皆さん、こんにちは!オンスクの知的財産管理技能検定3級講座を担当いたしました、株式会社パテントインベストメント代表取締役の草野です。
本連載「特許をもっと身近に!特許の意味や活かし方」の第3回では特許を取得するまでの大まかな流れについてご説明していきます。
1.はじめに
特許という存在は知っていたり、興味はあるという方は多いと思いますが、どのように取得すれば良いかご存知の方はなかなか少ないのではないでしょうか。
自分自身だけで特許を取得するのは非常に難しいのですが、弁理士や知財コンサルタントなどの専門家に相談をすれば、それほど特許の取得は難しくありません。
2.特許を取得するまでのプロセス
それでは、弁理士や知財コンサルタントに相談して依頼をするという前提で、どのようなプロセスにより特許を取得すれば良いのか見ていきます。
①アイデアを考える
まず、特許の元となる発明、すなわち技術的なアイデアを考える必要があります。技術的なアイデアというとハードルが高く思えるかもしれませんが、意外とそうでもありません。
例えば、100円ショップに売られている商品の多くは一般の主婦の方が発明したものであったりします。売られているものを見ると、「これぐらいなら自分でも思い付くかもしれない」と思ったことはないでしょうか?
物自体を開発するのは技術者でないと厳しいですが、大まかなしくみや機能、構造などを考え出すのは誰でもできます。
新しいアイデアを考え出すためのコツは、日常における課題に意識を向けることです。
例えば、生活していて不便だと感じる点、もっとこうなればいいのにと思う点、こういうものがあったらいいなと思う点などです。
私が開発を行っている災害・遭難救助要請用ドローンのアイデアを思い付いたのも、「遭難したときに携帯電話が使えなくても、すぐに救助を呼べるしくみがあればいいな」と思ったことがきっかけでした。
特許を取得したのはドローン(移動体)についてのみですが、実際は他にもいくつかアイデアを思い付きました。
ただ、ニーズがあまりなさそうであったり、市場規模が小さいという理由で特許出願をしませんでした。
アイデアを思い付いたら何でもかんでも特許出願をするのではなく、そのアイデアが事業として成り立つレベルまで拡張できるかを検討する必要があります。
事業として成り立たなければ特許出願をする意味はあまりありません。
②弁理士や知財コンサルタントに相談する
考えたアイデアが事業として成り立つレベルまで拡張できると思われる場合には、特許を取得できるかどうか専門家に相談しましょう。
だいたいの弁理士や知財コンサルタントは初回の相談を無料で行うので、そのときに仕事を依頼すべきかどうかを判断すれば大丈夫です。
③調査を行う
弁理士あるいは知財コンサルタントに相談を行った後は、次に特許調査(先行技術調査) を依頼します。
先行技術調査とは、考え出したアイデアと同じか似ているものがすでに世の中にないかどうかを調べるためのものです。基本的には過去に特許出願がされたもの、すなわち特許の文献(公開特許公報)を調査します。
もし同じものや似たものがすでに存在する場合、特許出願しても特許を取得できないため、先行技術調査をしていないと無駄な特許出願をしてしまうことになります。
つまり、先行技術調査をすれば費用や労力の無駄を事前に防止できるのです。
また、同じものや似たものが見つかった場合には、特許の取得を諦めるのではなく、特許を取得するためにアイデアをブラッシュアップすることも検討すべきです。
ブラッシュアップにより、より良い商品やサービスに繋がる可能性があるので、むしろ同じようなものがすでにあれば、プラスになることがありますよ。
④特許出願を依頼する
同じものや似たものがある場合、ない場合のいずれにしても、特許を取得できる可能性が高いと判断した場合は、特許出願を弁理士に依頼しましょう。
弁理士に依頼しなくても特許出願はできるのですが、特許の書面を作成するのは非常に難しく、相当の経験がないとできません。
長年作成している人でもうまく書けない人もいるぐらいです。
それだけ難しい書類なので、安易に自分自身で作成すると、ミスや不備が生じたり、そもそも作成のポイントがわからずにつまづく要因になります。
特許調査をしていると、弁理士に依頼せずに自身で書類を作成したと思われるものを見かけますが、特許の書類としては正直かなり不十分です。そのようなものは審査にも通りませんし、通ったとしても質の低い特許になってしまいます。
せっかく良いアイデアを考えたのであれば弁理士に書類の作成を依頼して、しっかりとした書類を作ってもらいましょう。
考えた発明のアイデアを弁理士に説明すれば、それを元に詳細な書類を作り上げてもらえます。
⑤特許庁の審査を経て登録
弁理士に特許出願の依頼をして、出願の手続きが終わると特許庁の審査官によって書類の内容が審査されます。
審査によって特許を受けるための要件を満たしていると認められた場合は登録となり、特許を取得できます。
ただ、実際はスムーズに登録となることはまれで、一度は特許要件への違反で拒絶されます。
しかし、拒絶されても、その拒絶された理由を補正という手続きによって特許の内容を修正すれば、再度審査してもらうことが可能です。
再度の審査で特許の要件を満たすと認められれば登録となり、特許を取得できます。
なお大抵の場合は、広い範囲の権利を取得するために、登録になるかならないかわからないようなラインで出願を行うので一度拒絶されることは特に問題ありません。
3.最後に
以上、特許の取り方についてご説明しました。
特許をどのようなプロセスで取得すれば良いかわからない場合には、ぜひ今回の記事をご参考にしていただければと思います。
それでは今回の内容は以上です。次回は特許を取得するための要件についてお伝えします。
お読みいただきありがとうございました!
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