皆さん、こんにちは。オンスクの知的財産管理技能検定3級講座を担当いたしました、株式会社パテントインベストメントの草野です。
前回の記事で特許マップの概要や特許マップを活用するメリットについてご説明しました。
「特許をもっと身近に!特許の意味や活かし方」第7回では特許マップを実際に活用していく具体的なイメージを持っていただくために、特許マップを用いて分析例をご紹介したいと思います。
1.はじめに
以下、特許マップです。こちらは私が簡易的に作成したものになりますが、各項目の見方は前回の記事を参考にしてくださいね。
まず、特許マップ全体を見ると空欄となっているマスと特許情報が記載されているマスがあるのがわかるかと思います。
例えば、マシンに関する特許はとても多いのですが、一方でダンベル、ウエア、バーベルに関する特許はあまり多くはありません。
これを見ると、競合他社が力を入れて取り組んでいる内容にはバラツキがあることがわかります。
2.特許が集中しているところ
それでは、まずは特許が多く出されているところを見ていきますが、マシンの列のマスにたくさんの特許の情報が書かれています。
つまりマシンについての特許がたくさん出願されているということです。
①A社の動向
マシンの特許の中でも特にA社がたくさんの特許を出願しているのがわかりますね。
A社の動向を見ると、筋力、柔軟性、持久力、筋肉量に関する課題をマシン(例えばランニングマシンなど)で解決することに注力しています。
また、2014年から継続的に特許出願がされており、最近は筋肉量を増やすためのマシンに関する特許が出願されているので、筋肉量を増やすためのマシンの開発に力を入れていると推測できます。
②B社の動向
B社についてですが、B社は筋力に関する課題を解決するための手段としてチューブを採用しています。
B社は課題も解決手段もピンポイントのところに力を入れているのが特許マップからわかります。
また、2014年から特許を出願しているので、比較的最近チューブを開発し始めたと推測もできますね。
③C社の動向
表の下の方にはC社の特許情報がたくさんあるのがわかります。
C社は筋肉量に関する課題を解決するための様々なグッズについての特許を出願しているので、筋肉量に関する課題に注目していることがわかります。
また、その中で、特許出願の時期を見るとチューブに関する特許出願が一番前の時期にされており、その後はマシン、ダンベル、ウエア、バーベルと続いています。
つまり、筋肉量を増やすためのグッズを次々に開発していったことが推測できます。
3.特許が手薄なところ
ここまで、特許出願がされているマスを見ていきましたが、逆にまだ特許出願がされておらず手薄となっているマスも見ていきたいと思います。
ダンベル、ウエア、バーベルの列には空欄のマスが多く、あまり特許出願がされていません。
つまりはこれらの空欄のマスは競合がいない領域を表しています。
そのため、なるべく他社との競争をせずに事業を行いたい場合は、空欄となっている領域における内容の事業を行なっていけば良いということになります。
ただ、空欄となっている、あるいは手薄となっている場合は、他社がやりたがらないような理由が存在する可能性が高いので、その部分についてもしっかり検討する必要があるでしょう。
また、すでに埋まっているマスにはすでに競合がいるわけなのですが、特許情報を細かく分析すれば、参入する余地を見つけることも可能です。
特許がたくさん出されているからといっても、内容に偏りがあったり、特許の権利範囲が狭いという場合も十分にあり得るので、特許侵害にならないようにうまく回避すれば十分に市場に参入できる余地があります。
コピー機を世界で初めて開発したゼロックス社が強固な特許網で市場を独占した中で、キヤノンがそれを掻い潜って新たな技術により市場に参入し、大きなシェアを獲得できたことからも、多数の特許が取られている領域においても参入することは可能なのです。
また、他社の特許情報を分析することにより、他社が次にどのような動きをしてくるかを推測できます。
近年の特許出願の状況に着目すると、力を入れている、あるいは今後力を入れていく商品やサービスがわかる場合もありますよ。
4.最後に
このように特許マップで対象の技術分野における特許出願の状況を把握することにより、様々な分析ができるのです。
もちろん、他社の事業の分析は特許情報以外にも様々な手段で行うことができますが、特許情報には様々な細かい情報も載っているので、詳細な分析も可能となるのです。
また、特許を含めた知的財産に関する情報に加え、市場における自社、競合他社、市場の研究開発、経営戦略等の動向などを踏まえ、自社の市場ポジションについて現状の俯瞰・将来の展望等を示すIPランドスケープというものがあります。
要するに知財の情報と一般的な市場や競合などの情報をうまく組み合わせて、トータル的な分析をするというものです。
特許マップに比べて、参考にする情報が幅広くなります。
それでは今回の内容は以上です。次回は、あまり知られていないが実は重要な実用新案についてお伝えします。
お読みいただきありがとうございました!
知的財産管理技能検定3級講座無料登録でオンラインの資格講座を体験しよう!
資格受け放題の学習サービス『オンスク.JP』では様々な資格講座のオンライン学習が可能です。
最短20秒の無料会員登録で、各講座の講義動画・問題演習の一部が無料体験できます。
※自動で有料プランになることはありません。
関連する記事が他にもあります