連載「国家資格『運行管理者(貨物)』とは?」、これまでは、運行管理者(貨物)の資格の概要やメリットなどについてお話ししてきました。では、運行管理者の働き方は一体どのようなものなのでしょうか。
連載3回目の今回は、運行管理者が期待される役割と日々の働き方について、実際に運行管理者(貨物)の資格を持つ筆者の経験を踏まえながらご紹介します。
運行管理者(貨物)に期待される役割とは?
運行管理者(貨物)の役割をまとめると、ドライバーが健康で安全に仕事に取り組めるように労働環境を管理することになるかと思います。
また、それを通して、重大な事故を事前に防ぐという役割があるため、地域の人々の安全も担っているといえるでしょう。
自動車運送業では、一般車や歩行者のいる公共の道路を使って業務を行います。そんな中で、緊急時に最終的な安全確保の措置を委ねられるのは、ドライバー1人1人となります。
判断を誤ると、一般人を巻き込むような重大な事故に繋がる可能性があるため、現場で働くドライバー達は、いつも健康な心と身体で、高い安全意識を持っておかなければいけません。
一方で、昨今の労働力不足や価格競争による労務費の削減などの煽りを受け、一部には過酷な労働状況で安全管理のままならない職場があるのが現実です。
このような現在の自動車運送業者の状況下で、事故なく安全にドライバーが働けるよう指揮命令と管理を取り仕切るのが、運行管理者に期待される役割といえます。
運行管理者(貨物)の日々の働き方
運行管理者に期待される役割を理解するには、日々の働き方を具体的に見て行くのがよいでしょう。
実際はもっと細かいですが、主な仕事内容を挙げるならば以下、5点となります。
① ドライバーの点呼と健康状態のチェック
② 当日の道路状況の確認とドライバーへの情報共有
③ ドライバーの勤務時間・休憩時間の管理
④ ドライバーの指導
⑤ 事業用自動車の管理
基本的には、事業所に常駐して内勤業務を行うイメージです。
では、1つずつ詳しく見ていきます。
① ドライバーの点呼と健康状態のチェック
毎日必ずある仕事の1つが、始業時間に行うドライバーの点呼と健康状態のチェックです。その際に酒気を帯びていないか、アルコールチェッカーでの計測も行い、記録に残します。
私の経験の中では、故意に仕事前にお酒を飲んで来るような方はいませんが、前日朝方まで飲んでお酒が完全に抜けていない状態で出勤してきたケースは何度かありました。その場合は、前日の飲酒状況を詳しくヒアリングしたうえで、アルコールが抜けるまでは事業所内で他の業務を行ってもらったり、飲酒に関わる研修を実施したりします。
その他に注意して見ているのは、「睡眠が取れているか」「顔色は悪くないか」など、健康状態に異常がないかです。
前日の勤務時間も確認しながら、1人1人の健康状態をしっかり確認しますが、体調不良を言い出せず無理をしてしまう方や、見た目は健康に見えても精神的に疲れていることに自覚が無い方もいます。
そのような方々に気が付けるよう、出退勤の時間や、ドライバーが事業所へ戻ってきたタイミングには、積極的にコミュニケーションを取り、お互いが話しやすい環境づくりを心がけています。
② 当日の道路状況の確認とドライバーへの情報共有
事故なく安全に運送を行うためには、ドライバーの状態だけでなく、運送ルートの状況の確認も必須です。毎日点呼の前にはその日の道路状況を確認し、ドライバーへ情報共有を行います。
例えば、いつも通る道で工事があり終日渋滞の予測が出ている場合には、代替ルートを提案する、といった内容です。
私の場合、ルート変更に関しては実際に走っているドライバーの方が詳しい場合があるので、互いに意見を交わしながら最善のルートを決定することが多く、いつも助けられています。
③ ドライバーの勤務時間・休憩時間の管理
ドライバーの勤務時間や休憩時間の管理も、運行管理者の仕事の1つです。具体的には、労働法に基づいた勤務時間と休憩時間を遵守できるよう、各ドライバーの運行スケジュールの作成を行います。
安全運転を行うためには、ドライバーが十分な休憩や睡眠を取れているかは必ず管理しなければなりません。これを怠ると、緊急時の判断が遅れてしまったり、居眠り運転に繋がったりする可能性があり、大変危険です。また、当日スケジュール通りに運行しているかも随時確認が必要です。
④ ドライバーの指導
安全で確実に業務を遂行してもらうためには、ドライバーへの日々の指導も欠かせません。
ドライバーは実際にお客様と接する機会も多いので、安全運転に関わることだけでなく、社会人としてのマナーなどの研修も実施します。
また、定期的に安全運転に関わるトレーニングも実施し、法や条例の改正への対応や、ドライバーの安全意識の向上や維持を図っています。
⑤ 事業用自動車の管理
運行管理者は、ドライバーの管理だけでなく、車両の管理も仕事の1つです。
メンテナンスや修理まではさすがにできませんが、車両の台数や状態については担当者と連携して把握しておかなければなりません。
この情報は毎日記録を取り、正しく管理されているという情報を残します。また、必要に応じて国の専門機関に事業用車両の届けや報告を出すという事務作業も行います。
運行管理者(貨物)の働き方|筆者の場合
運行管理者の仕事内容がわかったところで、私の1日の大まかな流れをご紹介します。
筆者:ルート配送専門の運行管理
時間 | 作業内容 |
---|---|
6:30 | 出社 当日の配送量とルートの確認(道路状況のチェック) |
7:30~8:00 | ドライバー点呼と配送ルート確認 |
8:00~11:00 | ドライバーの出発を確認し、事務作業へ移る |
11:00~11:30 | 各ドライバーの運行状況確認 |
11:30~12:30 | 昼休憩 |
12:30~14:00 | 午前中の残りの事務作業 |
14:00以降 | 順次ドライバーが戻ってくるので、伝票の整理などを手伝う 翌日の配送量や計画の確認 |
15:30 | 退勤 |
午前中の事務作業では、運行管理に関わる書類の作成やドライバーの勤務表作成を行います。私は2番手の立場ですので、上司の指示に基づき事務作業を行うことが多いです。
点呼時に体調不良者が出た場合は、午前中の早い時間帯はその対応を行うので、事務作業は午後にずれ込みます。
また、スケジュール上は14:00頃から順次ドライバー達が帰社してくるのですが、道路状況等により到着がずれ込むことはよくあるので、その分退勤時間は遅くなります。
ごく稀ですが、配送時に車両トラブルや配送物の不具合等が発生してしまった場合は、配送先に出向いたりして状況確認を行うこともあり、なかなか定時で帰れることは少ないです。
しかし、1日の平均残業時間は1~2時間程度と、そこまで多くはありません。
私が働く事業所はルート配送専門ですので、勤務時間は6:30~15:30の固定です。しかし、中には24時間稼働で夜勤がある所や、土日祝完全休暇の所など、同じ運行管理者という職種でも会社によってその勤務形態は大きく変わります。
特に24時間稼働で夜勤のある会社は、稼働時間が長い分多くの運行管理者が必要なので、人手不足に陥っていますが、その分、私のようなルート配送専門の会社に比べて給与は高い傾向にあるようです。
資格を取得して働く際には、紹介したように様々な事業所や働き方がありますので、ぜひ参考にしてみてください。
まとめ:運行管理者(貨物)は地域の安全を担う重要な役割
今回は、運行管理者(貨物)の働き方と、期待される役割についてご紹介しました。
運行管理者の働き方は、基本的に事業所内で完結することが多いですが、業務を正しく遂行する事で、自社のドライバーだけでなく地域の方々の安全を守るという重要な役割を担っています。
この役割の責任はとても大きく、始めた頃はその重さに押しつぶされそうにもなりました。しかし、ドライバー達とコミュニケーションを取りながら運行管理者の仕事を遂行していく中で、責任の大きさの分やりがいのある仕事だと今は実感しています。
興味が出た方は、ぜひ運行管理者(貨物)を取得してみてくださいね。
次回は、運行管理者(貨物)のやりがいや楽しさについて、自身の経験を踏まえながらご紹介します。お楽しみに!
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