皆さん、こんにちは。オンスクの知的財産管理技能検定3級講座を担当いたしました、株式会社パテントインベストメントの草野です。
前回の記事で特許を取得するまでのプロセスをご説明しましたが、特許を取得する上では特許庁の審査官による審査を通過しないと登録にならないとご説明しました。
「特許をもっと身近に!特許の意味や活かし方」第4回の今回はその審査において満たす必要のある特許の要件についてご説明します。
1.新規性
まず1つ目は、新規性と呼ばれる要件です。
新規性とは、文字通り新しさという意味。つまり、考え出した技術的なアイデアが、まだ世の中で知られていないことが必要になります。
ここでポイントなのは、世の中で知られていなければ良いので、世の中に存在するアイデアであっても、それが秘密の状態であり、公開されていなければ良いのです。
例を挙げてみましょう。
Aさんがゴミを掃きやすい画期的なほうきを思いついて特許を取得したいと考えたのですが、実はそのほうきはすでに他人であるBさんが思いついていて、そのほうきを自分で作って使っていました。
しかし、Bさんはそのほうきを販売することなく自分と家族だけで使っており、そのほうきの存在を他人には言わないようにしていました。
つまり、そのほうきの存在は秘密の状態であり、公開されていない状態です。
この場合は新規性があるということです。
2.進歩性
続いて2つ目は、進歩性という呼ばれる要件です。
進歩性とは、簡単にいうと、世の中ですでに知られている発明から簡単に思い付かないという意味です。
つまりは、世の中でまだ知られていない、すなわち新規性がある発明であっても簡単に思い付くものと判断されてしまった場合は特許として認められません。
新規性を満たすことは割と簡単なのですが、進歩性を満たすことはそれなりに難しいです。
進歩性を満たすためにプラスになる要素としては、特許を受けようとする発明が「従来の発明にはない新たな効果を発揮する」場合が挙げられます。
そのため、一見すると従来の技術から簡単に思い付いたような発明であっても、新たな効果があれば進歩性が認められる場合がとても多いのです。
他にも進歩性が認められる要素はあるのですが、複雑な内容なのでここでは割愛しますね。
3.特許が認められない理由(拒絶理由)となるもの
続いては、特許が認められなくなってしまうような理由(拒絶理由)として、どんなものがあるのか見ていきましょう。
ここでは主なものを3つ挙げます。
①新規性・進歩性がない
上記の内容からすると当たり前ではあるのですが、進歩性に関しては、認められないパターンが複数あるので、知っておいた方が良いでしょう。
例えば、従来あるものをちょっとだけ変えた程度では進歩性を否定されます。
ダンベルを例にした場合、従来あるダンベルの重りの数や色、形などを変えたりしても、それが何ら新しい効果を発揮するものでなければ進歩性は認められません。
また、世の中にあるものをただ寄せ集めただけのものも進歩性が否定されます。
例えば、掃除機とブラシとタワシを単にくっ付けたものを考え出したとしましょう。
そのようなものは世の中にないと思われるので、新規性はあるかもしれませんが、単純に足し合わせただけでは進歩性は認められません。
ただし、くっ付けた場合にくっ付けられた部分やくっ付け方に新たな特徴がある場合などは進歩性が認められる可能性があります。
例えばボールペンとシャーペンなんかはよく一緒になっているものが多いですが、あれは単にボールペンとシャーペンをくっ付けただけではなく、1つのペンとして一緒にするための構造に工夫がされていますよね。
そのようなものは進歩性が認められる可能性が十分にあるのです。
②技術的なアイデアではないために発明として認められない場合
技術的要素がなければ発明として認められません。つまり、科学的な原理によるものでなければ発明にはならないのです。
例えば、かっこよく見える歩き方、礼儀正しく見える座り方などは技術ではなく人による技能です。
これらは科学的な原理に基づくものではなく、個人のスキルや感覚によるものです。
また、マニュアルやルールなどといった人為的な取決めも発明には該当しません。
これらも科学の原理に基づいたものではないためです。
③公序良俗違反
公序良俗とは、簡単にいうと社会的な妥当性のことです。これに反するような発明は特許として認められません。
例えば、犯罪を誘発するような、偽札製造機、殺傷用のナイフなど。
特許法という法律の目的は、産業の発達なので、このような発明に特許を認めると産業の発達を阻害するといえますよね。
実際は、公序良俗違反によって特許が認められないケースはあまり多くはありませんが、社会の秩序に反するようなことは特許にはならないのだと覚えておいていただけたらと思います。
4.最後に
以上、新規性・進歩性、特許が認められない3つの理由(拒絶理由)をお伝えしました。
これら以外にも明確性や実施可能要件等の特許要件・拒絶理由はあるのですが、少し細かいことなのでここでは割愛しますね。
それでは今回の内容は以上となります。次回は特許になり得るもの、なり得ないものについてお伝えします。
お読みいただきありがとうございました!
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