大学などで法律を学んでいなくても、法律を学ぼうと思う人は多くいます。例えばスキルアップを考え、宅建士、行政書士、司法書士など資格試験の受験を考えたときです。
しかし初心者が法律を学ぼうとすると、そのわかりにくさに驚き、最悪資格取得をあきらめるなんてことも。なぜなら一般的に使う用語との違いがあるからです。
そうならないために!この連載では、行政書士有資格者であり、法律を作成する側である国会議員政策担当秘書有資格者である筆者が、初心者でもわかるように法律用語の基礎について図解を含めて解説いたします。
連載1回目は、法律を学ぶにあたって外せない「法律」と「法令」についてわかりやすく話していきます。これを初めに見ておけば、法律の勉強がスムーズに入っていくはずですよ。
法律と法令はどう違う?
法律系の資格試験の受験に外せないのはもちろん「法律」ですが、これと似ているけれど意味が異なる言葉に「法令」という言葉があります。
「法律」と「法令」はどのように異なるのでしょう。
まずはこの2つの言葉の違いを解説しましょう。
専門的な視点から見ると、「法律」と「法」はそもそもが異なります。
「法」とは、国家などの公的権力機関が何らかの行動を起こす際の根拠となるルールのことです。
これに対して「法律」は、国会で制定された活字形式の「法」のことをいいます。
と言われてもわかりづらいと思いますので、以下図解をご覧ください。
この図解にある通り、「法」の一部に「法律」があるという理解なんですね。
国家などの公的権力機関が何らかの行動をする際には「法律」が根拠となることが多いですが、「法律」以外を根拠とする場合もあります。
例えば、最高裁判所が出す判断である「判例」や、行政機関が出す「通達」などは、「法律」以外の「法」です(図解中の左側参照)。
そして「法律」と、行政機関が制定する「命令」と呼ばれるルールを合わせて呼ぶときは、「法令」という言葉が使われます。
またこの「法令」は、「法律」と「命令」を合わせたものだけでなく、地方自治体が制定する「条例」や最高裁判所などが定める「規則」をも含んで「法令」であると捉える人もいます(図解中の右側正方形参照)。
なお「命令」はその制定主体によって名称が変わり、内閣が制定する命令は「政令」、各省の大臣が制定する命令は「省令」、内閣総理大臣が制定する命令は「内閣府令」と呼ばれます。
この呼び名が変わるのは、初心者のうちは細かに覚えなくてかまいません。そういうものなのだと覚えておき、特に「政令」「省令」などは覚えなくてもいいでしょう。
法律と憲法はどう違う?
続いて「法律」と「憲法」の違いについて解説していきましょう。
先ほど説明したように、「法律」とは国会で制定された活字形式のルールです。そしてこの法律を制定する国会議員は、国民みんなで選挙を通じて選んでいます。
つまり「法律」は、国民全員が間接的に制定しているという建前になるのです。
このため、国民主権の国家では「法律」は「最高のルール」になります。
一方、憲法は、図解にある通り法律のさらに上位になります。
その理由をわかりやすく解説していきましょう。
いくら選挙を通じて国民に選ばれたとはいえ、国会議員が何の制約もなく勝手に法律を制定することはできませんよね。
法律を制定できるということは、租税法を改正して国民に重税を課すこともできるし、社会保障法を廃止して社会保障を打ち切ることもできます。
法律学の立場から言うと国会議員は、法律を通じて国民の生活をよいものにも苦しいものにもできる、非常に大きな権限を持っていることになります。
そのため、国会議員の立法活動を規制するために「憲法」が制定されているのです。
「憲法」には「人権」に関する条文が多く規定されています。つまり国会議員は、例え国民に選ばれた存在であっても、憲法で保障された市民の人権を侵害することは許されません。憲法は、市民を国会議員の暴走から守ってくれているものなのです。
なお法律学の世界では、「法律」という言葉の中に「憲法」は含まれません。このため憲法の中には「憲法および法律」という表現が出てくることがあります。
法律初心者の中には「憲法だって法律の一部でしょう」と思う方が多くいます。しかし先に述べたように「憲法は国会議員を律するもの」「法律は国民を律するもの」であり、そもそも適用対象が異なるのです。
法律と“施行令・施行規則・条例”はどう違う?
「法律」と紛らわしい言葉には、先ほど解説した「法令」のほかに、「施行令」や「施行規則」、「条例」などがあります。
実は法律は、細かい箇所まで規定されているわけではありません。なぜなら、法律を作成した国会議員も、その法律が実行される現場に詳しいわけではないからです。
そのため、各法律の内容を実行する現場である行政機関で、その法律を正しく実現するためのさらに詳しいルールを制定することがあり、その細かいルールが「施行令」と呼ばれる「政令」です。
この「政令」は、「命令」の中では最も上位のルールでもあります。
そして「施行令」の内容を実行するために、さらに細かいルールを制定することがあり、それが「施行規則」と呼ばれる「省令」です。
また先ほど、「法令」には「条例」や「規則」を含むとする場合もあると述べました。
「条例」とは、地方自治体(都道府県や市町村)の議会が制定する、その地方のみで効力を持つルールです。
「条例」も議会で制定されますが、国会ではなく県議会や市議会などで制定され、さらにその地方のみで効力を持つ点で「法律」とは異なります。
そして「規則」とは、裁判所などの国家や地方の組織が、その組織の内部の秩序を維持するために制定する内部ルールのことです。
「規則」は、基本的にその組織内部に向けたルールです。しかし最高裁判所の規則のように裁判所の運営方法について定めている規則は、裁判を起こした一般人にも影響があるため、一般人にとっても重要なものとなっています。
このように、「条例」は地方自治体が制定するもので、「規則」は本来一般人を対象にしていないなど、「法律」とは制定主体などが異なります。
図解でも「憲法」や「法律」が記載されているピラミッドとは異なる四角に「条例」や「規則」が存在し、法律などには反することはできないという意味でピラミッドの下に「条例」や「規則」が来ていますね。
この解説と図解を照らし合わせて、法と法令の全体像を把握してみてくださいね。
おさらい:一緒に考えてみよう!
さて、ここまでの内容をおさらいするために問題です。
次のうち、「法令」に含まれると考えられていないものはどれでしょうか。
① 法律
② 政令
③ 判例
④ 条例
【回答】
正解は ③ 判例
【解説】
「法令」という言葉は「法律」および「命令」を意味するので、「① 法律」は「法令」に含まれます。
また「命令」の一形態が「政令」なので、「② 政令」も「法令」に含まれます。
そして「法令」には「条例」や「規則」を含むとする考え方もあり、「④ 条例」も「法令」に含まれるとする考え方があります。
しかし「③ 判例」は「法令」には含まれるとする考え方はありません。
言葉だけで理解しようとするとこんがらがってしまいますが、図解を見ると一目瞭然ですよね!
各種法律にかかわる国家資格を受験すると、身に付けた法律知識がこのような形式で問われます。
知識を身に付けるだけでなく「正答」するため、出題される表現にも気を付ける必要があります。
合格に結び付くような知識をしっかりと身に付けていきましょうね。
連載「法律初学者なら必見!法律の読み方」1回目は、法律を学ぶにあたって外せない「法」や「法令」、その他似た言葉について図解付きで解説しました。
法律は、どのような要件を満たした場合にどのような効果が得られるかという論理の世界です。
その論理を正しく使いこなせるかは、用語の意味を正しくおさえているか否かにかかっていますので、しっかり覚えていきましょう。
初心者にはとっつきづらい内容かもしれませんが、図解付きだとなんとなく全貌を理解できたのではないでしょうか。ぜひ頭に入れておいてくださいね。
次回は「又は」などの具体的な法律用語の意味を解説します。次回もお楽しみに!
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