これから、宅地建物取引士(以下宅建士と略称)とビジネス実務法務検定3級(以下ビジ法3級と略称)資格の「ダブルライセンスの魅力」について、3回にわたって考えてみたいと思います。
ダブルライセンスとは、複数の資格を取得することを言います。複数の資格による知識が身に付くことによって、業務の幅が広がったりと、相乗効果を得ることができます。
初回では宅建士がビジ法3級資格を保有することの実務上のメリットについて触れてみましょう。それには、宅建士の不動産業界での実務上の仕事や資格の性格を掘り下げて考えてみることが有益です。
不動産業界での実務の仕事と宅建士の資格
宅建士は、言うまでもなく不動産業界のコンプライアンスの専門家で、その資格は国家資格です。宅建士でなければ社長さんでもできない3つのお仕事がありますね。重要事項説明と重要事項説明書・契約書面への記名押印です。これらは宅建士の専属業務です。
そして、平成27年に宅地建物取引主任者から宅地建物取引士へと、資格の格上げがなされたことを受けて、宅建士は宅建士の信用や品位を害する行為をしてはならないだけではなく(宅建業法15条の2)、宅地建物の取引に係る事務に必要な知識や能力の維持向上に努めなければならないものとされました(同法15条の3)。
このように、宅建士は不動産業界におけるコンプライアンスを図るうえで、まさに要となる資格であり、試験に合格した後も、自己啓発を通してさらなる高みを目指すことが求められています。
この点、コンプライアンスの知識・技能を向上させるうえで、最良の資格がまさにビジ法3級といえましょう。宅建士がビジ法3級を取得することのメリットもコンプライアンスの視野が広がり、より顧客満足度の高い仕事をこなせるようになるという点に求められると思います。この点をもう少し詳しくみてみましょう。
宅建士がビジ法3級の資格を取得するメリット
今日、あらゆる業界でコンプライアンスが求められています。企業の社会的責任が強調され、業界のルールも含めて法令遵守が時代の流れと言えます。こうした時代に、不動産業界においても、単に民法や宅建業法、都市計画法、建築基準法、国土利用計画法等々の業界に関係の深い法律知識だけでは、十分にお客様のニーズに対応できません。視野をもっと広げる必要があります。
取引相手の多くは会社ですから、会社法や商法の知識は重要ですし、今日では、特許権や著作権等の知的財産権や独占禁止法についての基本的な理解も欠かせません。さらには消費者保護のための一連の特別法(特定商取引法や消費者契約法等)の知識は、適正な企業活動には必要不可欠でしょう。
こうした様々な分野の法律知識を広く学べる資格、それがビジ法3級という資格なのです。この資格は、国家資格ではありませんが、東京商工会議所が主催する権威ある資格で、大手企業も社員教育に取り入れており、社会的信頼度も高いものです。
3級では、ビジネスパーソンとして業務上理解すべき基礎的法律知識を有し、問題点の発見が可能である、という点を到達目標としています。
宅建士の方々がビジ法3級資格を取得することは、その過程において、自らの業務に必要な知識や能力の向上に役立つばかりか、不動産業界におけるコンプライアンスをより広い視野からとらえることが可能となります。そのことは必ずや顧客満足度を向上させるための原動力となることでしょう。
宅建士の皆様に是非とも取得いただきたい資格としておすすめする所以です。
次回は、ビジ法3級で習得できる具体的な法律知識と、それらの知識がどのようなビジネスシーンで役に立つか、という点により詳しく触れる予定です。次回もお楽しみに。
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