2020年12月から可能となった、日商簿記検定2級・3級のCBT試験。
受験日が多く、日程の融通が利くなど、メリットの多い試験方法ですが、まだ始まったばかりでわからないことも多いからと、受験に一歩踏み込めない方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、日商簿記のCBT方式試験を受験した筆者が、受験の特徴、そしてCBT方式試験ならではの対策ポイントをお教えします。試験について、事前によく知っておきたい人はぜひ読んでみてください。
目次
日商簿記のCBT方式とは
CBT(Computer Based Testing)方式とは、インターネットを用いた受験方式のこと。日商簿記検定においては、新型コロナウイルスなどの感染症や、近年多く発生するようになった自然災害等の影響に配慮し、受験機会を確保するというのが目的で始まったようです。
従来の紙の試験(統一試験)と同じ合格の扱いとなることはもちろん、受験機会が増えるなどの観点で多くのメリットがあり、注目されています。
なお、インターネットでの試験ではありますが、自宅のパソコンから受験できるわけではなく、試験はテストセンターで実施されます。
日商簿記のCBT方式試験と統一試験では何が違うの?
日商簿記のCBT方式試験と従来の統一試験には、具体的にどういった違いがあるのでしょうか。まとめた表がこちらです。
統一試験 | CBT方式の試験 | |
---|---|---|
2級:4720円 3級:2850円 |
受験料 (※1) |
2級:5270円 (手数料550円含む) 3級:3400円 (手数料550円含む) |
年に3回だけ | 受験日 | 受験できる日数が多い |
不可 | 予約変更 | 受験日3日前までなら可能 |
2級、3級ともに120分(※2) | 試験時間 | 2級:90分 3級:60分 |
すべて筆記での解答 | 解答方式 | 仕訳はプルダウンで解答できる |
受験日が同じ人は、同じ問題を解く | 問題 | 人によって違う |
(※1)料金はすべて税込表示となります
(※2)2021年6月の試験からは統一試験もネット試験と同じ出題形式・試験時間となるため、従来の制限時間120分の試験は2021年2月試験をもって終了となります
受験料の違い
まず、受験料が異なります。厳密に言えば、受験料は同じなのですが、CBT方式では手数料550円が加算されるため、実際は異なる金額となります(金額の差は、手数料分のみです)。
受験日の違い
次に受験日です。統一試験では1年に3回しか受けられませんでしたが、CBT方式では受験できる日数が多くなっています。
運営しているテストセンターにもよりますが、毎日受験できるテストセンターもあるため、自分の学習状況にあった受験が可能です。
また、CBT方式では試験日の予定変更も可能です。学習がうまく行かなかったときは、3日前までなら変更できるので活用しましょう。
試験時間の違い
一方で、試験時間は従来の120分から、CBT方式では2級は90分、3級は60分と短くなっています。
これについては、問題に出てくる仕訳の解答方式が、入力ではなくプルダウンであるため、時間短縮できるから大丈夫かな…と考える方もいると思います。
しかし、問題数もボリュームがあるため、時間的なプレッシャーは相当あると筆者は考えます。
このように試験方式だけでなく、時間や金額も違うので、どちらにするか悩ましいところだと思いますが、CBT方式の試験日程を変更できる点は、勉強が思うように進まなかったときの安心材料になるのではないでしょうか。
日商簿記CBT方式試験の受験までの流れ
続いて、CBT方式試験の受験に至るまでの流れを解説します。従来の受験方式とは異なることも多いので、しっかり確認しておきましょう。
公式サイトにアカウント登録する
CBT方式での受験には、まずは日商簿記検定のCBT試験ポータルサイトにアカウント登録をする必要があります。
ページにある「新規登録」の欄をクリックし、メールのアドレス等の登録を済ませてから、申込みを行いましょう。
受験の申込みをする
ログインを終えたら、自分が受験したい日時・会場を選択し、申込みを行います。
受験会場については、テストセンター空席照会のページで確認可能です。
申込みの際の支払方法は、クレジットカードやコンビニ決済等から選べます。
申込みが終わると、登録したメールアドレスに確認メールが届くので、内容に間違いがないかなど、しっかり確認しておきましょう。
受験票などの発行はなく、情報についてはすべてメールやウェブ上での確認になるので、このメールはきちんと保存しておいてください。
会場で受験する
受験前日に、リマインドのメールが届くので、確認しておきます。
受験当日は指定のテストセンターに行き、手続きを済ませましょう。
手続きが終わると、受験するPCの席まで案内されます。PCに受験番号を入力すると、試験開始です。
受験当日に、気をつけてほしい点は以下のとおりです。
- 身分証を忘れない
- 遅刻しない
- 持ち物は電卓のみ
手続きの際には本人確認が必要となるので、免許証等の身分証を忘れないようにしましょう。
また会場は、受験日時の30分~5分前に入場可能となります。遅刻すると受験できないので、時間に余裕を持って入場するのがおすすめです。
受験中の持ち物は電卓のみとなります。筆記用具はテストセンターの方が貸してくれます。
合格発表
制限時間になる、もしくは「受験を終える」をクリックした時点で、試験が終了します。
その後自動的に採点がなされ、すぐに「合格」「不合格」がわかります。
合格した場合は、テストセンターのスタッフの方に報告し、成績と合格が記された紙を受け取って退出しましょう。
受け取った紙にはQRコードが記載されているので、スマホで読み取ると画面に合格証書が映し出されます。
筆者が考える日商簿記CBT方式試験に向けた対策とは?
では、日商簿記CBT方式試験に向けて、どういった対策が必要なのでしょうか。
合格者の筆者が行った対策は、以下の2つです。
① 仕訳のスピードを上げる
② CBT方式に慣れる
それぞれを詳しく解説します。
対策① 仕訳のスピードを早くするべし!
日商簿記2級、3級の問題と配点は以下のとおりです。
2級の問題 | ||
---|---|---|
第1問 | 仕訳問題 | 20点 |
第2問 | 個別論点(株主資本等変動計算書、連結精算表など) | 20点 |
第3問 | 個別財務諸表(損益計算書の作成など) | 20点 |
第4問 | 1 工業簿記の仕訳問題 2 個別原価計算~標準原価計算 |
28点 |
第5問 | 標準原価計算、直接原価計算など | 12点 |
3級の問題 | ||
---|---|---|
第1問 | 仕訳問題 | 45点 |
第2問 | 個別問題(勘定記入、補助簿など) | 20点 |
第3問 | 決算問題(財務諸表作成、精算表など) | 35点 |
上記、問題の配分を見てもわかる通り、簿記の最も重要な要素である仕訳。
2級では仕訳だけを問う問題が30点程度、3級では仕訳問題が45点を占めるなど、合格を左右する大きな要因となっています。
この仕訳を正確に、そしていかに素早くできるかが、試験の鍵を握ります。
仕訳を攻略するための対策には、アプリやサイトを利用するのがおすすめです。
仕訳のパターンを総ざらいでき、圧倒的な量をこなすことで、パターンが自分の頭にも体にも染み付くので、スピードアップに繋がります。
対策② CBT方式の試験に慣れるべし!
CBT方式の最も大きな悩みは、過去問がないことではないでしょうか。
その問題を解決してくれるのが、「サンプル問題」です。
サンプル問題とは商工会議所や各大手予備校がサイトで公開している、CBT方式の予想問題です。無料で解くことができるため、CBT方式に慣れておくにはうってつけです。
筆者も実際に、試験を受ける前にサンプル問題を解いてみたのですが、時間を本番同様に解いてみると、本当に時間がないことがわかりました。この早さを知らないまま本番を迎えていたと考えると、ゾッとします。
サンプル問題を試験対策に用いれば、CBT方式の試験に慣れることができ、レベル感や時間感覚を知ることができます。ぜひ本番同様の環境で解いてみてください。
商工会議所 サンプル問題のダウンロードTAC出版「ネット試験」模擬問題サービス
体験した筆者の感想
様々な対策をしてCBT方式の試験に臨み、合格を勝ち取った筆者の所感をここでご紹介します。
統一試験より、合格しやすいかも?
CBT方式では、仕訳の解答方式がプルダウン式です。ある程度選択肢が狭められた状態で解答することになるため、正答率は統一試験より高くなることが考えられます。
実際に筆者も、問題の初見ではどの仕訳かわからなくても、プルダウンで表示したときにわかった問題がいくつかありました。
このことからも、CBT方式の合格率は、統一試験よりも高いのではないかと考えられます。
適宜、見直しが必要
前述のとおり、試験時間は思っているより本当に時間が足りません。
そのうえ簿記3級では、最後に財務諸表の作成や精算書など、仕訳を正確に行ったうえで解かなければならない問題が必ず出題されます。
時間内ですべての問題を解ききるには、高速で正確な処理が求められます。
1つ1つの問題について、仕訳でミスがないか即座に確認しながら解くことが大切だと感じました。
本当に知識が身に付いたのか、少し不安…
先ほどもお伝えしたように、CBT方式は、仕訳の解答方式がプルダウン式のため、多少知識があいまいでも解答できてしまうという側面があります。
これは言い換えると、本当に知識がしっかり身に付いたのか、若干怪しい部分があるということです。
しかし、試験合格後もしっかりと実務で簿記を実践していれば、この問題は解決すると思います。
合格したからもういいや、ではなく、毎日の実務で勉強したことを活かしていけば、CBT方式の問題は皆無と言えるのではないでしょうか。
まとめ:日商簿記試験にCBT方式で合格するために
2級、3級、どちらを受けるにしても、仕訳のスピード、CBT方式への慣れが日商簿記試験合格への鍵を握ります。
仕訳のアプリ・サイトやサンプル問題など、様々なツールを用いることで、スピード、慣れへの対策になります。どちらもしっかりと数をこなして、CBT方式の試験を攻略し、合格を勝ち取ってくださいね。
日商簿記3級講座参考URL:
https://cbt-s.com/examinee/examination/jcci.html
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