こんにちは!オンスクの知的財産管理技能検定3級講座を担当いたしました、株式会社パテントインベストメントの草野です。
さて、前回は商標登録の流れについてご説明しましたが、商標登録を受けるためには特許庁による商標の審査を通過する必要があるとお伝えしました。
その審査において、所定の要件が複数あり、それらを全て満たすと晴れて登録査定となり商標登録が可能となります。
今回はその所定の要件について、詳しくご説明します。
商標登録の主な要件
実際のところ、商標登録の要件は数十個もあるので、ここで全てお伝えすることはできませんが、その中でも重要なものだけピックアップしてお伝えします。
主な要件は、すごくざっくりいうと、商標登録を受けようとしている商標が以下の条件を満たすことです。
ありきたりな商標でないということ すでに登録されている商標と同一・類似の商標でないこと
※ありきたりな商標とは、わかりやすくするために私が表現したものであり、商標法上規定されているものではありません
「ありきたりな商標」とは?
ここで、まずは「ありきたりな商標」とはどういうものをいうのか、見ていきたいと思います。
(特許庁等のページで書かれている説明に対して、かみ砕いた表現を使っています)
① 商品・サービスの普通名称を普通に表示した商標
普通名称とは、取引業界において、その商品・サービスの一般的名称であると認識されるに至っているものをいい、略称や俗称も普通名称として扱われます。
また、普通に表示とは、その書体や全体の構成等が特殊な態様でないものをいいます。
例えば、指定商品がりんごで、商標がAPPLEだと、APPLEというのはりんごをアルファベットにしただけであり、普通名称となります。
もう1つの例としては、指定商品が携帯電話で、商標が携帯だと、携帯というのは携帯電話の略称であり、普通名称となります。
② 商品・サービスの特徴を普通に表示した商標
商品・サービスの特徴とは、産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状、生産・使用の方法・時期、数量、価格といったものになります。
つまり、上記のような指定商品・サービスの特徴を表している商標は、登録になりません。
例を挙げると、指定商品が炭酸飲料で、商標がシュワシュワの場合は、単に炭酸飲料の特徴であるシュワシュワという音を普通に表示したに過ぎないため、登録にはなりません。
他にも例を挙げると、指定商品が木炭で、商標が黒色の場合は、単に木炭の特徴である黒色という色を普通に表示したに過ぎないため、登録にはなりません。
以上のように、ありきたりな商標について特許庁で登録を受けようとしても、審査官による審査を通過することができません。
「すでに登録されている商標と同一・類似の商標」とは?
続いては、すでに登録されている商標と同一・類似の商標とはどういうものか、見ていきましょう。
① 商標と、指定商品・サービスの同一・類似について
これまでも、商標の同一・類似に関しては簡単にお伝えしてきました。
ただ、単純に商標同士だけが同一あるいは類似であるだけで、審査官に拒絶されるわけではありません。
実は、指定商品・サービス同士が同一あるいは類似でなければ、商標同士が同一あるいは類似であっても登録され得るのです。
つまり、
・自身が商標登録出願をした商標が、すでに登録されている商標と、同一あるいは類似
であり、かつ
・出願した商標の指定商品・サービスが、登録されている商標の指定商品サービスと、同一あるいは類似
である場合にのみ、審査官によって拒絶され、登録を受けることができないのです。
そのため、商標登録を受けようとしている商標が、すでに登録されている商標と同一あるいは類似であっても、すぐに諦める必要はなく、指定商品・サービスの同一・類似関係を見ていけばよいのです。
なお、指定商品・サービス同士の類似関係については、基本的には特許庁が定めている類似群コードと呼ばれるものによって決まります。
同じ類似群コードが付されている指定商品・サービスは、類似関係にあります。
② 同一・類似関係の例
ここで例を挙げてみます。
まず、指定商品・サービスは45個の区分に分かれていることは、前回の記事でご説明しました。
その中で、今回は44類の区分を見ていきたいと思います。
44類における指定サービス(役務)の中には、美容、理容という2つのサービスがあり、ともに42C01という類似群コードが付されています。
そのため、美容と理容はお互いに類似関係にあるのです。
これを踏まえて考えると、例えば、
・商標登録を受けようとする商標が「チテキザイサン」、その指定サービスが「美容」
で、
・すでに商標登録されている商標が「チテキザイサン」、その指定サービスが「理容」
だとすると、商標同士が同一で、指定サービス同士が類似なので、審査官によって拒絶されます。
なお、商標同士が類似で、指定サービス同士が同一である場合も当然拒絶されます。
例えば、商標登録を受けようとしている商標が「チテキザイサン」、その指定サービスが「美容」で、すでに商標登録されている商標が「チテキザイサンケン」、その指定サービスが「美容」の場合は、拒絶されるということです。
(チテキザイサンとチテキザイサンケンは互いに類似関係である前提です)
③ 同一・類似関係のまとめ
以上のことを簡単にまとめると、以下のようになります。
【拒絶される場合】
- 商標同士が同一で、指定商品・サービス同士も同一
- 商標同士が同一で、指定商品・サービス同士が類似
- 商標同士が類似で、指定商品・サービス同士が同一
【拒絶されない場合】
- 商標同士が非類似で、指定商品・サービス同士も非類似
- 商標同士が同一あるいは類似で、指定商品・サービスが非類似
- 商標同士が非類似で、指定商品・サービス同士が同一あるいは類似
連載「意外に身近!商標とは」、今回は、商標登録を受けるための主な要件についてご説明しました。
他にも要件はたくさんあるので、またの機会にお伝えしたいと思います。
次回は、商標のリスクについてお伝えします。
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