労働者の皆さんにとって「産休・育休」は、理解しているつもりでいて、実は知らないことの多いテーマの1つだと思います。
例えば、どんな労働者であれば、産休・育休を取得できるでしょうか?
産休・育休中の手当の支給額は?
男性労働者にはどんな育休制度が用意されていますか?
実際のところ、働く皆さんが産休・有休制度をよく知らないために、損してしまうケースは珍しくありません。
連載「社労士が教える、知らないと損する労務知識」、最終回の今回は、社労士に寄せられる産休・育休関連のご相談の中から、会社で働く皆さんが特に知っておきたい3項目をご紹介します。
制度のない会社でも、産休・育休は取得できる
社労士の実務では、「産休・育休制度自体、会社にない」などのお声を労使双方から耳にすることがあります。
ところが、産休・育休は法律に定める要件を満たすことで、どんな労働者も例外なく活用できる制度であることをご存知でしょうか?
産休を取得できる労働者
…出産前後の女性労働者ならどなたでも
育休を取得できる労働者
…原則、1歳に満たない子どもを養育する男女労働者(※)
※正社員に限らず、契約社員やパートタイマー等の非正規労働者でも取得できます。
ただし、雇用期間に定めがある場合、入社1年未満、契約期間満了予定(更新なし)等の理由から対象外となります。
また、正社員でも、入社1年未満の場合には育休取得が認められない場合があります
産休・育休については「制度がない」「契約社員(もしくはパートタイマー)だから」という理由で取得を諦める例が多々見受けられますが、れっきとした労働者の権利であることを忘れてはいけません。
産休・育休は黙っていても取得できるものではありませんから、労働者自身が申請することで権利を行使していきましょう。
産休・育休中にもらえるお金の話
産休・育休制度は知っていても、いつ、いくら受け取れるのかといったお金の話は、なかなか把握の難しいテーマです。
ここでは、社労士が「産休・育休中にもらえるお金」について解説します。
産休中にもらえるお金|出産手当金
産休中は、申請すれば出産手当金が支給されます。
金額は、{健康保険の標準報酬月額(※1)÷30}×2/3×産休日数(※2)で求められます。
例:月給20万円、産休取得日数98日の場合の、もらえる出産手当金の額は、
標準報酬月額20万円÷30)× 2/3 × 98
≒ 43万5806円(※3)
※1 参考:全国健康保険協会「都道府県毎の保険料額表」
※2 産休日数:出産の日(実際の出産が予定日後のときは出産予定日)以前42日(多胎妊娠の場合98日)から、出産の翌日以後56日目までの範囲で休業した日数
※3 端数処理のルール
標準報酬月額÷30の答えの10円未満を四捨五入・・・①
①×2/3の答えの1円未満を四捨五入
育休中にもらえるお金|育児休業給付金
育休中は、申請すれば、子が1歳に達する日の前日まで(事情によっては最長2歳になる前日まで)、雇用保険から2ヵ月ごとに育児休業給付金が支給されます。
支給額は、休業開始から6ヵ月間は月給の67%、その後は50%が目安です。
育休中は所得税、社会保険料、雇用保険料が控除されないため、手取り割合は高くなります。
例:月給20万円、子が1歳で職場復帰するまでの間にもらえる育児給付金の額は、
20万円×67%×6ヵ月=80万4000円
20万円×50%×4ヵ月=40万円
80万4000円+40万円=120万4000円(※)
※1ヵ月単位で算出した大まかな目安です
休業中に支給されるお金の目安がわかっていれば、何かと安心ですね。ぜひ参考にしてみてください。
男性が活用できる育休制度の内容とは?
従来は珍しかった男性の育休取得ですが、男性の育休取得を奨励する両立支援等助成金(出生時両立支援コース)が新設された2016年頃から、状況は変わりつつあります。
社労士宛の産休・育休相談にも、時おり、男性社員の育休制度についてお問い合わせをいただくことがありますが、結論から言えば育休制度に男女の区別はありません。
ただし、男性には産後休業がありませんから、育児休業は「子が生まれた日」から「子が1歳になる誕生日の前日」までの間に取得できます。
もちろん、保育園に入園できない等の事情があれば、女性同様、最長2年まで育休の延長が可能です。
パパ休暇
原則、育児休業の取得は1人の子につき1回となっていますが、母親の産後8週以内に育休を開始・終了した男性労働者は、再度育休を取得できます。
パパ・ママ育休プラス
夫婦が共に育休を取得する場合、一定の要件を満たすことで原則1年の育休期間を1年2ヵ月まで延長できます。
出産や子育ては、女性だけの仕事ではありません。「夫婦が協力して子を産み、育てる」という考え方の元、積極的に制度を活用しましょう。
以上、現役社労士が「産休・育休」のポイントを解説しました。
出産・子育ては、法律上の制度を活用しながら、仕事との両立を図るのが得策です。
社労士の知識は、仕事と生活の調和を図りながら人生を充実させていくための糧となります。
労務知識に興味を持たれた方は、ぜひ社労士も目指してみてはいかがでしょうか。
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