お店に入った時に、どんな風に商品が並べられているか、気にしたことはありますか?
例えば、「圧縮陳列」という並べ方があります。
これは、ディスカウント業界の雄、ドン・キホーテの陳列です。天井まで段ボールが積み上げられ、通路も商品と段ボールだらけです。お客さんは手書きのPOPを頼りに商品を探します。
もともとは狭い店舗で売るための苦肉の策でしたが、これがお客さんにうけ、ドン・キホーテでは圧縮陳列という名前をつけて各店舗で展開しています。
入学式などイベントが近づくと、マネキンに服を着せ鞄やいろいろなアイテムを配置してイベントの雰囲気を醸し出します。商品のイメージアップとなり、お客さんに同じ服や鞄が欲しいと思わせます。これを「コーディネート陳列」といいます。
たかが陳列、されど陳列。陳列のやり方で売上は大きく変わります。
この陳列に関する知識も、販売業界随一の公的資格「販売士3級」で学ぶことができます。販売士3級の問題をちょっと見てみましょう。
目次
ゴンドラ陳列のゴンドラってベニスのゴンドラのこと?
例題:陳列について述べた文章で、当てはまる陳列法を〔 〕の語群から選びなさい。
・カゴやバケツに商品を投げ込み、安さを訴える 〔ゴンドラ陳列、ジャンブル陳列〕
・商品を掛けるバーのついた什器を活用して陳列する 〔フック陳列、カットケース陳列〕
・商品の輸送に使われた梱包をそのまま什器として陳列する 〔カットケース陳列、ゴンドラ陳列〕
いかがでしたか。
解答は順番に、ジャンブル陳列、フック陳列、カットケース陳列となります。
スーパーでよく、特売品をバケツやカゴに無造作に投げ込んだ状態で売っていますが、見ると“お得”“安い”と感じませんか。これが「ジャンブル陳列」です。
ジャンブルとは“ごちゃ混ぜ”という意味です。ごちゃ混ぜに入っていると手間をかけてないことがわかり、安いイメージを出せます。
新幹線のホームのKIOSKでビールを買おうと思うと、近くの絶妙な位置におつまみがフックにかかっています。お酒好きの心理を考えたうまいやり方です。ついついお酒と一緒におつまみを買ってしまいます。この「フック陳列」は、スマホケースの陳列でもよく使われています。
「カットケース陳列」とは、積み上がった段ボール箱の上だけを切ってそのまま陳列するやり方です。上の箱の商品がなくなれば、すぐ下の箱をカットします。ディスカウントストアなどでお菓子をよくこの形で売っています。
カットケース陳列|ディスプレイの基本知識3(オンスタ!資格動画)
例題の選択肢にある「ゴンドラ陳列」のゴンドラとは、ベニスのゴンドラ(船)のことではなく、棚のことです。棚(ゴンドラ)に並べて陳列する、最もオーソドックスな陳列方法です。
ゴンドラ陳列|ディスプレイの基本知識1(オンスタ!資格動画)
特売品などは陳列棚の両端(エンドと呼ぶ)に積み上げます。これが「エンド陳列」です。
ジャンブル陳列やエンド陳列には特売品があるはずだ!と期待してしまいますよね。こうして消費者はまんまとスーパー側の思惑に引っかかることになります。
販売士3級のメリットはお店の売上が上がること
前回の記事で、販売士とは“販売業界でオールマイティに対応できる公的資格である”というお話をしました。 そんな販売士3級取得のメリットはまず、転職に有利なことです。
販売士3級の知識は、小売・流通業だけでなく、消費者を相手とする卸売業や製造業・サービス業においても必須です。そのため幅広い転職先が考えられます。
すでに販売業についている方が販売士3級を学ぶメリットももちろんあります。それは、お店の売上を上げられることです。
先ほど、陳列の知識を使って消費者の購買意欲をかきたてられるというお話をしましたが、例えば導線設計についても同様です。
スーパーに入ると入口近くに野菜売場があることが多いですが、そこから外周に沿って、精肉売場、鮮魚売場と続きます。
日用品やお菓子を買おうと思うと外周からはずれて内側に入る必要があります。どこのスーパーでも、同じ人の流れになります。
皆さん、「なんで?」と思いませんか?
スーパーが混む時間帯は夕方、利用者は圧倒的に女性です。スーパーに入って、まず考えるのが夕食のメニュー。
“そういえば冷蔵庫に白菜があったから、今日は白菜の水炊きにしようかしら”と思えば、野菜売場で春菊、しいたけ、えのきを買うことになります。
野菜が決まれば次は精肉売場です。水炊きなので鳥を買います。魚は今日はいらないのでパスします。
こうやってお客さんはだんだんとスーパーの奥へと、知らない間にいざなわれていくのです。
スーパーはダンジョン(迷路)。お客さんを奥に引き込んで勝負!
スーパーに来店するお客さんは、精肉売場、鮮魚売場のどちらかで買い物をすることが多いです。
もし入口近くに野菜、精肉、鮮魚を並べたら入口だけで買い物が終わって、すぐに帰ってしまいます。
お客さんを奥まで誘導するために精肉売場、鮮魚売場は店の奥に配置します。
お客さんを奥まで連れ込んでしまえば、エンド陳列やジャンブル陳列などを活用して、“そうそう子供のお菓子を買わなきゃ”“お父さんのビールなくなってたね”と思い出して、ついで買いをしてもらえます。
どうです、まるでダンジョン(迷路)でしょう。知らず知らずの間にスーパーの戦略に引っかかって移動し買い物をしてしまう、これが導線設計です。しかもワンウェイコントロール(一方向に流れる)になっています。
スーパーだけでなく小さなお店でも導線設計は重要です。
販売士3級を勉強するメリットはお店の売上を上げることといいましたが、導線設計などの理論を知らなければ、行き当たりばったりのお店運営になってしまいます。
なお、共働きが増えた現在は、導線設計そのものを考え直す必要が出てきています。
買い物時間を短くしたいという欲求が増えてきているのに、従来のままだと“買い物に時間がかかる、あのスーパーへ行くのはいや”とお客さんを逃してしまいます。
ですが導線設計そのものを知っていなければ、何が悪いのか把握もできず見直しもできませんね。
このように販売士3級を勉強するメリットはたくさんあるのです。
販売士3級でストアオペレーションの知識をつけてお店の売上UP!
今回は販売士3級の学習分野「ストアオペレーション」からの例題を挙げ、学習内容のひとつである「陳列」「導線設計」についてお話ししました。
導線設計の1つにマグネットという仕掛けがあります。
マグネットとは文字通り、磁石のように顧客を引きつける売場のことで、お客さんが回遊しやすいように設置します。
コンビニでいえば弁当やオニギリを販売する一角がマグネットになっています。
お客さんに店内をうまく回遊してもらうと売上が上がります。
お店に行った時に、“なんで私はこんなふうに歩いているのか”と、少し意識してみてください。今まで気にしなかったダンジョン(迷路)のいろいろなアイテムが見えてきてワクワクしますよ。
次回は販売士になるための流れなどをご紹介したいと思います。
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