連載「未納は損?!年金を社労士が解説!」、最終回の今回は厚生年金についてわかりやすく解説します。
さて、会社員の皆さん。給与明細を見てください。厚生年金保険料が引かれていませんか?
引かれているということは、つまり厚生年金に加入しているということです。
自分が加入しているもので損をすることのないように、この機会にしっかり理解しておきましょう。
会社員は国民年金保険料を払わなくていいの?
給与明細で厚生年金保険料が引かれている方は、自分が厚生年金に加入しているということがわかりましたね。
「ということは、国民年金には加入していないってこと?」という疑問が湧いてきませんか?
答えはNOです。
社労士が年金について説明するときには「2階建て」という言葉をよく使います。
つまり年金とは、1階部分が国民年金で、国民年金の上に乗っている2階部分が厚生年金という、2階建ての作りになっているのです。
厚生年金の被保険者であるということは、1階の国民年金にプラスして2階の厚生年金にも加入しているということですので、1階である国民年金にも当然加入していることになります。
つまり給与から引かれている厚生年金保険料には、国民年金の分もあらかじめ含まれているのです。
しかも、自営業者は年金保険料全額を自分で払わなければならないのに対して、会社員の場合は会社が半分払ってくれます。厚生年金は実はとってもおいしい制度なのです。
会社員だと将来の年金はどのくらいもらえるの?
年金は2階建ての作りになっていて、厚生年金の被保険者は1階(国民年金)と2階(厚生年金)の両方に入っていることはわかりましたね。
そしてやっぱり気になるのが、「老後にいくらもらえるの?」ということですよね。
前回の記事では、国民年金の保険料は定額であることをお話ししました。
厚生年金の場合は、給料の額によって納める保険料が変わってきます。
納める保険料が違うということは「保険料を多く納めれば納めるほど、受け取れる年金も多くなる」ということです。
従っていくらもらえるかは、人それぞれということになってしまいます。
社労士には、もうすぐ年金を受け取る人から「いくらもらえるの?」という相談が寄せられます。
計算が複雑で年金機構に確認しなければならないこともしばしばですが、データによると平均して約16万円/月、受け取ることができます。
自営業の国民年金だけの人であれば約65,000円/月ですので、倍以上違うことがわかりますね。
同じ会社で定年まで働かずに途中で退職する人もいるでしょうが、厚生年金に1ヵ月でも入ればその分だけ国民年金に上乗せされます。厚生年金に加入している会社員の方が自営業者よりも得しているといえるでしょう。
4月~6月に残業すると保険料が高くなり損するって本当?
入社してしばらくすると先輩から「4月から6月はあんまり残業しない方がいいぞ。保険料多く取られるから」と言われるかもしれません。
給与から引かれている厚生年金保険料の額がどのように決まっているのかというと、4月から6月までの3ヵ月間に受け取る給料の平均の額をその人の1年間の月給とみなし、保険料を決めています。
つまり、普段はあまり残業をやらないのに4月から6月にたくさん残業をすると保険料は高くなってしまい、普段はたくさん残業をするけど4月から6月の残業を少なくすると保険料も低くなります。
(余談ですが、毎年7月初め頃に全国の会社で一斉に保険料の届けをしなければいけないので、この時期は社労士の繁忙期だったりします)
したがって先輩の言うことは確かにその通りなのですが、1つ覚えておいてほしいことがあります。
それは納めた保険料の額に応じて、将来受け取る年金の額が決まるということです。
具体的にいうと、残業を抑えれば引かれる保険料は少なくなりますが、その代わりに将来受け取る年金も少なくなってしまいます。
また、病気などで休職をすると傷病手当金が支給されるのですが、傷病手当金の額も納めている保険料の額によって決まりますので、いざというとき思っていたより少ない額しかもらえないかもしれません。
つまり、保険料を多く納めることが必ずしも損であるとは言い切れず、保険料を多く納めた方が有利になることもあるのですね。
3回に渡り、年金についてわかりやすく解説しました。
難しいと感じた方もいるかもしれませんが、この連載でご説明したところは知っておいた方が損をしなくて済むでしょう。
年金はしょっちゅう制度が変わるので、社労士が書いた本やブログを読むなどすると、より年金が身近になると思いますよ。
また社労士の勉強をすれば、難しい年金のしくみもバッチリ理解できるようになります。興味を持った方はチャレンジしてみてくださいね。
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