会社には「人」「物」「お金」が必要とされます。昔から多くの経営者が、この考え方を大切にしてきました。
そして簿記とは、会社が行った取引を「お金」という評価単位でとらえ、一定のルールに従って帳簿に記入する技術のことをいいます。
初めて簿記を学ぶ方は、会社のお金がどのように流れていくのかを知っておくことが大切です。
連載「初めて学ぶ簿記の世界」、前回は簿記の歴史と、「簿記上の取引」とは簿記の5要素(資産、負債、純資産、収益、費用)に変動をもたらすものである、というお話をしました。
今回は「資産」「負債」「純資産」「収益」「費用」とはどのようなものかを説明し、これをふまえて会社のお金の流れを解説します。
会社はお金をどのように調達するのか
「さぁ、会社を作るぞ」と思ったとしても、企業を運営していくためのお金がなければ、なにも始めることができません。
そこで自己資金がある場合は別として、会社経営者はお金集めに奔走することになります。
お金を集める方法として、初めて簿記を学ぶ皆さんはどのようなことを思い浮かべるでしょうか。
銀行などからお金を借りるかもしれません。もしくは会社を設立して運営していくためのお金を出資してくれる人を探すかもしれません。
このようにお金を借り、出資を求めることを「資金調達」といいます。
また、会社はこうして調達した資金を元手として事業を始め、その元手で商品や備品を購入します。これを「資金運用」といいます。
資金の運用と調達に関係する「資産、負債、純資産」
「資産」とは、会社が保有している経済的な価値を持つものであり、資金がどのように運用されているのかを示すものとされています。現金や貸付金といった勘定科目をイメージしてください。
「負債」と「純資産」をひとまとめに説明すると、資金をどのように調達したのかを示すものです。
「負債」は他人へ支払いをする義務であり、「純資産」は資産と負債の差額であると説明することもできます。
負債の代表的な勘定科目は借入金で、純資産の代表的な勘定科目は資本金です。
簿記のルールでは、貸借対照表(たいしゃくたいしょうひょう。会社の財産などを表すもの)において、「資産」の額と「負債」および「純資産」の合計額が必ず等しくなります。
このルールは、下記の貸借対照表において、資産=負債+純資産という式で表されます。
会社のお金の流れの概観
上記の貸借対照表のしくみをふまえたうえで、会社のお金の流れを図解します。
お金の調達(自己資金を集める、借入れをする、出資してもらう)
↓
お金の支払い(商品の仕入れ、備品等の購入)
↓
お金の回収(商品の売上と、代金の回収)
↓
以後、お金の支払いと回収の繰り返し
会社はお金を集め、商品の仕入れと売上げを繰り返します。
もちろんその過程では、ツケで売った商品代金(売掛金といいます)の回収や、ツケで買った商品代金(買掛金といいます)の支払いもあります。
このようにして、まるで血液や酸素が体内を循環するように、会社のお金は流れていきます。
ここで、初めて簿記を学ぶ方にも理解していただきたいことがあります。
いくらお金があっても、立派な本社建物があっても、お金が回らなくなれば会社は倒産してしまいます。
逆にいうと、借金が多くてもお金さえ回っていれば会社は倒産しないのです。
今回の記事では会社を人間の体に例えましたが、簿記という知識があれば会社の身体がどういう状態か数字を通じてわかるようになります。
資金調達以外で資産増に関係する「収益、費用」
ここでは損益計算書(そんえきけいさんしょと読み、会社の儲けを計算するもの)に記載される収益と費用が、どのようにして会社の純資産を増やすのかを説明します。
「収益」とは、顧客に物を売ったりサービスを提供した場合に受け取る対価をいいます。
「費用」とは、収益を獲得するために掛かった代金などをいいます。
収益が費用を上回れば会社にとって利益が生じますが、費用を収益で回収できなければ損失が生じるという関係です。
収益と費用を比べて「純利益」または「純損失」を計算することを「損益計算」といいます。
例えば仕入れ値100,000円の商品を、150,000円で売却した例で考えてみましょう。
損益計算書の中で、売上げ150,000円という収益は、仕入れ100,000円という費用と対応します。結果50,000円の純利益が計算で出ます。
この純利益は、ただの儲けとして無駄遣いするわけではありません。
純利益は損益計算書から貸借対照表の純資産の部に振り替えられ、新たな自己資金として再度資金運用に回されることになります。
こうして会社のお金の流れは絶えることなく続いていきます。
今回の記事で初めて簿記を学ぶ方は、「資産」「負債」「純資産」「収益」「費用」がどういうものかを知っていただければ十分です。お金の流れをイメージできるようになればなおよろしいです。
次回は「取引と仕訳」というテーマで、簿記学習の中心となる仕訳の仕方を説明します。
前回の記事で「取引」について触れていますので、よろしければそちらを確認してから次回をご覧ください。
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