連載「ストレス対処術」2回目のテーマは、「適度なストレスの効果」についてです。
ストレスといえば「万病のもと」のような扱いをされている昨今ですが、ストレスがない生活が素晴らしいものかというと、実はそうではなかったりするのです。
ストレスがないということは、張り合いがないということでもあるんですね。ストレスが多いとダメ、少ないのもダメ、人間とは難しい生き物です。
では、やりがいにつながる「適度なストレス」とはどういうものなのでしょうか?今回は適度なストレスの効果についてご紹介します。
ストレスは必ずしも悪者ではない
前回、ストレスは心身に負担をかけるという話をしましたが、ストレスフリーであればバラ色の生活なのかというと、実はそうではないらしいのです。
ストレスとパフォーマンスについて調べた有名な理論があります。「ヤーキーズ・ドットソンの法則」といい、心理学者のロバート・ヤーキーズとJ.D.ドットソンがネズミを用いた実験から見つけた法則です。
ネズミに迷路を攻略させるため、一部のネズミに電気ショックを与えたところ、適度なショックであれば迷路をしっかり攻略できたのに対し、与えすぎるとただ怯えるだけだということがわかりました。また、電気ショックを与えないネズミは、適度なショックを与えられたネズミよりも攻略率が低くなりました。
このことから、学習作業において、ペナルティを与えた方がペナルティを与えないよりも作業効率がよい、ということが言えるわけです。ペナルティをストレスと置き換えると、
- ストレスが低いとやる気が出ない
- ストレスが高いとやる気が出ない
- ストレスが適度だとやる気が出る
と、なります。
「期日までもう時間がない」と、追い込まれないとやる気が出ない、という経験をした人は多いのではないでしょうか?かくいう私もそのタイプです。夏休みの宿題は8月末にまとめてやっていました。
つまりストレスが適度にかかっていると、人間はパフォーマンス力を引き出すことができるんです。
「資格試験に合格する」という目標を持つことも適度なストレスになると言えます。合格しなきゃという思いがプレッシャーになり、勉強に力が入るのです。逆に試験も受けないのに、ただ思い付きで勉強しようと思っても集中できませんよね。
適度なストレスが必要な理由とは?
適度なストレスがパフォーマンスを上げることがわかりましたが、なぜなのでしょうか?
ストレスがないほうが快適な生活を送れそうな気がしますよね。
しかし、ストレスがないということは、誰も自分に期待をしてくれていない、という状態でもあります。また、「これをしなければならない」という目標もない状態ですよね。期待も目標もなければ、追い詰められることもありませんからストレスとは無縁!ですが、同時に張り合いもありません。
人生になんの目標もなくて、何かをしようというモチベーションが上がるはずもなく、当然、目標を達成するという満足感も得られないわけです。
人間は何かを得ようと努力することで、スキルや経験を手に入れることができます。たとえば仕事であれば、同期に負けたくないから試行錯誤を繰り返したり、作業の効率化を模索したりすることでスキルや経験が手に入りますよね。それは仕事をしていく上での強みになるものです。また、「失敗するかもしれない」というストレスは注意深さを身に付けるので、リスクマネージメントの役に立ちます。
適度なストレスはパフォーマンス力を上げるだけではなく、生きていく上で必要になる武器を手に入れることにも一役買っているのです。
適度なストレスを得るために心がけたいことは?
適度なストレスがパフォーマンスだけでなく、生きていく上で必要になるスキルや経験を手に入れるのに貢献することもわかりました。
では、適度なストレスとはどういうものでしょうか?
それは目標に対するモチベーションで判断することができます。「やろうと思えばいつでもできるけど、やる気が起きない」というものに対しては、ストレスレベルが低すぎると判断していいでしょう。こういう場合は、ごほうびを用意して動機付けを行うのが効果的です。
逆に「できるかどうかわからないから緊張する」という、ストレスレべルが高いものに関しては、休息やリラクゼーションで肩の力を抜き、心に余裕を取り戻すことが効果的です。ガチガチに緊張していると、いつもはできることも、焦ってしまってできなくなることがありますからね。
つまり緊張を楽しめる程度の負荷が「適度なストレス」と言えるのです。
漫画、ドラゴンボールの主人公、孫悟空が、強い敵と出会ったときに「ワクワクすっぞ」と言いますが、あれはまさに適度なストレスを受けていると言えるでしょう。簡単には勝てないけど、全力を出せば勝てるかもしれないという不安と期待が、悟空に適度なストレスを与えているのですね。
ストレスは心身に影響を与えるため、ストレスがかかりすぎると心身ともに疲労が蓄積してきます。注意するべきは身体の疲労です。
というのも、心の疲労は見えにくいので、なかなか気づきにくいもの。しかしストレスは「体だけ」「心だけ」ではなく、どちらともに負担をかけるので、「体が疲れてきた」と感じたらストレスがかかっているサインなんです。それは、ストレスレベルが上がってきたという証拠ですから、疲れを感じたら体を休めることが大切。
適度なストレスをキープするには、疲労と回復のバランスが重要です。
適度なストレスがパフォーマンスを向上させることについてご紹介しました。
まとめますと、
ストレスがない状態は快適とはいえない 適度なストレスはパフォーマンスを向上させる 適度なストレスをキープするには、疲労と回復のバランスが大切
ということが言えます。
現代人はストレスに囲まれていますが、そのストレスを楽しめるくらいの余裕を持てるようにストレスをコントロールできれば、パフォーマンスは最大限になるということですね。自分の本来の力を発揮できていない、と思う方はぜひストレスを楽しめるように動機付けをしたり体を休めたりして、ストレスレベルを調節してみてください。
次回は「やらない方がいいストレス解消法」についてご紹介します。
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