連載「就職前に経営判断ができる!?決算書の見方」、前回は、決算書とは法律で定められている会計に関する書類であることを解説しました。
決算書の1つである損益計算書ですが、会計初心者であっても損益計算書の具体的な見方がわかれば、就職・転職先の企業の経営成績の中身が理解できるようになります。ですから、経営成績という視点からも就職・転職先の選択ができそうですね。
今回は、損益計算書の具体的な見方を、会計初心者にもわかりやすく解説します。
実際にある企業の損益計算書を見てみよう
文字のみではわかりにくいので、実際にある企業の損益計算書を見てみましょう。
上記の例は、ファミリーレストラン「ガスト」などを運営している株式会社すかいらーくホールディングス第51期(平成24年12月期)における損益計算書です。
上場企業の場合、企業サイトの中に「株主・投資家」へ向けたページが設けられていて株主・投資家向けに業績がわかるよう様々な資料が公開されています。その中に、財務諸表が公開されていることがあります。
気になる企業がありましたら、ぜひ企業サイトを確認してみてくださいね。
会計初心者にもわかりやすいように、簿記の仕訳で使用される項目「勘定科目」を、上記の①~④の4つのエリアに分けて解説します。
①本業としている事業での経営成績
損益計算書のエリア①にあるのは、「会社が本業としている事業での経営成績」です。
本業としている事業とは、例に挙げた株式会社すかいらーくの場合、定款の事業目的をみるとわかります。
ファミリーレストランのような飲食サービス業や弁当・惣菜等の調理食品製造宅配業、フランチャイズシステムによる加盟店募集や指導など、飲食サービスに関する事業がすかいらーくの本業といえますね。
「売上高」は、会社が本業としている事業での売上。
「売上原価」は、売り上げたものを準備するために要した費用のこと。例で言えば、食品の仕入れ費用など。
そして、売上高から売上原価を差し引いたものが「売上総利益」となります。
「販売費および一般管理費」は、販売するために使われた費用のこと。営業や会社の運営に関与する従業員の人件費やテレビCMなどの広告費などが含まれます。
最終的に、売上総利益から販売費および一般管理費を差し引いたものが「営業利益」となるのです。
②本業以外の事業での経営成績
損益計算書のエリア②にあるのは、本業以外の事業での経営成績です。会社が副業として行っている、継続的な内容での経営成績が読み取れます。
「営業外収益」では、会社の本業以外での副収入が表されています。例で言えば、受取利息や配当金、賃料収入などがあることが読み取れます。
「営業外費用」は、会社の副業で使用された費用です。
「経常利益」は、エリア①の営業利益と、エリア②の営業外収益を足してから、同じくエリア②の営業外費用を差し引いたものとなっています。
③本業以外の事業における臨時の収益または損失
損益計算書のエリア③にあるのは、臨時の収益または損失です。
本業としている事業や継続的な副業以外で得た臨時の収益(特別収益)または損失(特別損失)があれば、ここに表記されます。
④最終的な経営成績
損益計算書のエリア④にあるのは、最終的な経営成績です。
「税引前当期純利益」は、エリア②の経常利益とエリア③の特別収益を足してから、同じくエリア③の特別損失を差し引いたもの。
この税引前当期純利益から、法人税などの税金を差し引いて計算すると「当期純利益」の数字が出ます。
当期純利益は、当期における会社の最終的な利益です。ここがマイナスの場合は赤字ということになり、「当期純損失」と表記されます。
損益計算書で見る5つの利益
損益計算書には様々な勘定科目が並んでいますが、見るべきポイントは「利益」。
損益計算書には5つの利益が表記されています。この利益について読み取れると、初心者の方も会社の経営成績の基本的な部分が理解できるようになるでしょう。
売上総利益
売上高-売上原価=売上総利益
今回の例(損益計算書 エリア①)から読み取ってみましょう。
170,132(売上高)-51,076(売上原価)=119,055(売上総利益)
売上総利益からは、会社の本業における商品・サービスなどの粗利益が読み取れます。
たくさん売り上げていても商品の仕入れなど(売上原価)にお金をかけていると、本業で得た利益も少なくなってしまいます。
営業利益
売上総利益-販売費および一般管理費=営業利益
例(損益計算書 エリア①)より
119,055(売上総利益)-110,704(販売費および一般管理費)=8,351(営業利益)
仮に、売上総利益は高いのに営業利益がマイナスになっているとしたら、本業でたくさん売り上げた金額以上に、広告宣伝費や人件費などに費用をかけてしまっているということが読み取れます。
経常利益
営業利益+営業外収益-営業外費用=経常利益
上記の例(損益計算書 エリア②)でいうと、株式会社すかいらーくホールディングスの本業・副業を合わせた利益を表しています。
8,351(営業利益)+2,415(営業外収益)-7,147(営業外費用)=3,619(経常利益)税引前当期純利益
経常利益+特別収益-特別損失=税引前当期純利益
例(損益計算書 エリア④)より
3,619(経常利益)+3,384(特別収益)-2,804(特別損失)=4,199(税引前当期純利益)
特別収益や特別損失は臨時で得た収益(または損失)です。ですから、期間によってはまったく無いことも考えられます。
当期純利益
税引前当期純利益-法人税などの各種税金=当期純利益
例(損益計算書 エリア④)より
4,199(税引前当期純利益)-△1,765(法人税などの各種税金)=5,965(当期純利益)
※△=マイナスを意味します
最後に法人税などの税金を差し引き、当期における最終的な会社の経営成績である「当期純利益」が表記されます。赤字の場合は「当期純損失」という勘定科目になります。
今回例で挙げた期間では、黒字経営だったようですね。
会計初心者の方も損益計算書を見ることで、「この会社は本業より副業で利益を出している」など意外な発見が読み取れるかもしれません。就職・転職先の企業が公開していれば、経営成績という視点からも企業を選択できそうですね。
このように誰でも、簿記の知識を持って決算書の基本的な見方を覚えておくことで、取引先や就職先の経営状況がわかるようになります。
興味のある方はぜひ、簿記の勉強にチャレンジしてみてください。
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次回は、貸借対照表の見方について解説します。
参考URL
https://www.skylark.co.jp/company/pk637h0000000tv3-att/koukoku1303.pdf
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