お金を貯めるには使わないのが一番!というわけで、様々な節約術が巷に溢れています。
お風呂のお湯と同じで、お金の出口をふさいでおけば自然とお金が溜まっていくというわけです。
ですが実際には、お風呂のお湯が蒸発したり、隙間から漏れたりして減っていくように、「お金は使わなくても減っていく」ということをご存知ですか。
今回は、
- なぜ使わなくてもお金が減っていくのか?
- 減らさずに増やす金融商品の知識という武器を持とう
- 初心者にもわかりやすい金融商品のあれこれ
という点について、FP(ファイナンシャルプランナー)の筆者が、初心者の方向けに詳しく解説します。
「自分のお財布は自分で守る」が合言葉です。ぜひ最後までお付き合いください。
FPが教える基本の資産運用商品(全7回)
消費税アップとインフレ目標2%でお金は減っていく
2019年10月には消費税アップが待っている
「使わないのにお金が減っていくなんて、そんな馬鹿な!」と思われる方も、現在8%の消費税が近い将来(2019年10月予定)10%に引き上げられるのはご存知だと思います。
この時点で、今まで108円で買えていたものが、110円出さないと買えなくなります。
つまりお金の価値が下がる=お金が減ってしまうわけです。
日銀はインフレ目標2%を諦めていない
「インフレ目標2%」という数値を聞いたことはないでしょうか。
これは、物の値段が安くなりすぎて不景気になる「デフレ」状態から抜け出すために、日銀(日本銀行)がインフレ(物の値段=物価が高くなること)方向への目標値を定めたものです。
つまり、「毎年モノの値段を2%ずつ上げていこう」というわけです。
現在自動販売機でペットボトルのお茶を買おうとすると、160円します。
当たり前ですが、16,000円あれば100本買うことができます。
ではインフレでモノの値段が毎年2%ずつ上がっていったらどうなるでしょうか。
ペットボトルのお茶でシミュレーションしてみます。
経過年数 | ペットボトルの価格 |
---|---|
0 | ¥160 |
1 | ¥163 |
2 | ¥166 |
3 | ¥170 |
4 | ¥173 |
5 | ¥177 |
6 | ¥180 |
7 | ¥184 |
8 | ¥187 |
9 | ¥191 |
10 | ¥195 |
1本160円のペットボトルが、10年後には1本195円になっています。16,000円では82本しか買えません。
これが「お金の価値が下がる」ということです。
10年間お金を使わず一生懸命持っていても、減ってしまうのです。
ではどうすればよいのでしょうか?
金融商品の知識はあなたのお財布を守る武器となる
上で説明した「お金を使わなくても減ってしまう」状況は、「下りのエスカレーターを登っている」状況と同じです。
つまり、1段ずつ登り続けて初めて「現状維持」ができるわけです。
ではお金の場合はどうするか。
「金融商品を活用して資産を運用し増やす」しかありません。
ギャンブルのように大きく増やす必要はありませんが、少なくとも物価上昇分、日銀の目標通りなら毎年2%は増やしていく必要があります。
金融商品の知識を持つことが、あなたのお財布を守る武器となるのです。
初心者でもわかる!資産運用のための金融商品一覧
金融初心者の方向けに、まずは金融商品にはどのようなものがあるかを紹介していきます。
それぞれの詳しい内容は、この連載の次回以降で説明していきますので、今回は「へー、こんな物があるんだ」「私にはこれが向いているかも」くらいの気軽な気持ちでご覧ください。
預貯金
金融商品とは思われないかも知れませんが、預貯金も立派な金融商品です。
金融機関に一定期間お金を預けておくと、金融機関はそのお金を運用し、元本と利息を支払います。
元本が保証され、またもっとも手軽であるというメリットがありますが、皆様もご存知の通り低金利(今回紹介する金融商品の中でも最も低い)です。
お金の出し入れが簡単なので、すぐに使いたいお金を一時的に置いておくのには向いていますが、インフレには対応が難しい金融商品です。
外貨建て商品
海外の預貯金や債券、株式に投資する金融商品です。
超低金利が続く国内の預貯金や債券に比べ、高い金利で運用できるので、インフレリスクに対応することが可能です。
ただし外貨のまま持っていれば増えている資産でも、使おうと思って円に交換しようした時に「円高」状態になっていると、為替の関係で利益が吹っ飛んでしまうというリスクがあります。
株式
各企業が発行する株式を購入し、配当金や値上がりした時の売却益で資産を増やす金融商品です。
値段が激しく上下する株式の銘柄もあるので、大きな利益を狙うことも可能ですが、裏を返せばそれだけ損をしてしまう可能性も高いという「諸刃の剣」のような特徴があります。
また投資の対象となる上場企業は3,000社以上あり、その中から投資先を自分で選ばなくてはならないため、初心者には難しい金融商品といえます。
債券
国(国債)や地方公共団体(地方債)、一般企業(社債)が発行する債券を購入し、満期の時に元本と利息を受け取るという金融商品です。
簡単にいうと、国や企業にお金を貸して、期限になったら利息をつけて返してもらう、というわけです。
満期まで待つことができれば元本は保証されますが、お金が必要になって途中で解約をすると「払ったお金より戻ってくるお金が減ってしまう=元本割れ」を起こす場合があるので注意が必要です。
投資信託
投資のプロであるファンドマネージャーなどにお金を預け、それを株や債券などの金融商品で運用し、得られた利益を出資者に還元する金融商品です。
自分では難しい金融商品の選び方や組みあわせ方を、プロであるファンドマネージャーが代わりにやってくれるため、初心者に向いている金融商品と言えます。
ただしプロでも運用に失敗することはあります。元本は保証されていないので注意が必要です。
一般的には主な投資先ごとに、国内株式型、国内債券型、外国株式型、バランス型などに分かれており、その中から選択します。
信託商品
信託銀行に資産を預け、自分の代わりに運用してもらう金融商品です。
しくみとしては投資信託と似ていますが、投資信託の場合、運用するのは信託銀行などから運用を委託された投資信託委託会社であり、信託銀行はその「管理」をするだけです。
一方信託商品の場合は、信託銀行が直接運用します。
また投資信託と異なり、元本保証のある商品とない商品があるのが特徴です。
保険商品
保険には保障機能を備えたもの、貯蓄機能を備えたもの、その両方を備えたものがあります。
貯蓄機能のある保険の代表的なものが「学資保険」です。
毎月の積み立ての代わりに保険料を支払い、将来の大学進学時などに学資金を受け取ります。
超低金利が続く預貯金に比べ、返戻率(預けたお金がどれ位増えて戻ってくるかを示した利率)が高いのが特徴です。
その他にも保障と貯蓄を兼ね備えた様々な保険商品があります。
自分のお財布を守るために
「お金を増やすのは難しそうだし、怖い」という初心者の方も、自分のお財布を守るための武器になるのは知識です。
この連載(全7回)は、初心者の方でも金融商品の基本知識が自然に身に付く内容になっています。ぜひ一緒にお財布を守る武器を身に付けていきましょう。
また、このような知識はFP3級を学ぶと手に入ります。連載を通して「自分のお財布は自分で守ろう!」と思った方は、FP3級を勉強してみるのもおすすめですよ。
次回は金融商品の1つである「預貯金」について詳しく解説します。
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