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刑法の原理について|行政書士受験生が知っておきたい法の基礎③

刑法の原理について|行政書士受験生が知っておきたい法の基礎③

法律系資格取得を目指す方のための連載「知っておきたい法の基礎(全5回)」、第3回は「刑法の原理」についてお伝えします。

行政書士試験では刑法の内容について、個別の出題はありません。しかし「基礎法学」の内容として、刑法に関しての原理については出題があります。

それ以外の法律系資格でも、刑法という法律が何をしようとしているものなのか、その原理を把握しておくことは、法学の勉強の基礎となるので、勉強の進捗を早めてくれます。

刑法の原理については、しっかりと勉強すると様々な分野があるのですが、今回は刑法が持つ機能と、罪刑法定主義というものについて見てみましょう。

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刑法の機能

刑法があることによって、社会にどのような影響があるのかということを、「機能」という側面からみてみましょう。

法益保護機能

まずは、法益保護機能(ほうえきほごきのう)というものがあります。

法益というのは、法によって守ろうとする利益のことをいいます。
例えば、個人の財産を勝手に持っていくようなことがあっては、財産的な秩序は守られません。
そこで、刑法などの法律で窃盗罪を規定して、個人の財産を守るべきです。

刑法は「悪いことをしたら罰する」ものですが、悪いことというのは、守られるべき利益を侵害することです。
窃盗罪なら守るべき法益は「個人の財産」ですし、殺人罪ならば守るべき法益は「個人の生命」ということになります。

覚せい剤使用の処罰のように、自分で自分に不利なことをしている場合でも、社会一般を守るという共通の法益に対する侵害行為であると評価されています。

この議論は例えば、自殺は違法なのか?自殺ほう助罪はどういう理屈で処罰されるのか?などといった、刑法の個別の法律解釈に影響を及ぼします。

自由保障機能

刑法に抵触する行為をすると、禁錮や懲役、場合によっては死刑というペナルティを受けます。

刑罰法規を適用される側としては重大な事態になるので、どのような行為をすれば罰を受けて、どのような行為であれば罪に問われないかを知りたいですね。
もしこれがわからないと、どのような行為を自由にできるのかがわからないのです。

刑法などの刑罰法規に書いている行為をすれば罰せられる、ということは逆にいうと、刑法に書いていないことをやったとしても罰せられない、という意味です。

“刑法に書いていない行為は自由にしてよい”と保障するものであることから、このような機能のことを自由保障機能(じゆうほしょうきのう)と呼んでいます

この自由保障機能は、刑法というものについて必ず理解しておきたい、重要な「罪刑法定主義」という原理を導きます。

罪刑法定主義

刑法の原理で最も重要なのが、罪刑法定主義(ざいけいほうていしゅぎ)です。

文字をそのまま解釈すると、罪と刑は法律で定めてください、という主義です。
この理論はイングランドで1215年に制定されたマグナ・カルタにすでにみられるもので、近代刑法学の父といわれるフォイエルバッハというドイツの学者によって1801年に提唱された原理です。

“どのような行為が犯罪になるか、あらかじめわかっていなければ、国民は自由に行動することができない”という自由主義の思想がベースになっていると共に、“何が犯罪かは民衆の代表である国会が法律で制定する”という民主主義の思想も取り入れられたものになります。

この罪刑法定主義は下記のような派生原理を導きます。

慣習刑法の禁止

刑法は法律として条文で定めていなければならず、慣習だからといって処罰することは禁止する原則です。
もしどうしても処罰する必要がある場合には、その慣習を法律にすればよいだけなのはわかりますね。

刑事法における類推解釈の禁止

第2回「法の効力と解釈」で説明しました、類推解釈を禁止する原則です。

類推解釈は、法律が真正面から規定されていなくても、法律を制定した趣旨が合っていれば適用する、というような方法でした。

これも、刑罰法規で行うと、事前に予想できなかった行為で処罰されるため禁止されることになります。

法の不遡及(事後法の禁止)

新しく法律をつくって、過去にさかのぼって適用することを認めない原則をいいます。

ある行為を取り締まるために後から法律をつくって規制をすると、立法をする人が意のままに気にくわないものを処罰することができるためです。

第2次世界大戦後の東京裁判(日本の戦争指導者を処罰するために行われた)で、“A級戦犯とされた人は、実はこの原則で有罪にできないのではないか?”という観点から、無罪を言い渡したインド人判事がいます。

適正手続の保障

どんなに刑法が正しくつくられていたとしても、その刑法を適用するための手続きが正しくなければ無意味になってしまいます。

ですので、刑法を適用するための手続きもまた適正でなければならない原則も派生原理として挙げられます。
日本では憲法31条がこの原則を定めています。

刑法の機能

連載「知っておきたい法の基礎(全5回)」、今回は刑法の原理についてお伝えしました。

刑法は行政書士試験科目ではないのですが、基礎法学としては出題されます。
行政書士以外の法律系資格でも、法律に携わる職業である以上、刑罰法規は必ず勉強しますので、基礎的な原理は知っておくべきでしょう。

次回は、裁判所と裁判についてお届けします。

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