仕事中の事故は、意外にも皆さんの身近なところに潜んでいます。
マイカーでの通勤途中に事故に遭った、物を取ろうとして脚立から落ちそうになった、資料を運んでいる時に階段で足を踏み外しそうになったなど、ひやりとする経験をしたことはないでしょうか?
いずれも、一歩間違えれば労災事故につながります。
一方、多くの会社で労災発生を恐れる傾向にあることもまた事実。「労災申請をしようとしたら渋い顔をされた」という話は珍しいものではありません。
連載「社労士が教える、知らないと損する労務知識」、第3回の今回は、社労士に寄せられた労災相談事例を元に、労災発生時の会社の対応に関わるウソ・ホントを検証します。
事例①「労災はその程度の怪我で使えない」と言われた
労災発生時の会社の対応としてよく耳にするのが、会社担当者に「労災は使えないので、健康保険で病院にかかってください」と言われる例です。
会社側から「労災は使えない」ときっぱり言われることで、ついその言葉を鵜呑みにしてしまう労働者は少なくありません。
しかしながら、あなたの傷病が労災に該当するかどうかを判断するのは、あくまで労働基準監督署長です。
会社は、本人から労災申請の希望があった場合には誠実に対応し、申請に協力する義務を負います。
少なくとも、会社で起こった事故について労災申請するかどうかの判断を下すことは、労災申請の手続き上、一切必要ありません。
具体的な労災事例は、厚生労働省が公開していますので、参考にしてみてください。もちろん、社労士宛に「これって労災じゃないの?」とご相談いただいても構いません。
事例② 労災を申請すると会社に迷惑がかかる?
社労士宛の労災関連のご相談においては、労使双方から「会社への影響」を懸念する声を多く耳にします。
「社員が労災申請をするが、会社にはどんな不都合があるのか?」
「労災事故に遭ったが、社内での立場が悪くなりそうで申請しづらい」
会社側と労働者側、それぞれの立場は違っても「労災申請=会社へのデメリット」のイメージが共通項であることは明らかです。
ところが、実際のところ、労災申請によって直ちに会社がデメリットを被る可能性は高くありません。
デメリットとして想定されるのは「労働基準監督署に目をつけられること」や「労災保険料が上がること」ですが、通常、1、2件の労災事故で会社が大きな不利益を被ることはないでしょう。
また、労災の発生状況に応じて保険料が変動するメリット制は、そもそも適用となる会社が限られています。
一方で、会社にとっては、労災隠しが判明した際のデメリットの方が大きいと言えます。
働く皆さんは、万が一のとき、会社に迷惑をかけるからと労災申請を諦めてはいけません。むしろ、会社に迷惑をかけないためにも、適切な労災申請を心がけるべきです。
事例③ 労災を使わなくても、会社に補償してもらえばよい?
労災事故が発生したとき、会社によっては「会社がすべて補償するので、労災を申請しないでください」と提案してくることがあるようです。
こうした打診を受け、つい会社の言いなりになる労働者も多いですが、ここは立ち止まって慎重に考えてみるべきです。
会社の補償は、いつまで続くのでしょうか?
労災事故が原因で身体に障がいが残ってしまった場合、会社はあなたを一生支えてくれるでしょうか?
万が一、会社が倒産したら、責任の所在はどこにいくのでしょうか?
考えれば考えるほど、不安しか残りませんね。
そもそも、労災申請を拒むような会社が、果たして本当に労災事故に対して誠実に向き合ってくれるでしょうか。
労災事故による影響は、短期的な補償で解決するとは限りません。もしも皆さんが労災に遭ってしまった時、「会社が補償するから」の言葉には騙されないようにしたいものです。
社労士の知識は、労災発生時など「万が一」の際の対応に役立ちます。会社の言うなりになるのではなく、正しい知識を元にご自身で判断できる力を習得しませんか?
次回は、仕事を辞めたあとにお世話になる「失業等給付」について解説します。
無料登録でオンラインの資格講座を体験しよう!
資格受け放題の学習サービス『オンスク.JP』では様々な資格講座のオンライン学習が可能です。
最短20秒の無料会員登録で、各講座の講義動画・問題演習の一部が無料体験できます。
※自動で有料プランになることはありません。
関連する記事が他にもあります
社労士が教える、知らないと損する労務知識
- 社労士直伝!損しないために知りたい産休・育休のポイント3つ
- 社労士に聞く「失業後の手当」もしものときに損しないための心得
- 会社の対応、それOK?社労士が労災のウソ・ホントを解説
- 働き方改革でも残業が減らない?社労士に聞く「残業ルール2020」
- 働き方改革で有休が変わる!社労士が教える「有給休暇」新常識