行政書士などの法律系資格を取ろうという方は、「基礎法学」という分野を勉強することになります。
基礎法学とは、法律を勉強するうえでの分類や機能などを解明する学問です。
日常生活の解決には役に立たない分野ですが、勉強が進むとこの「基礎法学」の知見があるかどうかが結構重要になります。
今回の連載「知っておきたい法の基礎(全5回)」では、基礎法学のベースになる5つのテーマについてお伝えします。
第1回は法の種類についてです。
法というと、文章として書いてある憲法や法律・規則のみを意味するように思えますが、実は「人々の行動を規律するルール」という意味の法は、文章に書かれたもののみには限定されません。
法は、存在形式・適用の優先順位・当事者の意思で変えられるか、などの観点からも分類されています。
個別の法律を勉強するまではなかなか頭に入りづらいのですが、行政書士試験では基礎法学は必ず出題されますし、行政書士以外の試験でも、たくさん勉強する法律がどのような関係にあるのか、法の分類からアプローチすることでよくわかるようになります。
今回の記事は、法の種類について、覚えるというより理解するというものですので、気軽に読んでみてください。
存在形式から分類される法の種類
まずは法の種類を存在形式から分類します。
自然法と実定法にまず分かれる
法の種類の分類には様々ありますが、まず大きく2つに分けると
「法として文章化する以前の問題なのか」
「文章化されたものなのか」
となり、「自然法」と「実定法(じっていほう)」に分類できます。
自然法とは、条文に掲載されるまでもなく、普遍的(どこにでも共通していえるもの)で当たり前のものを指します。例えば、人を殺してはいけません、レベルのものです。
実定法とは、国会や裁判所の判決、社会通念などが文章などによって表面的になった結果、みんなが認識できるようになったものを指します。
実定法は成文法と不文法に分かれる
実定法は、法として文章化されているかどうかで「成文法」と「不文法」に分かれます。
成文法とは、法として文章化されたものをいい、憲法・民法・刑法などを指します。
不文法とは、法として文章化されていないけれども、法と一体として同じような効果を持つものを指し、判例法や慣習法などがこれにあたります。
成文法は国内法と国際法に分かれる
成文法は、適用される法律の対象が1つの国内関係のみを規律するのか、複数の国の関係を規律するのかで、「国内法」と「国際法」に分かれます。
1つの国の中で通用する法のことを国内法と呼び、日本国憲法などがこれにあたります。
複数の国の関係を規定するものを国際法と呼び、世界人権宣言のような条約がこれにあたります。
国内法は公法・私法に分かれる
法として文章化された法律は、誰を対象とするかによって「公法」と「私法」に分かれます。
国・地方公共団体内部の問題および私人との関係を規律する法律のことを公法といい、憲法・地方自治法・刑法などがこれにあたります。
私人間の関係を規律する法律のことを私法といい、民法や商法がこれにあたります。
適用関係から分類する法の種類
複数の法律が同じシチュエーションで使われる可能性があります。“この場合どちらの法律が適用されるのか”を考える際、「一般法」と「特別法」という種類分けをします。
どのようなシチュエーションでも適用される基本的な法律のことを一般法といい、特殊なシチュエーションに限定される法律のことを特別法と呼びます。
例えば、私人間(しじんかん)の債権の時効を10年とする民法の規定がありますが、その取引が商行為にあたる場合は、商法の適用対象になるので時効の期間が5年になります。
私人間一般を規律する民法が一般法であるのに対して、取引が商行為にあたる場合には商法の適用が優先されることから、商法が特別法ということになります。
当事者の意思が尊重されるかどうかから分類する法の種類
当事者の意思が尊重されるかどうかで、「任意法規」と「強行法規」という分類の仕方があります。
当事者が法律の規定に反する意思表示をすることによって、法律に書かれていることに規定されていない効果を発生することができる規定を任意法規といい、当事者の意思表示によっても法律に書いてある効果を覆せないものを強行法規といいます。
例を挙げますと、民法417条は“損害賠償は金銭でしてください”と定めていますが、例えば別のものの引き渡しで損害賠償とする規定を契約に盛り込めばそれは有効なので、民法417条は任意規定です。
また、民法146条は“時効を主張する権利を放棄することはできない”と規定しており、この条文は、当事者が契約で「時効は主張しません」としていても無効であるとされているため、民法146条は強行法規です。
連載「知っておきたい法の基礎(全5回)」、今回は法の分類と種類についてお伝えしました。
法の分類は、法律を勉強する場合の基礎的な素養として必要になります。
基礎だから簡単という意味ではなく、法律の基礎部分を解明しようとする分野なので、具体的な法律を勉強するうえで重要です。
今回は少し味気ない紹介に終始しましたが、法の分類は行政書士試験では出題対象とされており、それ以外の法律試験では出題こそされないものの、意味は知っておく必要があるものです。
なお行政書士試験では、基礎法学はボリューム・難度のわりに出題があまり無いので、直前にさらっと暗記をすれば、出題された時に対応できるでしょう。
次回は、法律が効力を持つのはいつからか、適用にあたってどのように解釈するのか、という問題についてお伝えいたします。
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