皆さん、こんにちは。オンスクの知的財産管理技能検定3級講座を担当いたしました、株式会社パテントインベストメントの草野です。
前々回の連載では特許権、前回の連載では著作権についてお伝えしました。
今回は初めての商標編の記事となります。まずは商標の概要からご説明していきます。
「商標」とは何か?
商標とは、簡単にいうと、自分と他人の商品・サービスを識別するために付するものなどをいいます。つまり目印のようなものです。
具体的には、商品・サービス名、会社名、屋号、店名、ロゴ、マーク、キャッチフレーズ、音、色など多岐に渡ります。
このような商標を、指定した商品・サービスに対して登録すると、他人はその商標や似ている商標を、指定した商品・サービスに対して使うことができません。
(正確には、指定した商品・サービスと”似た商品・サービス“に対しても使うことができません)
※商標上は、サービスを役務といいます
例えば、誰もがよく知るバンドエイドは、ジョンソンアンドジョンソン社の登録商標であり、指定商品の中にはばんそうこうがあります。
つまり、バンドエイドという商品名を付してばんそうこうを販売したら、商標権の侵害になるということになります。
このように、自分で考えた商品名などのアイデアを商標登録することによって、他人に真似されることを防止し、真似された場合は警告や訴訟をすることができます。
特に事業を行う方は、商標のことを知らないと、自社の会社名や商品・サービス名などを使われてしまったり、他人の商標権を侵害してしまったりするリスクが生じます。
実際に私が知る範囲でも、商標権侵害をしてしまっている方が非常に多いです。
そのため、早めの対策が必要になります。
さて、商標の意義について簡単にご説明しましたが、続いては商標登録を行うメリットとデメリットをお伝えします。
商標登録のメリット4つ
メリット①:誰でも簡単に権利が取れる
特許や意匠は、新しい技術的アイデアや新しい物品デザインのアイデアを考える必要があり、それなりに難易度が高いです。
しかし商標は、簡単な文字やロゴマークなどであっても、すでに登録されている商標と同一あるいは類似でなければ、商標登録を受けることができる場合が多くあります。
そのため、簡単に作った造語やロゴマークであっても、商標登録できるということは十分にあり得るのです。
逆に、誰でも簡単に思いつきそうでかつ他人が使いたがるような言葉を先に商標登録してしまえば、他人に対して優位に立つことができます。
メリット②:取得費用が安い
商標は、弁理士費用を合わせても7〜15万円前後で取得することができるので、特許と比べても10分の1近くの安さです。
実際、特許や意匠は費用が高くて手が出ない方が多いですが、商標の費用であれば支払える方は多いです。
大事な商品・サービス名や会社名などを少額で保護・独占できるので、費用対効果が非常に高いと考えています。
メリット③:権利侵害の判断が容易
上記で触れたように、商標登録を受けて商標権を取得した場合は、もし他人が自身の商標と同じか似ている商標を使った場合は、基本的に商標権侵害になります。
商標同士が同一・類似かどうかの判断は、見た目、呼び方、意味合いの3つにより判断されます。
(正確には外観、称呼、観念といいます)
これらは、比較する2つの商標を見れば、似ているかどうかは比較的簡単に判断できます。
特許の場合は、権利の内容が長い文章で表されているので、権利範囲の解釈が曖昧になり侵害判断が難しい場合が多いです。
商標の場合は特許に比べればかなり簡単な内容なので、専門家でなくても判断ができる場合も多いです。
メリット④:永久的に権利を保有できる
商標権の存続期間は商標登録がされた日から10年なのですが、この期間が過ぎても更新を行うことにより、その後の期間においても権利を保有できます。
また、更新はずっと繰り返すことができるので、基本的に更新料さえ払えば永続的に商標権を保有できるのです。
これは特許、意匠、著作権にはない商標のみの特徴です。
続いてはデメリットについてです。
商標登録のデメリット2つ
デメリット①:インパクトが弱い
商標権は非常に重要な権利ではありますが、費用が安くて簡単に取得できるからか、商標権を保有していると言っても、そこまで凄いという印象を与えることはできません。
やはり知的財産権の中では「特許」が断トツでインパクトがあり、特許以外の知的財産権を知らない人がかなり多いです。
さらには、商標自体が特許と勘違いされていることもかなりあります。
そのように特許の影に埋もれてしまっているため、現時点では商標のインパクトは小さいです。
ただ今後、商標の重要性が多くの方に理解されれば、商標のインパクトも強くなるかと思います。
デメリット②:商品・サービスの内容自体は保護できない
商標は、商品・サービスの出所や品質を表したり、宣伝広告になったりといった機能はありますが、それらの商品・サービスの中身までは保護できません。
簡単にいえば、表面的なものは保護できますが、機能、原理、構造などの中身に関しては商標権の効力は及ばないのです。
そのため、例えば商品名について商標登録を受けていたとしても、他者に商品名を変えて同じものを販売されると商標権侵害を主張できないのです。
商品・サービスの具体的な内容に関して保護を受ける場合には、特許や著作権等を活用することが必要になります。
連載「意外に身近!商標とは」、今回は、商標の概要についてお伝えしました。
身の回りには商標がたくさんあり、街中やスマホに出てくる情報の中など、どこでも見かけます。ぜひ意識して見つけてみてください。
商標の具体的な部分に関しては、次回以降の記事でお伝えしていきます。
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