運行管理者(貨物)の資格取得を目指している方の中には、仕事で活かしたいほか、就職や転職で活かしたい方もいるでしょう。
また現状では、運行管理者(貨物)は就職や転職に有利な資格ですが、時代の流れに沿って変わる今後のニーズも気になるところです。
連載「国家資格『運行管理者(貨物)』とは?」、5回目の今回は、運行管理者(貨物)の就職・転職の状況や、今後のニーズについて、お話ししていきます。
運行管理者(貨物)取得後の就職・転職状況について
仕事での昇進や就職・転職を有利に進めるために資格取得を目指す方は少なくないでしょう。まずは、運行管理者(貨物)の資格取得後の就職・転職状況についてお話しします。
慢性的な人手不足に陥っている運行管理者(貨物)
国土交通省がまとめたデータによると、平成30年に発表された運行管理者の総数は約20万人で、貨物に限ると約16万人となります。
参照:国土交通省 数字で見る自動車2020 運行管理者数の推移 R1年度末現在一方で、平成30年の国内の事業所の数は6万を超えていて、車両数に応じて計算してみると、少なく見積っても約8万人の運行管理者が必須となります。
参照:国土交通省 自動車関係統計 貨物自動車運送事業者数(規模別)数字だけで見ると、約8万人必要な有資格者に対して、約16万人の有資格者となると、十分足りているように思えます。
しかし、データにある有資格者全員が、現役の運行管理者として働いているとは考えにくいですよね。
また、法律上は1名で問題ない事業所でも、年中無休や24時間で稼働している事業所の場合は、たとえ車両数が少なくても休みを回すために、少なくとも2、3名の資格取得者が必要となります。
私が働く事業所では、必要な運行管理者の数は最低1名ですが、現在私を含めて2名在籍しています。それでも年中無休で稼働しているため、休みが取りづらく、どんなことがあっても絶対に体調を崩せないというプレッシャーがあります。
このような背景から、多くの事業所が最低必要人数+1、2名を雇っている可能性がありますので、有資格者が足りず人手不足となってしまうのです。
数字では見えない、人手不足の現状がわかっていただけたのではないでしょうか。
運行管理者(貨物)、就職・転職でどう活かす?
今お話ししたように、人手不足の状態にある運行管理者(貨物)ですので、就職・転職の際には資格を活かしやすいといえるでしょう。
資格の有無で給与の差があり、選択肢も広がる
まず給与面ですが、運行管理者(貨物)は国家資格ですので、当然資格の無い方と比べると給与は高くなる傾向にあります。
会社にもよるので一概にいくらとはいえませんが、資格を取得していない人と比べると数万円高くなる会社が多いと思います。
参考までに筆者の場合は、資格取得で5,000円、選任者になって5,000円の計1万円が手当として上乗せになりました。その他、資格を取得した年は、年度末の評価で高く付けて頂けたので、基本給の上り幅も前年対比で高かったです。
また、数ある転職サイトを確認すればすぐにわかるのですが、運行管理者の資格があるだけで、就職先・転職先の幅が格段に広がります。
特に中途採用の場合は、有資格者であることを前提に募集している案件も多いです。
運行管理者補助の経験があっても、資格が無ければ履歴書の資格欄には書けません。
運行管理者(貨物)の資格は、就職・転職に有利で、かつ履歴書にも書いてしっかりアピールできます。
資格が無くても基礎講習を受ければ履歴書に書ける?
前段で「運行管理者補助の経験があっても資格が無ければ履歴書の資格欄には書けない」とお話ししましたが、実は運行管理者(貨物)の資格を持っていなくても、履歴書に記入できる方法があります。
当然、持っていない資格名を書くことはできませんが、「運行管理者の基礎講習の修了」については、履歴書内に記載できるのです。
運行管理者の基礎講習とは、運行管理者になるために受ける講習で、受講後は修了書がもらえます。修了者は、補助者として運行管理者と同じ仕事を行えるので、履歴書に記入することも可能です。
ただし、あくまでも資格ではないので、それをどうとらえるかはその企業次第です。もし基礎講習修了済みで、資格取得に向けて勉強中であれば、自己PR欄に「資格取得に向け勉強中」と一言加えておくと、よりアピールできるのではないでしょうか。
転職や就職の準備を進めながら運行管理者(貨物)の資格勉強をしているが、資格はまだ持っていないため履歴書に書けないと諦めていた方も、基礎講習をすでに受講済みであれば、履歴書内でアピールしておきましょう。
そうすれば、現在まだ資格が無くても、今後の資格取得の速度や将来性などを加味して選考を進めてもらえるかもしれません。
今後の運行管理者(貨物)のニーズはどうなる?
現在は慢性的な人手不足の状況にあるため、転職や就職にも有利とされている運行管理者(貨物)の資格ですが、今後のニーズはどのように変化していくのでしょうか。
大きなトピックスとして近年よく耳にするのが、運送業界でのIT化です。
これにより、運行管理者の一部業務もIT化していくといわれています。今から資格取得を目指すものとしては、少しドキッとしてしまう内容ですよね。具体的に見ていきましょう!
職場のIT化で運行管理者が不要になる?!
運行管理者の業務の中でIT化が推進されているのは、毎日の点呼やドライバーの健康管理の部分です。
これは、数年前から国土交通省が補助金を出しながら進めているプロジェクトで、国が定めたIT点呼システムを利用し、点呼・アルコールチェック・血圧/体温測定などを行うというもの。そして、計ったデータが遠隔地にいる運行管理者へ送られるというしくみです。
このシステムを利用すれば、事業所から離れた車庫での点呼も簡単に行えるようになるので、事業所と倉庫間を往復する移動時間の削減や、複数の倉庫の一括管理が可能になります。
これにより、運行管理者が居なくても点呼や健康チェックが可能になるのです。
しかし、このような自動で記録してくれるシステムがあれば、今後運行管理者は必要なくなるのではないかと不安に思いますよね…。
運行管理者数は変更なし!IT化で労働環境の改善に期待も
でも大丈夫!現在の法律上は、IT点呼システムを導入しても運行管理者数は法律によって定められた人数が必須となります。つまり、今と変わらない人数がこれからも必要ということです。
このシステムの導入のねらいは、運行管理者数の削減というよりは、運行管理者の仕事量の軽減といえるでしょう。従って現状は、IT化が進んでも今後すぐに運行管理者のニーズがなくなるとは考えにくいです。安心して取得に励んで良さそうですね!
運行管理者(貨物)は就職・転職で十分活かせる資格
連載5回目の今回は、運行管理者(貨物)の資格を使った就職や転職の状況についてご紹介しました。
運行管理者(貨物)の資格は今後も就職や転職で十分活かせるということ、さらに、これまで拘束時間が長く大変なイメージがあった運行管理者の仕事もが、運送業のIT化により負担が軽減されそうだということもわかりました。
運送業のIT化は、慢性的な人手不足の解消や離職率の低減にも効果を発揮するとされているので、今後は少しずつではありますが、労働環境も改善されていく見通しです。
業界がこのような取り組みをしているのは、今後も働く身にとっては安心材料でもありますね!転職を考えている方も、心おきなく資格取得を目指せるのではないでしょうか。
さて、最終回の次回は、運行管理者(貨物)とあわせて取得したい資格や、ダブルライセンスのメリットなどについてご紹介します。最後までお付き合いいただけると嬉しいです。
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