こんにちは。オンスク簿記3級講座担当の織田です。
連載「知って納得!簿記の基礎」、最終回のテーマは「損益計算書」。前回(前編)で、以下のような問題を出しましたね。
A、B、Cの会社があります。3つとも今年の売上は100万円、税金を支払う前の当期純利益は30万円とします。この3つの今年の成績は同じといえるでしょうか。
A社 | B社 | C社 | |
---|---|---|---|
売上高 | 100万円 | 100万円 | 100万円 |
売上総利益 | 60万円 | 60万円 | 30万円 |
営業利益 | 40万円 | 20万円 | 10万円 |
経常利益 | 30万円 | 10万円 | ▲10万円 |
税引前当期純利益 | 30万円 | 30万円 | 30万円 |
今回はこの解説から始まります。さっそく1つずつ見ていきましょう。
目次
「損益計算書」を読んでみる|答え編
A社の場合
A社 | |
---|---|
売上高 | 100万円 |
売上総利益 | 60万円 |
営業利益 | 40万円 |
経常利益 | 30万円 |
税引前当期純利益 | 30万円 |
A社は、40万円で仕入れた商品を100万円で販売したので、売上総利益が60万円。
必要経費を引いても40万円の営業利益、そこから利息などを引いた経常利益が30万円。
ですので、通常の営業が続くのであれば来年度も同じような利益が見込めると考えられます。
B社の場合
B社 | |
---|---|
売上高 | 100万円 |
売上総利益 | 60万円 |
営業利益 | 20万円 |
経常利益 | 10万円 |
税引前当期純利益 | 30万円 |
B社はどうでしょう。売上総利益まではA社と同じですが、営業利益は小さくなっています。
これは、本業を営むのに必要な経費「販売費及び一般管理費」と言われるものが、A社より大きくなっていることがわかります。
具体的には、従業員の給料や交通費、保険料、広告宣伝費などが含まれます。それらの経費の節約が課題ですね。
また、経常利益が10万円なのに対し、最終的な利益が30万円になっているということは、今年だけ特別な利益が20万円あったことになります。
来年度も同じ利益を得られるとは限りませんので、無駄遣いを改善しなければ来年度は10万円の利益しか出せないことになりますね。
C社の場合
C社 | |
---|---|
売上高 | 100万円 |
売上総利益 | 30万円 |
営業利益 | 10万円 |
経常利益 | ▲10万円 |
税引前当期純利益 | 30万円 |
C社はどうでしょう。売上総利益がほかの2つに比べて少ないというのは、値引きなどの競争が激しいのでしょうか。売価を設定する際に、あまり利益が見込めないのですね。
「販売費及び一般管理費」はA社と同じ20万円ですが、営業利益から経常利益までマイナス20万円です。これは、銀行借り入れなどが多く、利息の支払いが多いのではないかと考えられます。経常利益の段階で10万円の赤字です。
今年は何か特別な大きな利益があって黒字で終わっていますが、来年度はどうでしょう。売上総利益があまり期待できないなら、売上高をもっと増やすとか、利息の支払いを減らすことが課題と考えられます。
いかがでしょう。損益計算書を見ていると、最終的な利益だけではわからないことが見えてきませんか?
このA社、B社、C社の金額は皆さんにわかりやすいように選んだもので、実は正解はありません。
C社の赤字はちょっと問題かもしれませんが、どのような商売をしているか?会社の規模は?販売している地域は?などによって様々です。
ですので、1つの会社であれば、何年か分の「損益計算書」と比較したり、または同じような業種、規模の他社の「損益計算書」と比較して分析していきます。
このように、「損益計算書」を読むことを「財務諸表分析」と言います。
残念ながら日商簿記3級ではここまでは学習しませんが、「損益計算書」を作成することがありますので、いろいろ考えてみると楽しいですよ。
2019年6月以降の日商簿記3級は、株式会社会計になりますので、法人税を計算するもとになる利益(税引前当期純利益)はいくらになるか、なども考えてみてください。
より良い会社をめざすために|財務諸表分析で数値化できること、できないこと
財務諸表分析は、「損益計算書」だけではなく「貸借対照表」とあわせて行うものもあります。貸借対照表をあわせると、先ほどのC社の支払利息と思われる内容も把握できます。
「決算書」の内容は数値で表していきますが、もちろん数値だけで会社のすべてを解明することはできません。長年培われた信頼やブランド、お得意様、経営者や従業員といった“人”にかかわる部分も数値化は難しいですね。
「決算書」には、優秀な営業マンをスカウトしてきて来年度から手腕を発揮してもらう予定、などというのは反映されていません。
数値化できるところ、できないところをバランスよく分析しながら、会社の進むべき道を模索していくのですね。
プライベート「損益計算書」を作ってみてはいかがですか?
“会社の経営者じゃないし”という方は、ご自身の「損益計算書」を作ってみませんか?
次のように読み替えてみましょう。
■ 売上高:給料、ボーナス、バイト代など …①
■ 必要経費:基本的な衣食住にかかる費用 …②
■ その他の出費:趣味やちょっと贅沢な出費(奮発して釣り具を新しくした、とかホームシアターを作ってしまった、といったもの) …③
■ 一生に一度(?)の収入または出費:結婚しました!マイホームを購入しました!など …④
では、並べてみましょう。
① | 収入=売上総利益(給与所得の方) |
② | 必要経費 |
①-② | 営業利益 【a】 |
③ | 必ずしも必要ではない出費 |
【a】-③ | 経常利益 【b】 |
④ | 特別な臨時収入または出費 |
【b】±④ | 当期純利益(貯金の方が多いですね) |
並べてみると、目標も見えてきます。
貯金をしたいと考えたら、②か③の節約ですね。④は滅多にないことですので仕方がないです。
会社ではないので、②と③の線引きが難しいです。同じものを購入したとしても、②に入れる方と③に分類する方がいます。
ということは、何かを買おうか迷ったとき、ご自身にとって②なのか③なのか、いったん考えることがプチ節約の一歩かもしれません。
先ほどもお話ししましたが、数値がすべてではありません。②は当然必要ですし、③だって程よく必要です。明日への元気の源になります。
あまり固執しすぎない程度に「損益計算書」を作ってみてくださいね。
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