気象予報士の筆者が、知っておきたい天気予報の見方を指南するこの連載。第1回では、天気予報の正しい見方のポイントを紹介しました。
天気予報の見方がわかるようになると、気になるのは、テレビの天気予報で必ず出てくる天気図ではないでしょうか。
しかし、低気圧があると雨、高気圧があると晴れなど、ある程度のことはわかっていても、そこから自分自身が住む地域の天気を考えるのは難しいですよね。
そこで連載第2回の今回は、天気予報をより理解するための「天気図」の見方を解説していきます。
気象予報士がなぜ天気予報の初めに天気図を解説するのか、そこから今日の天気を知るためには…?天気図の特徴や注目ポイントをわかりやすく教えます。
季節ごとの天気図の見方を解説!
日本の気候が春夏秋冬に分かれるのは、もちろんご存知ですよね。実は、この季節ごとに天気図の特徴があるんです。
それぞれを解説…の前に、天気図をお伝えするうえで欠かせない「低気圧」と「高気圧」について、理解を深めていきましょう。
低気圧と高気圧とは?
気圧とは、風を上から押す力のことです。
この力が弱い(=低気圧が近づく)と、雲が発生しやすく、雨や雪の日が多くなります。
一方で、風を上から押す力が強い(=高気圧が近づく)と、雲が発生しにくくなり、晴れることが多いです。
これを踏まえて、季節ごとの特徴を見ていきましょう。
春と秋は天気の移り変わりが早い
春や秋は、高気圧と低気圧が交互に通過するケースが多いので、天気変化や気温変化が大きい季節になるのが特徴です。
この天気図も、東に高気圧(H)、日本付近に低気圧(L)、大陸に高気圧(H)と交互に位置しています。
ただ、気をつけたいのが秋の台風と秋雨前線です。梅雨時は全国的に大雨に見舞われることがありますが、実は関東においては、秋が最も雨が多いんです。
このように、春や秋は天気や気温の変化が大きく、関東の方は雨が多いという見方の知識をもとに天気予報に耳を傾けてもらえると、より天気図を実用的に活かせると思います。
夏は高気圧の張り出し方に注意
夏は、前半は梅雨前線で雨が多く、後半は太平洋高気圧で晴れる日が多くなるという特徴があります。その特徴を表しているのが、以下の2つの天気図です。
上は、典型的な梅雨前線が日本にかかっている天気図です。
そして下は、太平洋高気圧が大きく広がった典型的な晴れの日の天気図となります。
この梅雨や太平洋高気圧は、位置や張り出し方で大きく天気が変わり、線状降水帯や記録的猛暑など異常気象が起こることもあります。
夏は、このような天気図の微妙な変化を捉えないといけないので、予測が難しい季節といえます。
天気予報で、気象予報士が「予測が難しい」という発言をするときは、急な天気の変化に困らない備えをしておくことが大切です。
冬の荒れた天気は2パターンあり
最後は冬です。冬は、西高東低の気圧配置、南岸低気圧の2種類が大きな影響を与えます。
上の図のように西に高気圧(H)、東に低気圧(L)がある場合は、日本付近に寒気が流れ込み、特に日本海側では雪が降りやすくなります。
一方で、日本の南を低気圧が通過する南岸低気圧は、首都圏で雪を降らせる典型的なパターンです。
どちらも、寒気の強さや細かい風向きで雪の降る場所や量が変わるので厄介ですが、冬の天気予報を見るときは、この2つの気圧配置の位置と解説に注意を向けて、しっかり備えるようにしましょう。
天気図解説で使われる「寒気」や「湿った空気」とは?
気象予報士が天気図を解説するとき、よく「寒気」、「湿った空気」、「不安定」という言葉を使います。
しかしテレビの天気図には書かれていないので、わかりにくいのではないでしょうか。
実は、皆さんがテレビで見ている天気図は「地上天気図」で、気象予報士が使うのは以下のような「高層天気図」というものです。
皆さんが見る天気図には、高気圧や低気圧、等圧線が書かれています。
一方、気象予報士が見る高層天気図には、気温や風向風速、等高度線など、非常に多くの情報が書かれています。
気象予報士は、実際に皆さんが思っているより、より多くの要素から寒気や暖気を判断していることが、おわかりいただけたのではないでしょうか。
「寒気」や「湿った空気」というのは、この高層天気図から気象予報士が確認し、不安定というのも天気図などから判断しています。不安定というのは、積乱雲が発達しやすいということです。
空気は、上の方が冷たく下が暖かいと、下から上へ流れていきます。冬の露天風呂の湯気を想像するとわかりやすいと思います。
そして、上に行った暖かく湿った空気が冷やされ、雲となり、雨を降らせるのです。この、下から上へ空気が流れ雨雲が発達する状態のことを「大気の状態が不安定」といいます。
この「不安定」になるかどうかは、気象予報士が高層天気図から判断してお伝えているのです。
地上天気図だけでは見えない部分は、天気予報士がしっかり解説内で話しているので、聞き逃さないようにしてくださいね。
台風が接近!天気図で見るべきポイントは?
天気図で最も「派手に天気が悪くなるな…」とわかりやすいのは、台風が来たときではないでしょうか。
台風が天気図上に出てくると、進む方向や、私たちの住む所に今後影響があるのかどうかは、気になりますよね。
台風情報の際、天気図で目につくのが「予報円」です。皆さんも目にしたことがあると思います。
この予報円は、「この円の中に台風が入る確率が7割」という意味です。正確には円のうちのどこにいくのか、どれくらい発達するのかは表していないので、その点は気象予報士の言葉や台風情報をしっかり見聞きする必要があります。
また、予報円は「どの進路になるかわからない」というときは円が広くなりますが、「進路は決まっているんだけど、速さがわからない」というときも円が広がる特徴があります。
予報円がなぜ大きいのか、台風の特徴はなんなのかも気象予報士が伝えてくれているので、しっかり解説に耳を傾けましょう。
他にも、自身が関連する地域が台風の進路の右側なのか、左側なのか、という点も注目ポイント。
台風の進路の右側は、台風自身の風向きと進む方向が一緒なので、風が強まりやすいのです。
天気図で台風の強風域や暴風域を見ると、右側の方が広くなっていることも、右側に影響が強く出ることを表しています。
自分の住む地域が台風のどちら側に位置しているかで、風向きや雨の強さなども判断できるので、天気図を見る際はしっかりチェックしてみてください。
ただ、台風の左側が安全というわけではないので、注意してくださいね。
今回は、天気図の見方や、気象予報士が天気図の解説のときによく使う言葉を紹介しました。
実は、テレビで見ている天気図はとてもわかりやすいもので、実際には気象予報士は、何十枚もの様々な種類の天気図を見て、今後の天気を考えています。
天気図や台風の解説が深ければ深いほど、天気図をよく分析している予報士といえるかもしれませんね。そうなると、いろんな番組の気象予報士の話を聞き比べしてみるのも、面白いかもしれません。
さて、次回は知っているようで知らない天気用語を詳しく紹介していきます。次回の記事を読めば、天気予報をより実用的に活用できるはずですよ。お楽しみに!
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