日経平均株価という形で毎日のニュースを飾る「株式」は、金融商品の初心者でも耳にする機会が多いと思います。
しかし「債券」と言われると、いまいちピンときませんよね。
でも実は、お金を集めるために発行するという点では、株式も債券も似ています。
ただ、出資してオーナーとなり、経営に参加する権利を得る株式と違い、債券はお金を返済する期日である「満期日」や「利率」が書いてある「借用証書」なのです。
債券を購入したあなたは、お金の貸主というわけですね。
この「オーナー」と「お金の貸主」という立場の違いから、債券は株式に比べ安全性が高く、金融商品の初心者向きといえます。安心度が高いことから、預貯金の代わりに利用されることも多いのです。
今回はそんな「債券」について、債券のしくみや種類、買い方やメリット・デメリットなどを、FP(ファイナンシャルプランナー)の筆者が詳しく解説します。
FPが教える基本の資産運用商品(全7回)
債券とは
元本が保証されている
お金を貸す時に、「100万円借りるけど、80万円しか返せないかもしれない」と言われて貸す人はいませんね。
そのためお金を借りた借用証書である債券には、返還すると約束する金額である「額面価格」や、利率、この日までに返しますという「償還日(満期日)」などが記載されています。
したがって発行元である国や地方自治体、企業などが破綻しない限り「元本保証」されており、またお金が返ってくる時期も決まっている安全性の高い金融商品であるといえます。
償還差益
債券には「額面価格」と「発行価格」という2つの価格があります。
「額面価格」とは、「償還日(満期日)になったらこの金額をお返しします」という金額です。
一方「発行価格」は、債券が発行される時の価格です。債券を買う場合はこの発行価格で購入します。
この発行価格、「発行価格=額面価格」という場合も多いのですが、「発行価格<額面価格」というケースもあるのです。
例えば発行価格が98万円で額面価格が100万円という債券もあります。
この場合、98万円で債券を買ったのに、償還日には100万円返してもらえます。
この2万円の差額を「償還差益」といい、このような形式で発行される債券を「割引債」といいます。
ちなみに発行価格=額面価格で、定期的に利払いを受けるものは「利付債」と呼ばれます。
キャピタルゲインとインカムゲイン
キャピタルゲインとは「差益」のことです。
上記の償還差益のほか、債券は満期を待たずに市場で売却することもできます。
発行価格よりも売却した金額が高ければ、その差額が利益となります。
インカムゲインとは、資産を保有することで安定的かつ継続的に得られる収入のことをいいます。連載第3回で取り上げた株式の配当や、債券の利息などがインカムゲインにあたります。
このように債券は、
- 償還差益
- 売却益
- 利息
というように、3種類の利益を得ることができるのです。
満期までの期間
債券には3年、5年、10年といったように、様々な満期(償還日)までの期間のものがあります。
長期のものはその分多くの利息が得られます。ですが、その間にバブル期のような高金利、インフレ状態が到来すると、あらかじめ金利が決められた固定金利の債券の場合、思うような利息が得られなかったり、実質的価値が目減りしてしまうというデメリットがあります。
その場合は市場で売却することもできるのですが、そのような時は市場での価格も下がっていることが多いので、利益を上げることが難しくなります。
信用格付け
債券は元本保証のある安全性が高い金融商品となりますが、前述の通り、発行元である国や地方自治体・企業などが破綻した場合はお金が戻ってこないというリスクもあります。
そこでこのような債券の信用リスクを知るために、格付け会社が発表する「信用格付け」を参考にするのです。
信用格付けは信用度の高いものから、AAA→AA→A→BBB→BB…というように表されています。
Aよりは低いがBBBよりも高いというような場合はA-(エーマイナス)と表現されたりもします。
この格付けは債券の利息とも密接に関わっており、基本的に格付けの高い債券ほど利息が安くなっており、格付けの低い債券の利息は高くなっています。
これは「もしかしたら破綻するかもしれない」というような格付けの低い発行元が発行する債券は、高い利息を付けないと誰も買ってくれないというのが理由です。
ただ高い格付けの債券の利息は預貯金並みだったりするので、格付けと利息のバランスをよく検討して購入することが重要となってきます。
債券の種類
債券はその発行元によって様々な種類に分かれています。
国債
日本国が発行する債券です。
「個人向け国債」は個人のみが購入することができ、固定金利型(3年・5年)と変動金利型(10年)があります。またいくら金利が下がっても0.05%の最低金利保証があるのが特徴です。
発行から1年が経過すると、原則としてはいつでも換金することができます。
(ただし一定の調整額が差し引かれます)
その他に、半年ごとに利息が払われ、中期(2年・5年)、長期(10年)、超長期(20~40年)といった種類のある「利付き国債」があり、こちらも個人で購入することが可能です。
地方債
都道府県や市町村といった地方自治体が発行する債券です。
社債
一般の事業会社が発行する債券です。国債に比べると一般的に利息は高くなっています。
また、設定された価格で一定期間は株式に転換できる権利の付いた「転換社債」のように、株が値上がりしていれば株式に転換して差益を受け取り、株が値下がりしてしまった場合は社債のままで利息を受け取ることができるなど、購入者にとって使い勝手がよいものもあります。
外国債
外国の発行体が発行する債券です。
発行体は外国でも円建て(資産価値の表示や決済を日本円で行うこと)で発行されるものは「サムライ債」と呼ばれ、元本と利息は円で支払われるので為替リスクを気にする必要のないものとなっています。
債券はどこで買う?
債券は証券会社で購入します。
そのため株式と同様に、証券会社に口座を開設する必要があります。
売買手数料が安く、オンラインで売買のできるネット証券が金融商品初心者にはおすすめです。
ホームページから口座開設の申込みをすれば必要書類が送られてくるので、署名、捺印をして個人を証明する書類などと一緒に送り返します。
1週間ほどでIDとパスワードが送られて来れば、準備完了です。
債券のメリット・デメリット
債券のメリット
- 元本保証がある
- 満期を待つことなく、途中でも売却することができる
債券のデメリット
- 社債などの場合、発行元の企業が倒産すると元本・利息ともに回収できない
- 途中で売却する場合は購入した価格を下回る可能性がある
- 固定金利の債券の場合インフレに弱い
預貯金の次のステップには国債がおすすめ
「金融商品に興味はあるけどやっぱり怖いから」という理由で預貯金以外に手を出さない初心者の方がいらっしゃいます。
そんな方には元本保証のある債券、特に国の保証の付いている「国債」をおすすめします。
預貯金のように金融機関が破綻した場合1,000万円までしか保証されないということもありませんし、1年が経過すればいつでも換金することができるので、預貯金感覚で利用することが可能です。
金融商品初心者のファーストステップとして「債券」を検討してみてください。
「債券の価格変動」や「格付け」といった預貯金とは異なるファイナンス的な知識を身に付けることができるはずです。
また、このような知識はFP3級を学ぶと手に入ります。今回お読みいただき「金融商品のことをもっと知りたい」と思った方は、FP3級を勉強してみるのもおすすめですよ。
さて、株式、債券という自分で運用先を選ぶ金融商品を紹介してきましたが、次回は運用をプロに任せる「投資信託」について詳しく解説します。
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