連載「いまさら聞けない給与明細のキホン」では、給与明細上の項目について会社員が知っておくべき基礎知識をご説明しています。
第4回の今回は「雇用保険料」についてです。
会社員になると、毎月もれなく雇用保険料が給与から控除されます。新社会人の初めての給与明細にも、しっかり雇用保険料が記載されているはずです。
雇用保険は公的な保険ですから、会社員が自由意思で加入する・しないを選ぶことはできません。
加入の条件を満たしているからには、法的な義務として加入するしかありません。
いまさら聞けない給与明細のキホン
- 1 給与明細「支給」「控除」「勤怠」のキホン
- 2 給与明細「所得税」のキホン
- 3 給与明細「住民税」のキホン
- 4 給与明細「雇用保険」のキホン
- 5 給与明細「健康保険」のキホン
そもそも雇用保険とは何か?
まず、雇用保険について説明します。雇用保険とは、労災保険とともに会社員が加入する労働保険です。
労災については、「名前は聞いたことある」という会社員も多いのではないでしょうか。
労災保険は、ひとことでいえば、労働者の労働災害に備えるための保険です。
労働災害とは例えば、会社員の仕事中や通勤中のケガ、仕事が原因でかかった病気などがあげられます。
加入条件を満たした会社員は、選択の余地なく雇用保険に加入しなくてはいけないと、すでにお伝えしましたね。
加入条件には、週の労働時間や雇用期間がありますが、フルタイムで働くいわゆる正社員なら条件を満たしているはずです。
では、労災保険はどうでしょう?
労災保険についても、選択の余地なく加入しなくてはいけません。ただ、雇用保険と違って、週の労働時間などの加入条件は、定められていません。
会社が労災保険に加入している以上、そこで働く会社員は自動的に労災保険に加入することになるのです。
雇用保険料はどのように計算されるのか?
労災保険料は、事業主が全額負担します。
ですから、会社員が給与から控除されることはありませんし、給与明細にも「労災保険」の欄は存在しません。
いっぽう、雇用保険料は事業主と労働者がそれぞれ負担します。
会社員が給与から控除され、給与明細の「雇用保険」欄に記載される雇用保険料は、労働者負担分です。
それでは雇用保険料がどうやって計算されているか、という話に移りましょう。
雇用保険料は、「総支給額×雇用保険料率」で計算されます。2018年度、会社員が負担する雇用保険の料率は、次のとおりです。
一般の事業 | 0.3% |
農林水産・ 清酒製造の事業、建設の事業 | 0.4% |
給与明細サンプルを使って、雇用保険料の計算を確認してみましょう。下記は、一般の事業に勤務する会社員の給与明細サンプルです。
総支給額275,625円 × 0.3% = 826.875… → 826円(小数点以下は切り捨て)
これが、建設の事業に勤務する会社員の給与明細サンプルなら、以下のようになります。
総支給額275,625円 × 0.4% = 1,102.5 → 1,102円
会社員が給与から控除された雇用保険料はどう使われている?
雇用保険料は、様々な雇用保険事業のために使われています。そのなかで会社員に直接かかわる使い道となると、給付金でしょう。
雇用保険からの給付金としては、俗に「失業手当」と呼ばれる給付金が有名です。でも、こちらは失業者、いわば元・会社員しかもらえません。
いま雇用保険加入者である会社員が受けとれる給付金も、もちろんあります。いくつかご紹介しましょう。
●教育訓練給付金:教育訓練の受講料の一部が支給される
●育児休業給付:育児休業中、給与が支給されない、あるいは80%以上減ってしまうとき、支給される
●介護休業給付:介護休業中、給与が支給されない、あるいは80%以上減ってしまうとき、支給される
給付金ごとに、受給のための条件が定められています。雇用保険料を控除されているからといって、会社員なら誰でももらえるというわけではありません。
(詳しい内容は、ハローワークや厚生労働省のホームページに掲載されています。興味のある方は、下記のページでご確認ください)
雇用保険手続きのご案内
労働者の皆様へ(雇用保険給付について)
雇用保険は、会社員も元・会社員もサポートしてくれる
給与の支給があるかぎり、雇用保険料はイヤでも控除されます。
でも、雇用保険は、労災保険と同じく、労働者のために必要な保険です。
いざというとき、雇用保険はあなたの力になってくれるでしょう。会社員時代も、思いがけず元・会社員となってしまったときも。
次回は「健康保険」についてご説明します。
参考URL:
https://jsite.mhlw.go.jp/tottori-roudoukyoku/var/rev0/0112/1758/hokenritu_30.pdf
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