皆さん、こんにちは。オンスクの知的財産管理技能検定3級講座を担当いたしました、株式会社パテントインベストメントの草野です。
「特許をもっと身近に!特許の意味や活かし方」第6回の今回は特許マップをご紹介します。
1.特許マップとは?
特許マップとは、一言でいうと、対象の技術分野に関する特許情報を視覚化してまとめたものです。
これだけだとなかなかイメージが湧きづらいと思いますので、身近な近いものを例にしてみます。
駅にある周辺地図を思い浮かべてみてください。
現在地の周辺にある建物、施設、道路、名所などが載っていて、周辺に何があるかを把握できますよね。
1枚の地図なので、地図全体を一目で俯瞰できて、かつ、気になるところを部分的に見ることができます。
実は、特許マップもこのような地図と似ています。
特許マップも対象の技術分野における特許を全体的に俯瞰することができ、かつ気になるところを部分的に見ることもできるんです。
これにより、特許情報をもとに他社や業界の動向を把握することができ、事業や開発の方針を決めるのに大きく役立ちます。
また、他社が行なっている開発や事業がある程度わかるため、他社と同じことをして無駄な先行投資をしないで済むというメリットもありますよ。
2.特許情報を特許マップにまとめる意味
なぜこのように特許情報をまとめるのかというと、特許は複雑な内容のものが多く、1件の内容を読むだけでも大変なため。
特許の情報が載っている書類のことを特許公報(公開特許公報というものもありますが、以下まとめて特許公報と記載します)といい、特許庁のデータベースに保存されていますが、そんな特許公報の内容を何百件、何千件と読むとなったら膨大な労力を要します。
自社の事業に関連性のある他社の特許公報を読み込もうとすると、それだけの数の特許公報を見ないといけないため、多忙な経営者や開発者などにとっては非常に大変なことです。
そういった事情から、多数の特許公報をわかりやすくマップ上にまとめることにより、全体像を俯瞰でき、かつ個々の特許公報の情報も見たいときに見られるようにする必要があるのです。
3.特許マップの例
以上、特許マップについての概要を説明しましたが、文章だけで説明してもややわかりづらいと思いますので、図で説明しましょう。
上の図は、特許マップのイメージを持っていただくための仮想例として、私が作成した簡易的な特許マップです。
特許マップというと表し方が色々あるので、今回はその一例だと考えてください。
では、特許マップの見方を説明します。
今回はフィットネス業界における特許情報をまとめた特許マップになります。
①軸の項目
左側の縦軸には、筋力、柔軟性、持久力、筋肉量というように、トレーニングにおける課題を表しています。
上の方にある横軸には、上記の課題を解決するための手段が書いてあります。
課題が筋力だとすると、それを解決するための手段が、ダンベル、マシン、チューブ、ウェア、バーベルになります。
特許による保護の対象は、何かしらの課題を解決する手段(発明)となるので、このように課題と解決手段で分類できます。
つまり、フィットネス業界における特許公報をこの表に従って分類していけば良いのです。
②マスに記載する内容
軸の項目に従って分類したものが表の中のマスに記載してあります。
そして、表のマスの中に書いてあるのはなにかというと、これは会社名と特許公報の番号です。
ここではA社、B社、C社が登場し、それぞれ赤色、青色、橙色の文字で表しており、( )の中には特〇〇〇〇-〇〇〇と書かれています。
例えば、筋力-マシンのマスに書かれているところにはA社(特2015-113)とありますが、特2015というのは2015年に出願された特許であり、113というのは113番目に出願されたという意味です。
本当は、後半部分は6桁の番号なのですが、今回はスペースの都合で3桁にしています。あまり重要な数字ではないので、前半の年数を表す数字だけ意識していただければと思います。
これをA社の他の特許や、B社、C社の特許についても行なっていき、表を埋めていくことで特許マップを完成させていきます。
このような表記をして特許マップとして表すことにより、どの会社がいつ頃、どのような内容の特許を出願したか、あるいは特許を取得したかが一目でわかるのです。
また、表を見ると空いているマスや埋まっているマスがあるのがわかるかと思います。
これによっても、他社が力を入れている内容や逆に手薄となっている内容が一目でわかるのです。
1件1件特許公報を読み込んで他社や業界の動向を分析するのは非常に大変な作業なので、このように特許マップにまとめると非常に情報が見やすくなりますよ。
4.最後に
私も会社員の頃に率先して複数の分野において特許マップを作成し、他社の情報を網羅的にかつ効率的に把握し、開発や事業の方針を決めることに貢献してきました。
中小企業の場合は、時間もお金もより限られているので、特許マップにより効率よく開発や事業の方針を決めていく必要があると考えています。
特許マップについての今回の内容は以上となりますが、次回は実際にこの特許マップを使ってフィットネス業界における各社の動向などについて分析していきたいと思います。そちらもぜひご覧いただけたら嬉しく思います。
それでは今回の内容は以上となります。お読みいただきありがとうございました!
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