の取り組みとして、まずはITパスポート取得を最初の目標にする企業が多いようです。
いまや、全社会人にとってITの基礎知識は欠かせないスキルといっても過言ではありません。
ITパスポート試験の応募者は毎年少しずつ増えていて、2012年度が約6万8千人に対して、2022年度は約25万3千人にのぼります。
おそらく今後も、ITパスポート試験の応募者は増えていくことでしょう。
ITパスポートとMOSの違い
ITパスポートとよく比較される資格にMOS(マイクロソフトオフィススペシャリスト)があります。
どちらもIT初心者向けの資格で、受験するのに特別な資格や年齢制限はありません。ただし、資格の目的や習得できるスキルはかなり異なります。
ITパスポートは、IT知識だけでなく、会社の経営戦略やプロジェクトのマネジメントなど、仕事を進めるうえで土台となる総合的な基礎知識も学べる資格。
一方、MOSはWord、Excel、Power Point、Accessなど、Microsoft社のOfficeと呼ばれるソフトウェアの操作スキル向上を目的とした資格です。
MOSを勉強してもITパスポートのように経営戦略やマネジメントの知識は身に付きません。また、MOSはMicrosoft社認定の民間資格であり、国家資格でありません。
この違いを具体的に理解するために、売り上げ予測のグラフを作成する場面を考えてみましょう。
MOSを取得していれば、グラフの形や色合い、細かい配置などの「作業」は、一定の品質で作成できることを証明できます。
一方、ITパスポートを取得していれば、「作業」ができる証明にはなりませんが、売り上げ予測を基に会議で話し合うための知識や工数計算、今後の対応などマネジメント目線を持っている、と証明できます。
ただし、MOSは日本だけでなく、世界各地で行われるグローバルな資格試験です。合格すると世界共通の合格認定証がもらえるので、海外でもOfficeソフトの操作スキルが証明できます。
習得する目的と身に付くスキルはそれぞれ異なりますが、2つともどの企業においても持っておくと有利です。どちらも勉強しておいて損はないでしょう。
ITパスポートの受験方式と試験内容
ITパスポートは通年行われる資格試験で、全国各地でいつでも受験できます。
1回の受験料は7,500円です。ITパスポートの受験方式と試験内容は次の通りです。
受験方式
CBT方式と呼ばれる、コンピュータを使ってテストする試験方式を採用。
受験者はコンピュータに表示される試験問題に対して、マウスやキーボードで解答します。
試験時にはA4用紙のメモ紙と筆記用具が準備されています。個人の筆記用具を持ち込むことはできません。
ITパスポートの公式サイトからCBT疑似体験ソフトウェアをインストールすれば、試験会場で操作する受験画面を自宅でそのまま体験できます。パソコンの操作が苦手な人は、試験前に疑似ソフトウェアで練習してみてくださいね。
試験内容
試験時間は120分で、4つの選択肢の中から解答を1つ選ぶ四肢択一式。
問題数は全部で100問あり、下記の3つの分野から出題されます。
■ ストラテジ系
知的財産権、個人情報保護法などの法務、経営の基本、マーケティングなど企業活動のシステム戦略に関する知識が問われる分野。この分野から約35問出題されます。
内容は次のような問題です。
出典:令和5年度分 ITパスポート試験 問34
■ マネジメント系
システム・ソフトウェア開発の手法や流れ、プロジェクト管理やサービスのマネジメント方法、システム監査の概要や流れに関する知識が問われる分野。この分野から約20問出題されます。
内容は次のような問題です。
出典:令和5年度分 ITパスポート試験 問50
■ テクノロジ系
ITの基礎となる2進数などの基礎理論やアルゴリズムやパソコンのしくみ、プログラミング、セキュリティ、ネットワークなどIT技術に関する知識を問われる分野。この分野から約45問出題されます。
内容は次のような問題です。
出典:令和5年度分 ITパスポート試験 問57
試験合格には、総合評価点1000点満点のうち600点以上獲得しなければなりません。それに加えて上記3つの分野別評価点でもそれぞれ300点以上とる必要があります。
問題数が全部で100問あり、満点が1000点なので、ITパスポートの配点は1問10点と勘違いされがちです。
しかし、出題された100問のうち採点対象となるのは92問だけ。残りの8問は次回試験の参考用です。
解答結果にもとづいて、その都度配点を算出するしくみとなっているので、一般的な試験とちがって1問ごとに明確な点数が割り振られているわけではありません。
ITエンジニア以外のすべての人におすすめの資格
ITパスポートとは、情報処理技術者資格の入門編に位置する資格。ITパスポートで出題される問題は、ITエンジニアなら知っていて当然の知識ばかり。
ITエンジニアを目指して就職、転職する際にITパスポートの資格を持っていても、採用の際に評価されることはほとんどありません。
しかし、ITパスポートを学ぶことで得られるITの基礎知識は、現代の業務において非常に役立ちます。データの取り扱いやシステムの基本的な理解は、マーケティング、営業、人事などあらゆる職種で必要とされています。
この資格を持つことで、業務効率の向上やトラブルの早期解決が期待できるため、ITエンジニア以外のすべての社会人におすすめの資格です。
今はどんな職種でも「IT無しでは業務は成り立たない」といっても過言ではありません。
そのため、国や地方自治体、民間企業など多くの団体がITパスポートの取得を推奨しています。
現に大手企業では、新入社員や若手社員にITパスポートの資格取得を勧めたり、研修に取り入れたりする会社も少なくありません。
また、職種関係なく内定者全員に入社までにITパスポート合格を義務付ける会社もあります。
ITの基礎知識が無い場合のデメリット
ITの基礎知識が無い状態では、仕事をするうえで様々なデメリットが発生します。
会社の業務に支障をきたす
職種関係なく、日常業務の中で「ERPパッケージ(※1)で在庫管理」や「毎日夜中の2時に顧客データをバッチ処理(※2)で更新」など、IT用語が飛び交うことは珍しくありません。
これらの用語を知らないと、上司や同僚が何を言っているのかさっぱりわからないでしょう。
日常業務で当たり前のように出てくるIT用語の意味が理解できないと、その都度上司や先輩に質問することになり、業務に支障をきたす恐れがあります。
入社後すぐに上司や同僚の話す内容が理解できるよう、早いうちにITパスポートを取ってITの基礎知識を勉強しておきましょう。
※1:ERPパッケージ:会計・財務・人事・給与・受注・生産などの、本来部署ごとでバラバラに管理していた業務システムを、一括管理するシステムのこと。
※2:バッチ処理:あらかじめ登録した一連の処理を決まった時間に自動的に実行する処理方式のこと。何十万件もの大量データの更新や処理するときに使われることが多い。
機密情報を流出させる危険がある
ITの基礎知識が無いばかりに、うっかり顧客の個人情報を流出させてしまうケースが考えられます。
例えば、不適切な設定でクラウドストレージに保存した情報が公開状態になってしまうことや、セキュリティアップデートの重要性がわからず、外部からの攻撃により情報が盗まれるリスクの増大などが挙げられます。
効率的な業務遂行が難しくなる
ITの基礎知識が不足していると、業務の効率が大きく低下する可能性があります。
例えば、社内のネットワークドライブの使い方を知らないため、毎回USBメモリを使ってデータの移動を行うというような非効率的な作業が発生するかもしれません。
さらに、社内で使用されている業務アプリのショートカットキーを知らないため、1つ1つの操作に時間がかかり、日々の業務の遂行速度が遅くなる可能性もあります。
こうした非効率な作業を未然に防ぐため、ITの基礎知識を身に付けることは非常に重要です。ITパスポートの勉強を通じて、業務に必要な知識を習得し、より安全かつ効率的に業務を進めましょう。
ITパスポートの知識を仕事で活かせる例
事務職の場合:書類作成やメールのやり取りにも必要
営業事務、人事、総務、経理などの事務系の職種では、Officeソフトを使って書類作成、ERPパッケージへの入力作業などを行う機会が頻繁にあります。
また、社内外問わず、仕事の連絡手段に電子メールなどのITツールは欠かせません。
基本的なITリテラシーやセキュリティに関する知識は、事務作業をするうえでも必要不可欠な知識といえます。
管理職の場合:経営戦略や日常業務の分析に欠かせない
ITパスポートで学ぶ経営活動や法務、システム戦略、経営戦略やマーケティングに関する知識は、企業の経営管理、組織構成、日常の業務分析に必要です。
ITの知識を身に付けることで日常業務への理解が深まり、管理職に欠かせないマネジメント能力も養うことができるようになります。
キャリアアップのための1ステップとして
ITパスポートは、ITの基礎知識を身に付けるだけでなく、キャリアアップのための1つのステップとしても役立ちます。
昨今、多くの企業がDX推進に力をいれており、IT知識を持つことは、昇進や異動の際のアドバンテージとなります。
特に、若くして主任やマネージャーなどに昇進したものの、ITについて体系的に学んだことが無いという人たちは、時間をみつけてITパスポートを取得しておくとよいでしょう。
ITパスポートに独学で合格するには?
ITパスポートの合格率は例年50%前後。国家資格の中では比較的合格率が高いので狙い目の資格といえますね。
では、ITパスポートは独学で合格できる試験なのでしょうか。
インターネットの体験談を見ると、市販の参考書を買って合格したという声が目立ちます。独学でも問題なく合格できる資格といってよいでしょう。
ただし、個人差はあります。パソコンに触れる機会が無かった人などは合格まで100時間程度勉強が必要な場合もありますが、一般的には30~50時間勉強すれば十分合格を狙えるようです。
パソコンの操作が苦手な人は、初心者向けの参考書もしくは勉強サイトを確認して、出題範囲全体の概要の理解を始めることからおすすめします。
わからない専門用語は用語集やインターネットで調べながら、過去問題集を繰り返し解いて、慣れていってくださいね。
しかしITの知識が乏しい人からすれば、IT系専門用語は耳慣れないものも多いです。試験範囲も広いので、1人で勉強しても思うように進まないこともあるでしょう。
参考書や過去問題集を読んで「独学が難しい…」と思った人は、初心者向けにわかりやすい用語で解説した教材を使う、スクールやオンライン講座で勉強することをおすすめします。
業態業種問わず、すべての企業でITの活用は今や必要不可欠の時代。
ITパスポートを勉強すれば、ITの知識も含め、会社の経営戦略やプロジェクトのマネジメントなど仕事の土台となる総合的な知識が身に付きます。
パソコンに慣れていない初心者でも受かりやすい国家資格なので、これを機にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
参考URL:
https://www3.jitec.ipa.go.jp/JitesCbt/html/openinfo/questions.html
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