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裁判所とそのしくみ|行政書士受験生が知っておきたい法の基礎④

裁判所とそのしくみ|行政書士受験生が知っておきたい法の基礎④

法律系資格取得を目指す方のための連載「知っておきたい法の基礎(全5回)」、第4回は「裁判所と裁判」についてお伝えします。

行政書士試験では、基礎法学としての出題とともに、憲法の条文問題と関連して出題される可能性がある分野です。

その他の法律系資格を勉強する方でも、憲法があれば出題される可能性がありますし、法的にどちらが正しいか判定するための機関である裁判所と、その手続きである裁判について、基礎を勉強しておくことは必須といえるでしょう。

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最低限の裁判に関する用語

まずは、裁判に関する5つの用語を知っておきましょう。

上訴(じょうそ)

後述しますが、日本では裁判は三審制をとります。

下級審の裁判に不服があるときには、上級審の裁判所に、不服があると再審査を求めます。
この行為のことを上訴とよびます。

上訴には、第1審裁判所の判決について不服を申し立てる控訴(こうそ)と、第2審裁判所の判決について不服を申し立てる上告(じょうこく)があります。

飛越上告(とびこしじょうこく)・跳躍上告(ちょうやくじょうこく)

裁判は通常、控訴・上告をするのですが、一定の条件の下で控訴審を飛ばして上告することができます。
民事裁判では飛越上告、刑事裁判では跳躍上告とよんでいます。

非常上告

刑事裁判において、判決が確定した場合にはそれ以上上訴はできないのが原則です。

しかし、確定した判決が法令に違反したことを理由として、是正を求めるために、検事総長に非常上告という権限を刑事訴訟法で付与しています。

実際に、交通違反の罰金判決の手続きに違反があったとして、2010年に253件もの非常上告があった事例があります。

特別上告

第一審は内容によって簡易裁判所・地方裁判所に分かれます。
簡易裁判所で審理をした場合には、上告審は高等裁判所になります。

一方で最高裁判所は、憲法に合致しているかどうかを判断するという機能をもった機関です。
簡易裁判所で審理が始まったものが高等裁判所に上告がされ、そのまま確定してしまうことが不都合である場合には、最高裁判所に審理させなければなりません。

そのため、特別にもう一度不服申し立てをできる権限を、民事訴訟法は特別上告という制度で与えられています。

再審

再審は、確定した判決に重大なあやまりがあった場合に、裁判のやり直しをさせるための制度をいい、民事訴訟法・刑事訴訟法両方に規定があります。
上訴ではないので注意をしましょう。

最高裁判所

最高裁判所の組織

最高裁判所は、最高裁判所長官1名と最高裁判所判事14名で構成されています。

最高裁判所長官は、内閣が指名し、天皇が任命をします(憲法79条1項・憲法6条2項)。

最高裁判所判事は、内閣が任命し、天皇は認証を行います(憲法79条1項・裁判所法39条2項)。

長官の内閣による指名・天皇による任命と、判事の内閣による任命は、憲法の条文問題として行政書士試験でも出題されますので、暗記することになります。

最高裁判所の権限

■ 違憲立法審査権

憲法81条により、最高裁判所は、一切の法律、命令、規則、処分について憲法に適合するかしないかを決定する権限をもっています。

■ 規則制定権

訴訟に関する手続き、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項、下級裁判所に関する事項についての規則を制定する権限をもっています(憲法77条)。

本来は立法行為なのですが、裁判所が独立して裁判権を行使できるようにするため、裁判所に与えています。

■ 下級裁判所の裁判官の指名

下級裁判所の裁判官の指名は、最高裁判所が行い、内閣がこれを任命します(憲法80条1項)。
こちらも行政書士試験憲法向けの暗記として覚えておいてください。

違憲立法審査権の行使方法

違憲立法審査権には、英米法的な付随的審査制と、大陸法的な抽象的審査制の2種類の形があります。

付随的審査制

アメリカ・イギリスなどの英米法の国が採用するもので、憲法適合性の判断を、事件の解決に必要な限度で行使するやり方です。

ですので、ある法律は憲法に違反している、ということだけで裁判はできず、通常の裁判に付随して憲法違反を主張するやり方となっています。
日本はこちらの審査制度をとっています。

抽象的審査制

ドイツ・フランスなどの大陸法の国が採用するもので、憲法適合性の判断のためだけの機関に憲法判断をさせる方式です。

三審制

裁判は、民事上の権利義務を決めたり刑罰を与えたりする、個人の利益にとって重要なものになります。
また、ひとたび判決が出ると、その判決が後の裁判に影響が出る場合もあります。
そのため、慎重な判断をさせるために、上訴をできるようになっています。

日本では基本的には三審制という、上訴を2回して3回の判断をもらえるような制度をとっています。
ただ、最高裁判所は1ヶ所しかないので、全部の事件を審理するのは物理的に不可能です。
ですので上告をするためには、憲法違反や判例違反などの一定の場合に限られることに注意が必要です。

三審制イメージ

連載「知っておきたい法の基礎(全5回)」、今回は裁判所と裁判のしくみについてお伝えしました。

行政書士は裁判実務に携わることはありませんが、基礎法学ないし憲法の学習を通じて裁判制度の基礎を理解しておくことは、試験対策にも法律の職業に携わる人としての教養にもなります。ぜひマスターしてみてください。

最終回である次回は、法令に関する用語についてお伝えします。

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