宅建試験まで数週間となった、ある日のこと。
宅建直前講義を担当するタカシ先生は、教壇で準備をしながら、頭の中で今日の講義ポイントを整理しています。
「先日、宅建業法の模擬テストの結果が発表されたが、結果の資料を見ると、『宅建業者名簿の変更の届出』と『宅建士資格登録簿の変更の登録の申請』との組合せ問題が苦手な受講生が多いようだ。
今日の宅建業法の講義では、この問題について触れておこう。」
タカシ先生の宅建直前期Q&A(全5回)
- 権利関係「抵当権」
- 宅建業法「宅建業者名簿・宅建士資格登録簿」
- 宅建業法「広告規制」
- 法令上の制限「市街化調整区域」
- 税・その他「不動産取得税」
タカシ先生:先日実施された模擬テストの結果を見ますと、「宅建業者名簿の変更の届出」と「宅建士資格登録簿の変更の登録の申請」との組合せ問題が苦手な方が多いようです。
本試験での頻出項目の1つでもありますので、この問題について整理しておきましょう。
Aさん、宅建業者甲がその商号を変更した場合、甲は「変更の届出」が必要ですか?
受講生A:必要です。商号は宅建業者名簿の登載事項ですから、これに変更があったときは、変更の届出が必要です。
タカシ先生:そのとおりですね。 では、Aさん。この場合、宅建業者甲の本店で専任の宅建士として業務に従事している乙は、「変更の登録の申請」が必要ですか?
受講生A:必要です。なぜなら、宅建士が従事している宅建業者の商号は、宅建士資格登録簿の登載事項だからです。
タカシ先生:そうですね。
では、Bさん。宅建士乙がその住所を変更した場合、宅建業者甲は、「変更の届出」が必要ですか?
受講生B:…必要だと思います。
タカシ先生:Bさん、事務所ごとに置かれる専任の宅建士について、宅建業者名簿には、氏名のほかに住所も登載されますか?
受講生B:あっ!間違えました。住所は登載されません。ですから、甲は「変更の届出」をする必要はありません。
タカシ先生:そうですね。この点は間違えやすい所ですから、注意してください。
では、Bさん。この場合、乙は、「変更の登録の申請」が必要ですか?
受講生B:必要です。なぜなら、住所は、宅建士資格登録簿の登載事項だからです。
タカシ先生:そのとおりです。よくできました。
それでは、今度はCさん。宅建士乙が宅建業者甲の役員に就任した場合、乙は、「変更の登録の申請」が必要ですか?
受講生C:不要です。なぜなら、宅建士が従事している宅建業者については、その商号又は名称、免許証番号は登載事項となっていますが、宅建業者の役員の氏名は宅建士資格登録簿の登載事項とはなっていないからです。
タカシ先生:素晴らしい!そのとおりです。宅建士資格登録簿に、その宅建士が従事している宅建業者について登載されるのは、商号又は名称、免許証番号だけで、役員の氏名は登載されないことは、他の皆さんもしっかりと押さえておいてください。
では、Cさん。宅建士乙が宅建業者甲の役員に就任した場合、甲は、「変更の届出」が必要ですか?
受講生C:必要です。なぜなら、宅建業者が法人である場合、その役員の氏名は宅建業者名簿の登載事項となっており、専任の宅建士乙が宅建業者甲の役員に就任したときは、宅建業者名簿の登載事項に変更が生じるからです。
タカシ先生:そう!そのとおりです。
では、Dさん。宅建士乙が本店の専任の宅建士から支店の専任の宅建士になった場合、宅建業者甲は、「変更の届出」が必要ですか?
受講生D:必要です。事務所ごとに置かれる専任の宅建士の氏名は、宅建業者名簿の登載事項となっていますから、乙が本店の専任の宅建士から支店の専任の宅建士になった場合には、事務所ごとに置かれる専任の宅建士の氏名に変更が生じたことになるからです。
タカシ先生:そのとおりです。
それでは、Dさん。乙は、「変更の登録の申請」が必要ですか?
受講生D:うーん、…よくわかりません。
タカシ先生:少し難しかったですかね。乙は、「変更の登録の申請」をする必要はありません。
そもそも、「専任の宅建士であるか否かの別」は、宅建士資格登録簿の登載事項ではありませんし、本店の専任の宅建士から支店の専任の宅建士になったとしても、従事している宅建業者の商号等に変更は生じないからです。Dさん、この点に注意してください。
受講生D:はい!わかりました。
タカシ先生:それでは、Eさん。宅建業者甲が有限会社である場合に、その後株式会社に組織変更を行った場合、甲は、「変更の届出」が必要ですか?
受講生E:…。
タカシ先生:Eさん、会社が組織変更を行うと、その商号に変更が生じることに注意してください。会社である宅建業者の商号が「有限会社」から「株式会社」に変更するのです。
受講生E:あっ!わかりました!そうすると、商号は、宅建業者名簿の登載事項ですから、この場合、甲の商号に変更が生じたということで、甲は、「変更の届出」が必要です。
タカシ先生:そのとおりです。
では、Eさん。甲が有限会社から株式会社に組織変更を行った場合、宅建士乙は、「変更の登録の申請」が必要ですか?
受講生E:必要です。宅建士が従事している宅建業者の商号は、宅建士資格登録簿の登載事項だからです。
タカシ先生:そうですね。
それでは、次に挙げる問題については、教室におられる皆さん全員にお尋ねします。宅建業者甲が都道府県知事の免許を受けている場合に、国土交通大臣の免許へ免許換えをしたとき、宅建士乙は、「変更の登録の申請」が必要ですか?必要と思う方は手を挙げてください。
教室にいる受講生の約3分の1が手を挙げていますが、手を挙げた受講生も自信がなさそうです。
タカシ先生:これは難しい問題ですね。では、答えを言いましょう。
宅建業者甲が都道府県知事の免許を受けている場合に、国土交通大臣の免許へ免許換えをしたときは、宅建士乙は、「変更の登録の申請」が必要です。なぜなら、宅建業者が免許換えをすると、その免許証番号に変更が生じることになるからです。
宅建士資格登録簿には、その従事している宅建業者の商号又は名称のほかに、免許証番号も登載されますから、その従事している宅建業者が免許換えを行ったためその免許証番号に変更が生じたときは、「変更の登録の申請」が必要となります。
この問題は、受験生の正答率が低い問題となっていますので、手を挙げなかった方はしっかりと押さえておいてください。
では、最後の問題です。Fさん、宅建業者甲が廃業した場合、甲は、「変更の届出」が必要ですか?
受講生F:不要です。この場合、甲は、「廃業の届出」をすべきであって、「変更の届出」は不要です。
タカシ先生:そうですね。
では、Fさん。この場合、宅建士乙は、「変更の登録の申請」が必要ですか?
受講生F:必要です。甲が廃業したことにより、乙の従事している宅建業者が存在しなくなったわけですから、その従事している宅建業者の商号又は名称、免許証番号に変更が生じたことになるからです。
タカシ先生:そのとおり!この問題も間違えやすいところですから、皆さん十分に注意してください。
これで、「宅建業者名簿の変更の届出」と「宅建士資格登録簿の変更の登録の申請」との組合せ問題に対する対策は万全です!皆さん、引き続き本試験合格に向けて頑張ってください。
本試験が間近に迫ってきたためか、どの受講生もいつも以上に真剣に受け答えをしていたようです。
「今日触れたテーマが本試験に出るといいな」と思いつつ、教室を後にするタカシ先生なのでした。
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