突然ですが、皆さんは行政書士にどんなイメージを持っていますか?
ちなみに、世間の行政書士に対する意見は様々です。「法律初級者向けの簡単な資格」という人もいれば、「人気が高い難関資格」と評価する人もいます。
また「資格を持っていても仕事がない」という意見がある一方で、「仕事の幅が広い魅力的な資格」という声も聞かれます。
これほど評価が分かれる資格もそうそうありません。では実際のところはどうなのでしょうか?
この連載では、これから5回にわたり「独学で試験に合格した現役行政書士」(私のことです…)が考える、行政書士の特徴と魅力をお話しいたします。
どうぞ最後までお付き合いください!
最初に知っておきたい、行政書士試験の内容と傾向
司法試験(裁判官・検察官・弁護士になるための資格試験)を筆頭に、日本にはいろいろな法律系試験があります。もちろん行政書士試験もそのひとつ。
といっても難関揃いの法律系試験の中で、行政書士試験の合格率は比較的高めです。このため行政書士試験を「法律系資格の登竜門」と呼ぶ人も少なくありません。
データで見てみましょう。下の表は行政書士試験を実施している「一般財団法人行政書士試験研究センター」が公表しているデータです(過去5年分を抜き出しました)。
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
平成25年度 | 55,436人 | 5,597人 | 10.1% |
平成26年度 | 48,869人 | 4,043人 | 8.3% |
平成27年度 | 44,366人 | 5,820人 | 13.1% |
平成28年度 | 41,053人 | 4,084人 | 10.0% |
平成29年度 | 40,449人 | 6,360人 | 15.7% |
https://gyosei-shiken.or.jp/pdf/h29trans.pdfより抜粋
平均すると合格率はおおむね10%以上。合格率1ケタ台の司法書士試験や社労士試験と比べると、確かに合格率は高めですね。
ここで「やっぱり行政書士試験は簡単」と思った方、ちょっと待ってください。合格率が高いことと、試験そのものの難易度とは別問題です。
そもそも難しい用語が並ぶ法律系試験は、慣れない人にはすべて超難関。
憲法、民法、会社法、行政法と呼ばれる法律群、これらを含む行政書士試験も例外ではありません。
だから行政書士試験の受験者は、ある程度専門的な学習をしてきた人や再受験の人がほとんどです。素人が中心の10%と経験者が中心の10%では、意味合いが全然違いますよね。
つまり、行政書士試験は決して簡単ではありません。…でも安心してください!しっかり対策を立てて正しい学習をすれば、行政書士試験に合格する確率はぐっと上がりますから。
活躍のチャンスは無限大…種類豊富な業務内容
法律系の職業で有名なのは、なんといっても弁護士や検察官です。映画やドラマの題材になることも多いですね。
一方で「行政書士の仕事は?」と聞かれて、パッと答えられる人はあまりいません。これは業務範囲が狭いという意味ではなく、一言では答えられないほど業務範囲が広いためです。
行政書士が行える業務の内容と範囲は、「行政書士法」という法律の中に書かれています。ざっくりまとめるとこんな感じです。
- 国や自治体などに提出する申請書や届出書の作成
- 「権利義務又は事実証明に関する書類」の作成
- 作成した書類の提出代行
- 上記の書類作成に関連した相談、など
申請書や届出書、「書類」は種類が膨大なので(詳しくは別の機会に説明します)、行政書士の仕事も膨大にあるといえます。その分、覚えることも膨大ですが…。
本人の意欲と努力と工夫次第で、活躍のチャンスは無限大!それが、行政書士という仕事の魅力です。
行政書士だけじゃない!法律系の資格
行政書士の仕事をしていると、ときどき「司法書士」と間違えられます。また、「社労士」の仕事を依頼されて、泣く泣くお断りすることも少なくありません。
あ、なんの話かさっぱり意味がわからないという方も大丈夫。これから代表的な法律系の職業と、その業務内容について簡単にご説明します。
弁護士
法律の専門家として、法律関連の相談を受けたり、裁判で「訴訟代理人」を務めたりすることができます(ドラマなどでよく見るのはこれ)。
行政書士以上に業務の幅が広い万能プレイヤーなので、ほぼあらゆる法律系の業務を行えるのが特徴です。
司法書士
登記の専門家として、裁判所や法務局に提出する書類の作成・提出代行を行います。また条件付きで「少額訴訟」の代理を行えるのも特徴です。
行政書士と名前が似ていますし、書類作成や提出代理という部分では近い職業といえます。
社労士(社会保険労務士)
人事・労務の専門家として、ハローワークなどに提出する書類の作成・提出代行を行います。
「就業規則」の作成や「助成金」申請なども社労士の専門ですが、これを行政書士に依頼する社長さんが意外と多いんです…(もちろん引き受けたらNGですよ)。
今回は、行政書士試験と行政書士の仕事について簡単にお話ししました。行政書士の資格取得を目指す皆さんの参考になれば幸いです。
さて次回は「行政書士に期待される役割と働き方」について、もう少し掘り下げてお話しします。どうぞご期待ください!
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