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社労士に聞く「失業後の手当」もしものときに損しないための心得

社労士に聞く「失業後の手当」もしものときに損しないための心得

「仕事を辞めたら、会社からもらった離職票を持ってハローワークで手続きすれば、問題なく手当を受けられる」
雇用保険の失業給付の受給について、皆さんはこんな風に安易に考えていないでしょうか?

実際、退職後に雇用保険から手当を受けられることはご存じでも、失業給付の制度を理解できていないために、結果的に損をしている方は多いようです。

連載「社労士が教える、知らないと損する労務知識」、今回は、社労士目線で「失業給付」のポイントを解説します。

いざ失業給付を受給する際、皆さんが損をしないために確認すべき事項をおさえておきましょう。

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失業給付の総額を決める「勤続期間」と「離職理由」は要確認

失業給付とは、離職後に安心して求職活動を行うための手当を指します。雇用保険制度の一環であり、「基本手当」とも言われます。

1日あたりの失業給付の額(以下「基本手当日額」といいます)は、「離職日の直前6ヵ月に支給された、賞与等を除く賃金総額÷180(以下「賃金日額」といいます)」に、所定の給付率をかけて算出します。
賃金日額と基本手当日額のどちらにも、上限額、下限額の設定があります。

参考:厚生労働省「雇用保険の基本手当日額が変更になります」

失業給付を受ける期間は、「年齢」「勤続期間」「離職理由」によって決まります。
具体的な給付日数をご確認いただくと、「会社都合によってやむを得なく離職した方」「勤続年数の長い方」については給付日数が多くなることがおわかりいただけるでしょう。

参考:ハローワーク「基本手当の所定給付日数」

皆さんが退職後に失業給付を受ける場合、離職票を受け取ったら、まず「勤続年数」と「離職理由」が正しいかどうかを確認してみてください。

社労士の実務上、離職票の内容とご自身の認識との間でズレが生じている例は多々見受けられます。

失業相談その1「勤続年数に誤りがある」

社労士に寄せられる失業給付関連のご相談の中には、「勤続年数に誤りがある」というお声が散見されます。

例えば、「契約社員だった頃の勤務期間が反映されていない」というケース。この場合、勤務年数の修正が必要になります。
同時に、雇用保険の加入条件を満たしていたにも関わらず資格取得が行われていなかった期間が判明した場合には、前職場に対して遡及加入の手続きを依頼することが可能です。

中には、退職時になって初めて「ずっと雇用保険に加入していなかった」ことが明らかになることもあります。この場合にも、出勤簿や給与明細等のデータを元に遡及加入できますので、くれぐれも泣き寝入りすることのないようにしましょう。

まずは、退職した会社に手続きを依頼します。もしも会社に手続きを拒まれたなら、すぐにハローワークに相談しましょう。

失業相談その2「離職理由が自己都合扱いだが、実は会社都合」

離職理由を巡るトラブルでよくあるのが、「会社都合退職を自己都合扱いにされている」という事例です。

「どうせ退職するのだから、離職理由なんてどちらでもいいのでは?」と思われるかもしれませんが、失業給付は離職理由によって受給の開始時期や受給期間が変わります。
自己都合退職の場合、申請後3ヵ月間の受給制限が設けられる他、受給日数も会社都合と比較して短くなるため、離職理由は適切に判断される必要があります。

離職理由から、特定受給資格者または特定理由退職者に該当するかどうかを確認しましょう。
特定受給資格者というと倒産や解雇による離職を連想しますが、そのほかにも「長時間労働」や「契約社員に対する不当な雇い止め」、「マタハラ」などによる退職も含まれます。

自ら退職届を提出してしまったからといって、必ずしも会社都合退職と認められないわけではありません。少しでも「おかしいな」と感じたら、証拠書類を集めてハローワークに相談しましょう。

自己都合退職なら、失業給付の受給よりも再就職を優先するのが得策

「退職したら失業給付を受けないと損」と考える方も少なくないでしょう。

ところが、社労士目線で言えば、失業給付の受給よりも再就職を目指すべき方というのは確実に存在します。具体的には、「自己都合退職」の場合で、離職後3ヵ月以内には再就職の見込みが立っている方です。

前項でも触れたとおり、自己都合退職の場合の失業給付には、3ヵ月間の給付制限があります。退職後3ヵ月間手当を受けられないこと、そして再就職を目指す上で離職後のブランクは短い方が良いことから、早期に再就職できるのであればそれに越したことはありません。

幸い、失業給付では、以下の2つの条件を満たす場合に、所定給付日数の基礎となる被保険者期間が通算されます。
・離職から再就職までの期間が1年未満であること
・当該被保険者期間を算定基礎とした失業給付等を受け取っていないこと
(申請手続きをしても、支給前に再就職が決まり、給付を受けていなければ良い)

例えば、前職を入社後8ヵ月で自己都合退職した方が1年以内に再就職し、再就職先を5ヵ月後に退職した場合、被保険者期間の通算を受けることで被保険者期間が1年超となり、失業給付を受けられるようになります。

また、同じく自己都合退職で、前職と再就職先の被保険者期間を通算することで勤続期間が10年を超える場合、失業給付の所定給付日数は90日から120日へと増えることになります。

このように、被保険者期間が通算されることで、後に失業給付を受ける権利を得られるようになったり、給付を受ける際の給付日数を増やせるようになったりするというわけです。
必ずしも、「再就職前に失業給付を受給しなければもったいない」というわけではありません。
本当に給付が必要となるその日まで、権利を温めておけることを覚えておかれると良いでしょう。

社労士目線で失業給付を考えれば、制度を理解したうえで適切な活用法を見出すことができるはず。
社労士の知識は、ご自身や身の回りの大切な方々の退職後を検討する際に役立ちそうですね。

次回は意外と複雑な「産休、育休」をテーマに、知って得する情報をお届けします。

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