5回にわたってお届けしておりましたこの連載「知らないと困る!著作権入門」も、ついに最終回です。
今回は、新聞・雑誌などに、会社の商品やインタビュー記事が載ったとき、ついやりたくなってしまうけど、実際はやってはいけないことをクイズにしてみました。
「うちの会社は、新聞になんて載らないよ!」と思ったあなた。記事が掲載されるのは、有名な全国紙とは限りません。どんな業種でも、業界新聞や業界誌の存在はつきものです。そのため、あなたの会社やあなた自身が取り上げられるチャンスがないとは言い切れませんよ。
「もし、商品や職場、自分が載ったら…!?」と考えながら、クイズに解答してみてくださいね!
問1 自社商品の記事なのに使っちゃいけないの?
あなたの会社の商品が、たまたま雑誌に紹介されました。自社サイトに記事のPDFファイルを掲載したいと考えています。それでは、ここでクイズです!
問1 自社商品の記事であっても、記事のPDFを無断で自社サイトに掲載してはいけない。○か×か?
問1の答えと解説
正解は 【○】
雑誌に掲載されている記事の著作権は記者や出版社のもの。そのため、例え自社商品についての記事でも、記事を無断で自社サイトに掲載することはできません。
広告費を支払わずに、たまたま雑誌に掲載されるなんて、ラッキーですよね!雑誌で注目されたのは名誉なことですし、自社サイトに載せればきっと宣伝になるはずです。
また、もし自分が顧客の立場なら、営業担当者から商品を勧められるより、第三者である雑誌で勧められている方が、なんとなく欲しくなる気がしませんか?
私も、雑誌に自社商品の記事が載ったとき、自社サイトに載せて販促したいと思いました!なので、掲載したい気持ちはとてもよくわかります。でも、それは無断でやってはいけないことなのです。
自社の商品についての記事であっても、著作権は自社のものではないことは覚えておきましょう。
問2 新聞記事を社員で共有してはダメ?
会社の業績についての記事と、社長の顔写真が新聞に掲載されました。新聞は会社で購読していますが、社員全員に知らせたいので、記事のスキャンデータを社員専用の情報共有サイトに掲載したいとあなたは考えています。さてここで、クイズです!
問2 写真に写っている社長本人が許可すれば、社員だけが閲覧できる情報共有サイトに記事のスキャンデータを掲載してもよい。○か×か?
問2の答えと解説
正解は 【×】
社員専用の情報共有サイトであっても、記事のスキャンデータを無断で掲載してはいけません。
社長の顔写真が載っていても、記事の著作権は記者や新聞社のものです。そして、紙に印刷していなくても、スキャンデータは複製(コピー)にあたります。
著作物を自由に複製できるのは、自分や家庭で使うための私的使用の場合のみでしたね。そのため、業務に使用する場合は私的使用にはなりません。
今回のクイズの場合、社員だけが使う情報共有サイトという部分で、つい身内感覚になってしまいがち。また、「世間に公表するわけではないし…」という意識も働いてしまいます。
個人的にならコピーできるのに、業務となると急にやってはいけないことに変わってしまうのも、うっかりしやすいポイントです。
会社として、新聞を購読するのは一般的なことでしょう。社員がそれを読むのはもちろんよいのですが、無断での複製は認められていないということは、覚えておきたいですね。
問3 インタビュー記事の著作権は誰のもの?
あなたが取材を受けたインタビュー記事が、雑誌に掲載されました。顧客や自社の社員に、記事のコピーを配布したいと思っています。ここでクイズです!
問3 記事は、取材を受けた際に自分が話した内容なので、自分だけはコピーして使ってもよい。○か×か?
問3の答えと解説
正解は 【✕】
自分が話した内容が書かれていたとしても、無断で著作物のコピーを配るのは、やってはいけないことです。
長時間の取材に応え、質問に回答し、商品写真を提供し…と、協力しても、残念ながら記事の著作権は、記者や出版社のものなのです。どうしても記事をコピーして配布したい場合、出版社と記事の使用許諾契約を結ぶ必要があります。
「出版社との契約となると大げさ…でも、せっかくだから、顧客や知り合いに見せたいな」という場合には、どうすればよいのでしょうか?実は、いくつか方法があります!
① 記事の切り抜きを一緒に見る
② 社内で雑誌を見せる
③ 購入した雑誌をプレゼントする
記事の切り抜きを見せたり、来社した人に雑誌を見せたりするのは、著作権の侵害ではありません。また、お手頃価格の雑誌であれば、たくさん買っておいて、「この記事を読んでみてね!」と、プレゼントすることもおすすめですよ!
著作権クイズは全問正解できたでしょうか。
会社や自分自身が関わっている著作物だと、つい自分だけは使用しても大丈夫という気がしませんでしたか?
また、個人で楽しむために複製するのはOKでも、会社ではダメだということは、うっかり忘れそうだと思いませんか?
今回紹介した、ついやりがちだけれど業務ではやってはいけないこと、ぜひ覚えておいてくださいね。
さて、この連載中、私が知的財産管理技能検定3級をおすすめしてきたのには、理由があります。それは、3級だけは特別な受験資格が必要なく、独学でも合格を目指せるからです!
実は、知的財産管理技能検定3級は国家資格の中で比較的合格率の高い資格。私も、働きながら独学で合格できました。
誰でも簡単に情報発信できるようになった今の時代。著作権の侵害もまた、誰にでも起こり得ます。そのため、知財に関する知識は、知っておけばとても有用かつ、社会人としてぜひ知っておきたいもの。
これを機会に、著作権を含む知財について、学びを進めてみてはいかがでしょうか?
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