「宅建」と聞くと、「不動産業界で役立ちそう」というイメージが浮かぶものの、どのように資格が活かせるのか、具体的にはわからない人が少なくないのではないでしょうか。
宅建は不動産取引になくてはならない資格で、不動産会社以外でも役立てることができます。宅建の有資格者しかできない独占業務があることからも、ニーズの高い資格です。
この記事では、宅建とはどんな資格なのか、資格試験の内容や活躍できる業界など、勉強をスタートする前に知っておきたいことについて紹介していきます。
目次
そもそも「宅地建物取引士」とはどんな資格?
宅建は正式には「宅地建物取引士」といい、不動産取引に関する国家資格です。
宅地建物取引士の有資格者がいなければ、不動産業を営むことをはじめ、売買契約や賃貸契約を結ぶこともできないため、不動産業界などで重要視されている資格です。
宅地建物取引業法で、宅地建物取引業、すなわち、不動産業を営むには、事務所ごとに従業員5人に1人以上の割合で、専任の宅地建物取引士を置くことが義務付けられています。
また、不動産の売買契約や賃貸契約の前に行う重要事項説明や重要事項説明の書面への記名・押印、契約書面への記名・押印は、宅地建物取引士でなければできません。
売買や賃貸などの不動産取引には、民法や宅地建物取引業法、借地借家法や建築基準法など、様々な法律が絡んできます。
また、不動産取引は高額な取引になることが多く、知識がない人が不利益を被る恐れがあります。
そこで、不動産取引に必要な専門的な知識を持つ宅地建物取引士が、契約の前に重要事項説明を行う役割を担っているのです。
宅建の資格は、以前は「宅地建物取引主任者」という名称でした。宅地建物取引業法の改正によって、2015年4月から「宅地建物取引士」に変わっています。
「士」に格上げされたのは、不動産取引の際の重要事項説明が煩雑化しているため、消費者に対して説明内容を理解してもらうための技量や、相応の知識の向上が求められていることが背景にあるとされています。
中古住宅の流通が拡大していく中、宅地建物取引士の役割はますます重要なものになっていくでしょう。
宅地建物取引士試験の試験内容や合格率は?
宅地建物取引士試験は、1年に1回、10月の第3日曜日に実施されます。
受験資格は特になく、年齢や性別、学歴を問わず、誰でも受験することができます。
試験方法は、四肢択一式の筆記試験で50問、マークシートによる回答方式で、試験時間は2時間です。
ただし、不動産業に従事している場合は、登録講習を受講して登録講習修了試験に合格することで、試験の一部免除を受けることができます。一部免除の場合は5問が免除され、試験時間は10分短い、1時間50分です。
宅地建物取引士試験出題内容は、7項目あります。
主に出題されるのは、民法を中心とした「権利関係」、「宅地建物取引業法と関連法令」、建築基準法や都市計画法などの「法令上の制限」です。
このほかに、「土地や建物の構造、種別」や「土地や建物に関する税」、「宅地や建物の需給に関連する法令や実務」、「宅地や建物の鑑定評価」も出題範囲となっています。
宅地建物取引士試験の合格基準点は、年度による違いがありますが、34点~36点が目安です。一部免除の場合は、30点前後が目安になります。
2015年に宅地建物取引士になって以降の合格率は、2018年度までは15%台と低めでしたが、2022・2023年度は17%台となっています。
参考PDF:不動産適正取引推進機構 試験実施概況(過去10年間)
宅建の資格は必要?仕事で活かすことはできる?
宅建の資格を持っていると、不動産会社だけではなく、建築会社や不動産管理会社への転職や就職に有利であり、金融関係でも不動産に関する知識を活かすことができます。
こうした業界の企業では、宅建に資格手当を設けているケースが多く、資格取得による収入アップも見込めます。
不動産会社では、事務所ごとに専任の宅地建物取引士の配置基準が設けられ、重要事項説明など実務上も有資格者が必要なことから、宅建を持っていると優遇されることが多いです。
不動産の営業は宅建の資格がない人でもできますが、資格を持っている方がお客様から信頼を得られやすく、また、管理職への昇進は有資格者に限られることがあります。
さらに契約関係業務の事務職の求人でも、宅建の有資格者を募集するケースが少なくありません。
建築会社では、自社で土地を仕入れて開発した物件を販売するケースがあるため、宅建の有資格者が求められています。
不動産管理会社は管理業務で必要なのは別の資格ですが、不動産取引に関する知識が役立つことがあり、物件の仲介も手掛ける場合には、宅建の有資格者が必要です。
また、銀行などの金融関係の企業では、融資の際に不動産の担保価値を行う際に、宅建などの有資格者が重用されます。
宅建の資格は不動産業界を中心に、転職や就職に有利となり、キャリアアップにも活かせる資格なのです。
宅建は不動産の知識がない人でも合格できる?
宅建の試験は不動産知識のない人でも、勉強時間を確保して臨めば、短期間で合格することも十分可能です。
宅建の試験の合格率は15%程度と聞くと、「難易度が高いのでは?」と感じてしまいがちです。
しかし資格試験の合格率は必ずしも、難易度と比例するとは限りません。
例えば、医師国家試験の合格率は90%程度ありますが、人間の命に関わる国家資格が宅建よりも難易度が低いとは考えにくいですね。
医師国家試験は、大学の医学部の入試試験を突破し、専門的に6年間学び、国家試験に向けて入念な準備を重ねた人が受験するため、合格率が高いのです。
一方、宅地建物取引士試験は誰でも受験が可能であり、不動産会社に入社したばかりの人が、さほど勉強を進めていない状態で受験することもあります。
宅建は「誰でも受けられること」が合格率の低さの原因でもあるのです。
確かに宅建の勉強にあたり、まったくの初心者よりは、法学部出身の人であれば権利関係などの知識がある面で有利といえますし、不動産業に携わっている人であれば実務経験がある面で有利といえます。
しかし、宅建はまったくの知識ゼロからでも取得できる資格です。
宅建の試験問題は、過去問からの類似問題の出題が7~8割で、7割ほどの正解率で合格できます。そのため、法律用語や専門用語を1つ1つ理解し、過去問を解いて理解を深めていくことで、合格できる力を身に付けることが可能です。
ただし、実際の試験では、50問に対して試験時間は2時間ですので、2分24秒に1問のペースで解答していかなくてはなりません。瞬時に4つの選択肢から正答を見極める力を養っておくことが大切です。
一般的に宅建の合格に必要な勉強時間は300時間と言われていますので、1日3時間の学習で3ヵ月以上の学習期間が目安になります。
宅建の資格は、不動産業に関する知識のない人でも合格することができますが、十分な準備が求められる試験と言えるでしょう。
宅地建物取引士として仕事をするのに必要な登録って?
宅地建物取引士試験に合格しただけでは、宅地建物取引士としての仕事をすることができません。
試験に合格後、受験をした都道府県で登録を行い、取引士証の交付を受けてから、宅地建物取引士としての仕事ができるようになります。
宅地建物取引士の登録をするには、2年以上の実務経験があること、または、登録実務講習を受けることが要件です。
試験合格後1年以上経過した後に登録する場合は、法定講習の受講が必要になります。
ただし、試験合格後に登録するかどうかは任意ですので、すぐに登録しなければ合格の効力が無効になる、ということはありません。
宅建の試験に合格後、業務上、資格が必要になったときに、登録をすることもできるのです。
宅建は不動産会社ではなくてはならない資格ですので、不動産業界などへの就職や転職などで、強みを発揮します。
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